高波一乱

文字数 2,888文字

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世界の平和のために!


この勇者様の経験値になってくれーーーーっっっ!!!!

いきなり現れて、なにを言い出すのかと思えば……。


世の中、平和という言葉を持ち出す輩ほど、危険な思想を持っているものだ。



……まあ、拙者も他人のことは言えないがな……ふふふ……

ぐああっっ!!


つ、つよい……強すぎる……!

我が技を使うまでもない。


この刀の露となって消えるがいい!



ぐ……ぐふっ……
赤沙汰の部屋

takanami

……負けたか。


しかし、なんて強さだ……まさか負けイベントなのか!?

このレベルでは勝てそうにない……どうにかして経験値を稼がないとなあ
引きこもりだった俺が勇者として目覚めたのは、15歳の誕生日を迎えた、朝のことだった。


takanami

おきなさい、わたしのかわいいアカサタや。

今日はお前が、勇者として初めて学校へ行く日だったでしょう。


さあ、お母さんについてきなさい。

むにゃむにゃ……勇者……俺が……!?
その衝撃的な事実を聞いた瞬間、俺は勇者として目覚めたのだった。


とはいえ最初はレベル1。

ステータスもひどいものだった。


その時のデータは、きちんと「ぼうけんのにっき」にメモしてある。


ーーーーー

レベル1

最大HP:17

最大MP:6

力:8

魔力:3

素早さ:5

体力:8

ーーーーー

takanami

あれから数ヶ月、弱そうな魔人に挑みかかっては、少しずつ経験値を稼いできた。


レベル15までは上がったけれど、ここからがなかなか上がらなくて……。


強そうなやつに挑んでみた結果がこれだ。

アカサタ〜


ごはんよー

はーい
名浜家リビング

takanami

まだやっているの、勇者ごっこ……。


お母さんの冗談だったのに、まさか魔人になってしまうなんて。


まあ、引きこもってゲームやられているよりはマシだけれど。

遊びじゃないって!


いつか魔王が復活したら、世界を救えるのは俺だけなんだ!



……じゃあ、そろそろ学校に行ってくる。


やくそうある?

やくそうじゃなくて、ほうれん草でしょ。


こんなもので体力が回復するなんて、魔人の妄想力ってすごいわねえ。

さんきゅー!


さあ今日も1日、経験値稼ぎだ!


そしてあの侍野郎を、こてんぱんに叩きのめしてやる! 


この勇者アカサタさまがな!!

希望崎学園 廊下

takanami

弱そうなやつ、弱そうなやつは……


リアルの世界でも、雑魚敵から順番に出てきてくれれば楽なんだけどなあ……

危ない! そこ、階段!!
う、うわああああーーーーーっっっ!!!!???
ふぎゅうっっ!?

takanami

あいたたた……あれ、だれか下敷きに……
たいへん、邪賢王ちゃんが下敷きになっちゃった!


あ、あわわわわ!


何が起こっても、わたしはしらないんだから!!

邪賢王って、あの……



ああ、ほんとだ!


俺の一撃で倒してしまったのか!!!

も、ものすごい経験値だ!!


頭の中でレベルアップのファンファーレがなりまくっている!!!

レベル99

最大HP:999

最大MP:999

力:255

魔力:255

素早さ:255

体力:255


呪文 全部習得

takanami

やったぜ!!


試しに魔法のひとつでも打ってみるかな。


校庭にむかって、ギガビリン!!(巨大な雷の雨を降らせる)

きゃああああーーーーっっ!!!!!


な、何が起こっているの!???

これならあの侍にも勝てる!


もうレベルは99だから、経験値を稼ぐ必要はないけれど……


あいつなら、きっとつよい武器をドロップするにちがいない!

放課後、河原にて

takanami

むっ……あの時の。


真っ二つにしてやったはずだが……

勇者アカサタだ!


前回のようにはやられないぞ!

たしかに、この短時間で見違えるように強くなっているようだ。


……拙者の名は小太刀半蔵。


この世界に平和をもたらすため、世直しの旅を続けている。

どうだ、勇者アカサタ。


その強大な力を、拙者に貸してはくれないか?


勇者とて、一人旅は心細かろう。

お前を仲間に、だと……?
信用できないというのなら、拙者の能力を教えてやろう。


秘儀・半額斬


あらゆるものを半分に変えることが出来る能力だ。


……この通り!

巨大な鉄塔が半分に……!

その気になれば、あらゆる大きさの物質……概念までをも切り分けることが出来る。


勇者アカサタよ、貴様はどのような世界を望む?


拙者の力で、この世界を理想の世界と悪の世界、真っ二つに切り分けてくれよう。

さあ、拙者とともに……
だめだ!


いまわかったぞ!


お前が魔王だったんだな!!

……?
世界を半分に……闇の世界と、光の世界に分ける!


そこから光の世界に侵略するんだ!


そんな魔王の常套手段に、勇者アカサタが乗るわけがあるか!

いまここでお前を倒す!


レベル99勇者の前に、敵はいない!

愚かなことだ。


拙者が言ったことを忘れたのか?

くらえ、半額斬!


貴様のレベルとやらを、限界まで割ってやろう!

