プロローグ

文字数 1,134文字

 家々から漏れる光は消え、多くの生物が眠る刻。草木で囲われた家からは、悲痛な声が響いていた。
 二階建て家屋の庭は雑草で覆われ、沢山のゴミが捨てられている。それらは、腐り始めた残飯や汚物で、周囲に不快な臭いを放っていた。
 
 その家から響く声は次第に掠れていくが、必死に謝り続けている。その叫びは天には届かず、黒衣の断罪人にだけ届いていた。 
 その身を闇に紛らせるよう黒い外套を纏い、手には黒色の革手袋。そして、黒い布で幼さの残る顔を隠した者が、家を見つめていた。
 
 暫くして声が聞こえなくなった時、家の玄関がゆっくり開く。すると、屋内から痩せ細った子供が外に投げ出され、受け身を取ることも無く倒れ込んだ。その子供は、うつ伏せに倒れたまま体を痙攣させ、口から白い泡を吐く。
 
 それを見た者は舌打ちをし、外套を脱いで子供の体に被せた。その者は、外套で子供の体を包み込んで抱き上げ、家の敷地を出た場所に寝かせる。
 
「目、覚ますなよ」
 そう言って子供の髪を撫でると、断罪人は玄関に向かって歩き始めた。外套を子供に与えた者は、それと同色の衣服を纏い、その腰に巻かれたホルスターには、二丁の拳銃が入れられている。
 
 また、靴の踵部分には金属製の板が嵌められていたが、その者は足音を立てることなく玄関に到着する。黒衣の者は、数拍の間玄関のドアを眺めた後、楽しそうな笑みを浮かべた。
 
「楽しい、

の、時間だ」
 断罪人は、言い終わると同時にドアノブの横を蹴って壊した。そして、ドアの内側に手を入れて鍵を開けると、笑みを浮かべたまま屋内へ進む。
 
 すると、ドアを壊された音に気付いた住人が、大きな足音を立てながら玄関に駆け付けた。彼は、怒りを表すように眉間を痙攣させ、突然の侵入者を指差している。
「誰だ! 人の家に勝手に」
「煩いよ」
 侵入者は、住人の声を遮るように吐き捨てると、眼前に居る男の腹を勢い良く蹴った。腹を蹴られた男は低い声を漏らし、腹部を押さえて膝を付く。一方、男の様子を見た侵入者は満足そうに笑い、男の顔を強く蹴った。
 
 この時、蹴られた額の皮膚は裂け、木製の床には血が飛散する。男は、その痛みに恨みがましそうに侵入者を見上げるが、腹を押さえたまま動くことは無かった。
「本当は、最後までやりたいんだけど」
 そこまで言ったところで、侵入者は男の頭を力任せに踏みつける。そして、男が気を失うまで踏み続けると、侵入者は懐から金属製の拘束具を取り出した。
 
「決まりだしね」
 そう呟くと、侵入者は男の足首と手首に枷を嵌めて外に出る。一つの仕事を終えた者は夜空を仰ぎ、ゆっくり息を吐き出した
 その後、黒衣を纏った者は家に背を向けて歩き出し、気を失ったままの子供を抱いて闇に溶けていった。
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登場人物紹介

???
内容の都合上、名無し状態。

顔に火傷の痕があり、基本的に隠している&話し方に難有りでコミュニケーション力は残念め。
姉とは共依存状態。

シスターアンナ
主人公の姉。
ある事情から左足が悪い。
料理は上手いので飢えた子供を餌付け三昧。

トマス神父
年齢不詳の銀髪神父。
何を考えているのか分からない笑みを浮かべつつ教会のあれこれや孤児院のあれこれを仕切る。
優しそうでいて怒ると怖い系の人。

シュバルツ
主人公の緩い先輩。
本名は覚えていないので実質偽名。
見た目は華奢な青年だが、喧嘩するとそれなりに強い。
哀れな子羊を演じられる高遠系青年。

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