第3話(1)

エピソード文字数 1,324文字

「おはようございます、従兄くん」

 朝の五時。目覚ましが鳴って目を覚ますと、布団の中でシズナに抱き付かれていた。

「一時間後には出発よ。顔を洗って朝ご飯を食べましょう」
「無論そうするつもりだが、その前にだ。貴様は何をしている?」

 なぜ。なぜ勝手に潜り込んで、ギューっとしてるんだ?

「……あの、ね。ついさっき悪夢を見て、怖くなったの……」

 シズナは小さく震え、顔には不安の色が現れた。
 ふむ。悪夢、か。

「従兄くんの温もりがあれば、安心できると思ったの……。迷惑、だった?」
「ううん、迷惑じゃないよ。それが事実ならな」

 俺はむっくり上体を起こし、横にいるバカを突き飛ばした。

「アンタは午前3時から、横で起きて警戒してくれてるだろ。いつ怖い夢を見たんだよ」
「……だから……。ついさっき見たの」
「ほぉ。意識があるのに、どうして夢を見るんだ?」
「……ここが和室で、テーブルの上に『尾長鶏(おながどり)』の置き物があるから。畳の原料となる井草と尾長鶏の置き物が同じ空間にあった場合は、悪夢を見せるガスが発生するのよ」
「オメー、それを外で口にするなよ? 畳と尾長鳥の関係者に訴えられるからな」

 念のため申しておきますが、そんなガスは発生しません。高知にお越しになった際(尾長鶏とは、雄の尾羽が8メートル以上にもなる珍しい鶏のこと。高知県原産の特別天然記念物なのです!)に興味を持たれて置き物を購入された方は、安心して和室に置いてくださいませ。

「シズナ、正直に言いなさい。目的はなんだ」
「無防備な従兄くんを見ていたら我慢できなくなり、気が付いたらハグしていました。これに関しては全面的に、そんな姿を見せた色紙優星さんに責任があると思います!」
「こら、あるわけねーでしょう。睡眠中は誰だってそうなるでしょう」
「いいえ、動物達は眠っている時も警戒しているわよ? はっ、情けない男ね」
「ごめんな、色紙優星って情けないんだよ。ダメ男でスイマセン」

 俺は深々と頭を下げ、洗面所に向かう。さっさと顔を洗って食事を摂ろう。

「い、従兄くんっ? 私、性悪な発言したのよっ? 怒らないのっ?」
「そうしたら、アナタは興奮するでしょ。朝っぱらから、んなの目視したくないんだよ」
「…………新たな角度から攻めたのに、通用しなかった……。腕を上げたわね従兄くん……っ」
「意味がわからん。警戒は有難いけど、抱き付くのはもうやめてよね」

 俺はため息を吐き、洗面所で顔をバシャバシャ。それから二階に上がって日課である朝陽浴をし、ジュージューという美味しそうな音が漏れてるLDKのドアを潜った。

「にゅむーっ。ゆーせー君おはよー」
「おはよ。スカッと晴れたいい朝だね」

 キッチンでフライパンを操るレミアに、朝の御挨拶をする。
 朝早くから、ありがとね。いつも助かってます。

「おはようございます。色紙様」
「おはよ。気持ちの良い朝だね」

 ダイニングテーブルの傍で正座をしている、白いTシャツと青のジーパンを纏った少女に朝の御挨拶をする。
 それにしても、綺麗な正座だ。お手本として教科書に載りそうだ――じゃなくて。
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登場人物紹介

色紙優星 16歳の少年


高知県生まれの主人公。

リリウという神様の聞き間違えで魔王使いになってしまい、おまけに『究極奥義』と呼ばれる力を何個も持ってしまった高校生。優しく他人想いなのだが、彼はとあるセンスが全くないのであった……。

黒真レミア 16歳の少女


魔王、でありながら伝説の勇者の能力を持つ。冷徹でクールな容姿と声音を持つ美少女だが、性格はほわほわでお子ちゃま。『にゅむ』という独特な言葉を多用し、時にはにゅむのみで会話を行おうとする。例「にゅむーむ。にゅむ。にゅむりん」。

なお愛用の武器である聖剣は魔王の天敵であるため、使うと痺れる。

金堂フュル 16歳の少女


伝説の勇者、でありながら伝説の魔法使いの能力を持つ。元気一杯の猫っぽい女の子で、高知県の英雄・坂本竜馬の大ファン。そのせいで『ぜよ』と中途半端に覚えた土佐弁を使い、主人公のことは『師匠』、仲間のことは名前のあとに『先生』とつけて呼ぶ(例えばレミアの場合はレミア先生)。

なかなかにおバカな女の子。

虹橋シズナ 17歳の少女


伝説の魔法使い、でありながら魔王の能力を持つ。大和撫子然とした容姿を持つ美少女であり、主人公の義理の従妹。

重度の怒られ好き。

とにかく変で厄介で面倒くさい人。

茶操ユニ 18歳の少女


伝説のドールマスター、でありながら伝説のプリーストの能力を持つ。キグルミ族という一族の人間で、閉園したテーマパークのキャラクター・二足歩行ウサギの着ぐるみを着ている。口癖は、ミョン。

実はお笑いにうるさく、親戚は某有名人。

プリースト神 年齢不明


茶操ユニが持つプリーストの杖に宿る、プリーストの神様。

実は……。

橙式エイリ 14歳の少女


伝説のモンスターテイマー、でありながら伝説の召喚士の能力を持つ。所謂スケバン然とした容姿と声を持つが、グループ最年少の中学生でみんなの妹的存在。でもレミアやフュルよりずっとまともで、ヤツらの方が妹的存在な気がする。

野菜が大好きで、とても詳しい。

タンザ・クー 年齢不明


橙式エイリの召喚獣で、俳句世界(はいくわーるど)の王女。

タンザが姓で、クーが名。

二万年後に、地球の傍に誕生する世界からやって来た。


色紙育月 16歳の少女


高知県大豊町在住の、優星の従妹。中学卒業と同時に本格的にピーマンの生産を始め、今ではテレビの取材を受けるほどになっている。


薄幸の美少女然とした容姿と、従兄想いの優しい性格が自慢の従妹です! by色紙優星

謎の声 年齢不明


優星にだけ聞こえる、不思議な声。

なぜか正体を明かそうとしない。

リリウ 神様


願いを聞き間違えて、優星を魔王使いにしてしまった神様。

神様の世界で流行しているゲームに夢中で、神様のお仕事はほとんどしない。

とってもダメな、神様(?)な神様。

麗平活美 16歳の少女


ストロベリーブロンドのドリルヘアーが特徴の、優星のクラスメイト。

お嬢様然とした容姿で気品があるように見えるが、非常に活発。実は……。

空霧雲海 16歳の少年


頼れる兄貴系の容姿と性格を持つ優星の同級生であり、悪友であり、重度のオタク。

作中に登場する名曲(迷曲)を作った人。

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