レベル50

レベル25

レベル12

レベル 6

レベル 3


takanami

そんな、99あったレベルが……!
はっはっは


最初にあった時より、はるかに弱くなったのではないか?

貴様の魔人能力など、所詮は児戯。


勇者ごっこに興じるのは結構だが、信義なき能力では世界を変えることはできないのだ。



そこで指をくわえて見ているがいい。


拙者がこの世界を、半分に切り分ける様をな!!!!

レベル99だって、レベル3だって関係ない!


俺は勇者だ!!


最後には決まって奇跡が起こって、なんとかなるものなんだ!

なっ!?


腕に妙な紋章を!?

妙な予感がする……


半額斬、その紋章の半分を消し去れ!!!

そこまで!
そんな、勇者の紋章が……

光が消えていく……
無様だな、勇者……いや、今となってはただの一般人か。

貴様はそこで、この俺の世直しを見届けるがいい!
すべてを半分にする力……

本当にそんなことで、世界を幸せにすることができると思っているのか!?
当然だ。

不安や苦しみ、差別に争い……

それらのすべてを半分にしてしまえば、世の中は平和に近づく!
それは違う!!

たしかに世界は不平等や苦しみで満ち溢れている!

でもその苦しみを、自分たちの力で乗り越えることで、それは新たな幸せへと繋がるんだ!
不幸を半分にすることを考えている暇があったら、幸せを2倍にすることを考えろよ!
おのれ、いわせておけば……

なにも出来ないくせに、言いたいことをいいおって!

殺すのは最後にしてやろうと思ったが、気が変わった。

この場で真っ二つに切り捨ててくれる! 切り捨て御免!
!!

な、なんだこの光は!
かかったな!!

勇者の紋章はふたつあったんだ!!

ひとつは俺が魔人となったときのもの……

そしてもうひとつは、これ……俺が小さい頃から、自分の手に書き続けきた自作の紋章!
この2つを重ね合わせる!!

たとえ一瞬でもいい、この俺に真の勇者のちからを!!
はんがくざっ……ま、まにあわない!!!!
うおおおおおおーーーーーーーーーーっっ!!!!
~~~~~~~~~~~~~~~

~~~~~~~~~~~~~~~

takanami

……なぜ殺さない。

俺はお前を切り、世界をも切ろうとした「魔王」だぞ
言っただろう。

苦しみを半分にするんじゃない。

幸せを2倍にするのが勇者の仕事なんだ。
やり方は違ったかもしれないが、オレたちが目指すことは一緒だ!

ともに力をあわせて頑張ろう!
……俺の負けだな。
And to the legend ...

takanami

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登場人物紹介

魔人勇者アカサタ


本名:名浜 赤沙汰(なはま あかさた)

ゲームばかりしている妄想引きこもり少年だったが、15歳を迎えた朝、母親の「実はあなたは勇者なの」という冗談を真に受けて魔人化した。


能力:勇者脳

現実世界をゲーム世界の勇者視点で都合よく解釈する。


例)

敵を倒すと経験値が手に入り、レベルアップでステータスが上昇する。

成長とともに、ゲーム世界の勇者が使えそうな魔法や特技を習得する。

死んでも自宅で復活することが出来る。etc


戦う理由:いつか現れるであろう魔王を倒すために、魔人を相手に経験値稼ぎをしておきたい。


アイコン:男性 メイン 学生 の3Pめくらい


「拙者の名前は半額侍!

 小数点以下――斬り捨て御免!!」



デフレーションの侍

○小太刀 半蔵(こだち はんぞう)



この世の中に不満を持ち、

全てを等しく半分にしようと目論んでいる青年。

毎晩の食事も自分で用意しなければならないぐらい極貧かつ特殊な家庭に生まれ育ち、お金を持つことも使うことも贅沢だと考えるようになる。

それが両親が殺害され組織に引き取られるまでの、15年間。


15歳からは魔人候補生と呼ばれる孤児の少年少女と、

施設での集団生活をさせられるようになる。

スーパーでバイトを始め、一般的な価値観を学んでいった。

初めて手にするお金の重み――彼は少しずつ人間に近づいていく。

だが、すぐに物価の高さに辟易を覚えてしまう。

低賃金で働かされ、買いたいものを諦めたときの悔しさ。


もしも物価が半分になったら、今あるお金を2倍使えるのでは――。


そのことを施設長に話すと、男は嬉しそうに笑い、目一杯褒めた。

そして17歳の誕生日、彼は一振りの真剣をプレゼントされる。

「さぁ、これを使え。そして世界をぶった斬るのだ」

彼はありったけの不満を籠めて、斬撃を放った。

その日、世界の物価が半分に変わる――。


それから彼は半額侍を名乗るようになると、

不満あるものを片っ端から半分にすることにした。




能力名:半額斬《Half is Beautiful》

あらゆるものを半分に変えることのできる能力。

完熟卵を半熟に。

20才の女性を10才に。

富士山の標高も半分に。

こんにゃくだって、真っ二つ。

地球の直径を半分にすることも――出来る。



戦う動機:世界を創り直すため。




イラスト:三日月アルペジオ

作者:如月真琴


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