ケンタロウ④

文字数 825文字

「な~~ケンタロー、同じ高校行こうぜ~!一緒に青春送ろーよ~!なぁ~!やだよ、オレ、ケンタローと離れるの!一緒のとこ行くってゆーまで離れないからねっ!」
シンジがオレに絡み付いてきた。

「うるせー、うぜー、あちー…離れろー」
「離れないっ!!」
「考えとくから離れてくれ…」

オレは、二人を見なくてもすむように、違う学校へ行こうと思っていた。

シンジといっしょにいたい気持ちはもちろんあった。

だけど、このまま一緒にいてどうなる。

シンジがいれば、カオリもいるだろう。

二人をただ見ているなんて。


3年では委員はなかったが、すっかり図書室の居心地が良くなり、図書室で勉強するのがオレの定番になっていた。
シンジは家の方が気楽だと言うので、カオリと二人で勉強することも多かった。

「ケンちゃん、進路決めた?」
一息ついて立ち上がり、窓の外を見ながら、カオリが言った。

「まーーー、ボチボチ。」

「そっか。どこ?シンちゃんと一緒?…てことないか。ケンちゃん、頭いーもんね」

「カオリは?」

「私はシンちゃんと同じとこ。近いし。」

やっぱり。

「カオリならもっといいとこ狙えるんじゃない?」

「そんなことないよ。うちの親は、近いとこならどこでもいいって言うし、歩いて行けるし。近くが一番。」

「そっか」

「高校別になったらさ、なかなか貸し借りもできなくなっちゃうね。」

「そーだな」


窓を背にして、カオリがオレの方を見た。

「さみしいよ、ケンちゃんに会えないと」

窓から風が吹きつけてくる。


『オレも』



思わず、本音が出そうになったのを飲み込んだ。


なんだ、なんでそんなこと言うんだよ。


「同じ高校だったらいいのに」
カオリが笑う。


どーゆーつもりで言ってんだ。

友達だよな。わかってる。友達だ。友達として。

苦しい。

なんで。

…もう。


どうしようもない。



会えない方が、もっと辛い。


カオリがシンジを好きでも。


今ならまだ、カオリの中に、オレの居場所がある。


離れてしまえば、きっとなくなる。


ゼロにはしたくない。


ただ、一緒にいたい。




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