5 ❀ 成敗!

文字数 955文字

誰かが、少女が苦しんでいると分かっていたはずなのだ。


けれど知らぬふりをしてもその子はいつものように学校へ通ってきた。

(ジョンに話しちゃった。昔いじめられていたこと…)

咲良さらは今でも女の子をいじめる男の子が苦手だ。


クラス担任が、いじめられている咲良にこう言った。

本当は咲良ちゃんと仲良くしたいだけなの。

分かってあげてね?

7歳の子どもだったが、担任の言葉に耳を疑った。
(そんなこと言われても、仲良くなんてなれないし…)

いじめは日に日にエスカレートした。


あの日、帰り道の公園で、彼らはこぶしで咲良を痛めつけた。

砂だらけの靴が、自分のお腹をなんども踏みつけた。


そのことを思い出すと、17歳の咲良は背筋が寒くなる。

私は今でも、子どもの靴を見るとぞっとする
店に並んだ、新品の子どもの靴ですら目を背けてしまう。
あの、小さな靴にこめられた力を憶えているから…

当時の咲良は、いじめっ子たちに、抵抗しなかったわけじゃない。

やめて。お願い…やめて!
男の子たちは咲良がお願いするほど、殴り、蹴り上げた。
やめて、と言ってもムダだ……)

彼らは幼くて限度が分からない。

彼らの靴の裏を呆然と見ていると。

こいつ、泣いてるぞ! きもちわるい!
固く握ったこぶしで、頬をなぐられた。
咲良!?
学校から帰る途中、咲良がいじめられているのを目撃した作は、
おまえら…俺の妹になにしてる!

作は、抱えていた竹刀の包みをはらう。


授業や部活動以外でふり回すことは一度もなかったが。

目には目を、歯には歯を!!
うろたえる少年たちに、剣先を合わせる。
成敗!!
イジメっ子たちをめった打ちにした。倍返しだ。
二度と妹に近づくな!

作は咲良を背負い、家に連れ帰った。


作から話を聞いた両親は、イジメっ子の親や、学校の担任に抗議した。

ありがとう、お兄ちゃん……
気にすんな。兄として妹を助けるのは当然のことだ
作はうで組みし、いかめしい面持ちをふっとゆるめた。

咲良も強くなれ。一人で戦えるくらい。


それまでは俺が守ってあげるから

(この人のように強くなりたい。たった一人でも自分を守れるように。)
分かった。強くなる! わたし、がんばるね
ん。頑張れ

強くなったら、お兄ちゃんが困ってる時、わたしが助けるよ

ありがとう。じゃあ、その時には頼む

作は、ぽんぽんっと妹の頭をなでた。

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登場人物紹介

帯刀 咲良  (たてわき・さら)


 高校2年生、剣術道場の娘。

ジョン・リンデン


イギリス人

インターポールの捜査官。

天羽 理々(あもう・りり)


高校2年生、咲良の親友

合気道部

ラルフ・ローゼンクランツ


ドイツ人

インターポールの捜査官。

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