16 ノール

文字数 1,114文字

 二人は、無事ルウィンラーナに帰り着いた。
 彼らのもたらした、人間についての知識は、ルウィンたちを驚かせた。
 テッダは今だに、
「おれは信じないぜ。人間なんて、うそに決まってる」と言っているが、内心は興味を持っているようだ。
 何しろ、存在が予告されていた、ニンゲンというものが、ルウィンと似ているものであるということが、初めてわかったのだ。
 これだけの成果を上げたにもかかわらず、ハーレイは不満だった。
 今度の旅で、手紙の謎解きが進まなかったのが、いやだった。ハーレイは、毎日、図書館へこもるようになった。自分でも、いろいろ調べてみようと思ったのだ。
 その日も、図書館で本を読んでいると、ドアにノックの音がした。
「どうぞ」
「やあ」
「ノール! それにロークルとリークル!」
「みんなで考えた方がいいと思ってね。兄弟もさそったんだ」
「よく来てくれたよ。一人じゃ気が滅入っちゃうから」
 四人は、テーブルの席に着いた。
「さっそくだけど、手紙を見せてよ」
「うん。これさ」
「たしか、不明の言葉が四つほどありましたな」
「その通りさ、リークル。最初からいくと、ノール、君読んでよ」
「わかった。ええと、まず、”キーゴン”と、”あること”、そして”あるもの”に、”何か”の四つだ」
「そのうち二つは、わかったんだよね」
「 ”キーゴン”は、ハラルドの塔に住むキリス・ギーの種族のことだし」
「 ”あるもの”って、ぼくたちルウィンのことだろ」
 ロークルが言った。
「ん」
「と、ちょっとまてよ。もう一回読んでみよう。ふむふむ、んん。ルウィンで、キリス・ギーと。あれ、これは」
「何だい、ノール」
「もしかして」
「早く言えよ」
「 ”何か”って、『人間』のことじゃないか、たぶん
——!
 三人は、体が凍りついた。
「見たかい?」
「見たよ」
「君も、見たかい?」
「うん」
 
 ノールが、消えたのだった。
 
   *
 
 彼は、消えた。
 この事で起こったルウィンラーナの様子は、言うまでもないだろう。
 誰もが悲しみ、そして恐れた。
 最も苦しんだのは、ハーレイだった。
 ノールを旅に連れて行ったために、そして、自分で手紙の言葉が解けなかったために、彼を自分の代わりに消してしまったと思ったのだ。ハーレイは、みんなと、こうしているだけで、とてもつらいのだった。
 それでも、”何か”とは、「人間」だということは、わかった。
 ハーレイとルウィンラーナの仲間の悲しみは、時間がいやしてくれるかもしれない。
 やがて、彼らは再び歩き出すだろう。
 そしてこの時、人間たちには、試練がおとずれようとしていた。
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登場人物紹介

リダン|大陸の旅人

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