第12話 国王陛下直属の臣下たちとの対面式
文字数 1,603文字
その後、私を起こしに来た侍女たちが絶句していた。
それは、そうだろう。ベッドの端で、傍目には抱き合っているように見える私達。
丁度、フレデリックが私の耳元で囁いている時に入って来たのだからなおさらだ。
侍女の内の誰かが呼びに行ったのだろう。すぐに、クライヴがやって来て、フレデリックを寝室からさっさと追い出してしまった。
そして侍女たちには、私の召し替えをするように指示を出して、退出しようとしていた。
「あ……あの」
「はい?」
私の呼びかけにクライヴは振り返る。
呼び止めたのはいいのだけれど、なんといって良いのかわからない。
だって、こんな状況……。私だって、呆れてしまうわ。
「フレデリック様の我がままにも、困ったものね。お互い苦労するわ」
わざと敬語を外し、やわらかい口調でそう言ってくれた。
顔は苦笑いしているけど、そうしてクライヴは自分の役目は終わったとばかりに、部屋を出て行ってしまった。
王宮の中は忙しい。
下っ端の召使はもとより、国王もその側近も例外ではない。
私も朝食が済んだ後、すぐに表で働いている国王の側近ほか、近衛騎士団団長、各大臣。
いわゆる国を動かしている臣下との対面があった。
この王宮、王族との謁見の間は貴族たちが大勢入れるものから、ごく親しい者だけが謁見出来る小規模なものまで複数ある。今回、私が通されたのは中規模のものらしい。
私は普段なら国王が座る場所に座らされている。
私の心持少し前、両横に控えるように、クライヴと後初対面のバシュレ・アルベールがいる。
侍女たちも横に控えていた。
後は警備の兵士達。
そうして臣下たちが一人ずつ入室をしてきて、それぞれに挨拶をしている。
なんだか退屈だ。
臣下のほとんどが、先代から仕えているようで、その事からはじまり、長々と口上を言い続けるものだから、最後の一人が終える頃にはもう夕方になっていた。
「さぞ、お疲れになったでしょう、セシリア様。良く最後までにこやかに対応されてましたわ」
「本当に、ご婚礼前に表に出る事……。それも、陛下と一緒ならまだしも、単身でだなんて、異例中の異例でしたのに。ご立派でしたわ」
自室に戻るとアンとセルマが、私を部屋着に着替えさせながら言ってくれた。
「まぁ、そうでしょうね」
普通はありえない。
婚姻を結んで、正式に王妃になったとしても、国王陛下同席の下、主だった者を呼び寄せて顔見世程度の謁見をするのみ。
今日の様に、その方々の経歴、普段の職務まで、事細かに説明などしない。
それくらい、国王と王妃の仕事も、普段顔を突き合わせている臣下も違うのだ。
ひと息ついて、少し遅めのティータイムをしていると、クライヴがやって来た。
「本日は、お疲れさまです、セシリア様。大変ご立派でした」
「ありがとう」
言葉とは裏腹に、目が笑っていない。
何か失敗でもしたかしら、私。
「それで、本日対面した者どもの、名前や顔、経歴、普段の職務等くらいは頭に入りましたか?」
「入ってるわ。それくらい」
紹介された方々を覚えられなければ、下位貴族の奥方ですらやっていけない。だから、貴族の子女は必ずマナーと共に身に付けさせられる。
ロマンス小説の中ならまだしも、現実に侍女や平民との身分差の恋が成り立たないのは、そういう役割すらこなせない者が多いからなの。
「それはようございました」
一瞬、馬鹿にされているのかと思った。だけど、短い付き合いではあるけど、人を馬鹿にするような人では無いと思うし。
「これから、よく目にする者どもですので」
「はぁ?」
そんなバカな。
何をどうしたら、表にしかいない国王陛下直属の臣下たちによく会う羽目になるのだろう。
私の戸惑いとは別に、クライヴは安心した顔で笑うのだった。
それは、そうだろう。ベッドの端で、傍目には抱き合っているように見える私達。
丁度、フレデリックが私の耳元で囁いている時に入って来たのだからなおさらだ。
侍女の内の誰かが呼びに行ったのだろう。すぐに、クライヴがやって来て、フレデリックを寝室からさっさと追い出してしまった。
そして侍女たちには、私の召し替えをするように指示を出して、退出しようとしていた。
「あ……あの」
「はい?」
私の呼びかけにクライヴは振り返る。
呼び止めたのはいいのだけれど、なんといって良いのかわからない。
だって、こんな状況……。私だって、呆れてしまうわ。
「フレデリック様の我がままにも、困ったものね。お互い苦労するわ」
わざと敬語を外し、やわらかい口調でそう言ってくれた。
顔は苦笑いしているけど、そうしてクライヴは自分の役目は終わったとばかりに、部屋を出て行ってしまった。
王宮の中は忙しい。
下っ端の召使はもとより、国王もその側近も例外ではない。
私も朝食が済んだ後、すぐに表で働いている国王の側近ほか、近衛騎士団団長、各大臣。
いわゆる国を動かしている臣下との対面があった。
この王宮、王族との謁見の間は貴族たちが大勢入れるものから、ごく親しい者だけが謁見出来る小規模なものまで複数ある。今回、私が通されたのは中規模のものらしい。
私は普段なら国王が座る場所に座らされている。
私の心持少し前、両横に控えるように、クライヴと後初対面のバシュレ・アルベールがいる。
侍女たちも横に控えていた。
後は警備の兵士達。
そうして臣下たちが一人ずつ入室をしてきて、それぞれに挨拶をしている。
なんだか退屈だ。
臣下のほとんどが、先代から仕えているようで、その事からはじまり、長々と口上を言い続けるものだから、最後の一人が終える頃にはもう夕方になっていた。
「さぞ、お疲れになったでしょう、セシリア様。良く最後までにこやかに対応されてましたわ」
「本当に、ご婚礼前に表に出る事……。それも、陛下と一緒ならまだしも、単身でだなんて、異例中の異例でしたのに。ご立派でしたわ」
自室に戻るとアンとセルマが、私を部屋着に着替えさせながら言ってくれた。
「まぁ、そうでしょうね」
普通はありえない。
婚姻を結んで、正式に王妃になったとしても、国王陛下同席の下、主だった者を呼び寄せて顔見世程度の謁見をするのみ。
今日の様に、その方々の経歴、普段の職務まで、事細かに説明などしない。
それくらい、国王と王妃の仕事も、普段顔を突き合わせている臣下も違うのだ。
ひと息ついて、少し遅めのティータイムをしていると、クライヴがやって来た。
「本日は、お疲れさまです、セシリア様。大変ご立派でした」
「ありがとう」
言葉とは裏腹に、目が笑っていない。
何か失敗でもしたかしら、私。
「それで、本日対面した者どもの、名前や顔、経歴、普段の職務等くらいは頭に入りましたか?」
「入ってるわ。それくらい」
紹介された方々を覚えられなければ、下位貴族の奥方ですらやっていけない。だから、貴族の子女は必ずマナーと共に身に付けさせられる。
ロマンス小説の中ならまだしも、現実に侍女や平民との身分差の恋が成り立たないのは、そういう役割すらこなせない者が多いからなの。
「それはようございました」
一瞬、馬鹿にされているのかと思った。だけど、短い付き合いではあるけど、人を馬鹿にするような人では無いと思うし。
「これから、よく目にする者どもですので」
「はぁ?」
そんなバカな。
何をどうしたら、表にしかいない国王陛下直属の臣下たちによく会う羽目になるのだろう。
私の戸惑いとは別に、クライヴは安心した顔で笑うのだった。