1.金髪ねーちゃん
文字数 2,269文字
気がつくと見覚えがない空間にいた。なんだかヒドく頭がボーッとしてる。
えーと……あれ、おれはどこにいるんだ……? ゆっくりと周りを見回してみる。
真っ白い部屋だ、壁も床も天井も。どの面も真っ平らで何の装飾もない。家具類も窓も見当たらない。
いやそうじゃねえ、何もないわけじゃないな。正面にあるわ、物が。真っ白な、幅3メートル高さ1メートルくらいの机が。そしてそこには女が座っている。金色の長い髪に青い目、白い肌。凄みを感じるくらいの、メチャメチャな美形だ。変わった服の上にプロテクターみたいなのを着けて、さらにその上に薄い半透明の、ありゃショールってのか? そんなんを巻きつけている。
えーと、なるほどな。これはあれだ。
アメリカ人だな。
「違います」
突然女が喋 った。
…………え?
「どこだここは」
声を出してみて、またあれっ? と思う。違う、違うぞ。今のはおれの声じゃねえ。
「まずはこれを。メニュー」
言葉と同時に、座っているねーちゃんの目の前の空間に何かゴチャゴチャ書かれている長方形の半透明なパネルが現れた。女はそのパネルを右手の指2本で押さえると、手をスッと自分の右肩の前に移動させた。半透明パネルは指先に吸い付いてるように右手と一緒に位置を変え、再びおれから女の顔が見えるようになる。
女が表面に指先を走らせピポピポと何やら操作する、すると足元でブンッと音がした。見下ろして驚いたね。今まで何も無かったはずの足元に服があるんだよ。
いやそれはいいんだ。問題は、だ。
おれの脚だ。むき出しなんだ。ズボン履いてねえ。
いやそれもいいんだ。
ここからが核心だ。
パンツ履いてねえ。
可愛いねーちゃんの前に珍棒丸出しで立ってるわけだ。もちろん上半身も服ナッシング、まっぱちゃんだよ。
「いやぁ〜〜〜ん!」
思わず可愛い声が出ちゃったよ。
メッチャ急いで服を着た。アメリカ人にガン見されながらね。着ながらおれは混乱している。声だけじゃねえ。違うんだ、体が。まるで違う。鍛えて鍛えて鍛え抜いて、闘うための筋肉で武装していたおれのターミネーターボディがどっか行っちまってる。なんなんだ、このヒョロい胴体は、細い腕は!? いったい何がどうなっちまってんだ。
「で、えーと、なんだっけ? おれさっき何か言ったよな?」
妙なデザインの服を着終わったおれは、何か尋ねたよなと思い出そうとする。どうも頭が上手く回らない。
「いや〜〜〜ん! ですか?」
「違うわ! その前だよ!」
「その前ですか。当然の疑問ですね。ここがどこか、ということですけど」
そう、それだよそれ!美女は声もキレイだねえ、やや幼 げで可愛い感じだ。
しかしなんだ。このねーちゃんが使ってんのは日本語じゃねえ。今まで耳にしたことがあるどの国の言葉とも全然違う。なのにその言葉をおれはちゃんと理解できてる。いや、それどころか、おれ自身もその何だかわからねえ言葉を喋ってんだが……こりゃいったいどーゆーことだ?
「いいですか、落ち着いて聞いてください、梶龍彦 。まだここは準備室、スターティングゲートルームなのですが。あなたにはこれから、ある惑星に行って頂きます」
「はああ?? ある惑星だぁ!?」
何言ってんだコイツ。なんとかルームってのも全然わかんねえけど。
「そうです。その惑星の名はヴァルハラ。最上位神であるオーディン様やゼウス様をはじめ、大勢の高位神が力を結集して造り上げたバトルゲーム専用の惑星です。あなたにはそこでパーティーの要 であるLS=ライブソウルとして、わたしと一緒に戦って頂きます」
「…………あ〜〜〜っ、はい」
おれはしばらく口をポカンと開けていたようなんだが、どうにか気を取り直して返事をした。ずいぶん間の抜けた声が出ちゃったよ。
「あ、自己紹介が遅れましたね。わたしは女神イスタルシア。大地に恵みをもたらす豊穣 神です。長いお付き合いになると思います。よろしくお願いしますね、梶龍彦」
………うーーーん!
微笑むアメリカ人の顔を、改めてよく見てみる。綺麗 な長い金色の髪。顔の輪郭は卵みてえに形がいい。パッチリとした美しい目にスッと通った鼻筋。やっぱとんでもない美人だね。
なのにだ、にも関わらずだ!
これはあれだ。
アレがナニしちゃってる人だ。
可哀想に。お気の毒に。見ればまだ若いのに。こんなに見た目はイケてるのに。ご家族は、さぞやお嘆きのことだろう。
「何を言ってるのかしら。意味がわからないわ」
微笑んでいた女の表情が変わってる。眉間 にシワを寄せて、不機嫌そうに。ていうか、おれ何も言ってませんけど?
「わたしは神ですから。読もうと思えば、あなたの思考を読むことができます」
うーーーん、なんつーーかな。リアクション難しいなコレ!
とりあえず、なぜこんなことになってるのかを考えてみる。
えーと。ここで気がつく前、最後の記憶は……と。まだ上手く回らない頭をひねり……思い出した。
そうだ、帰るところだったんだ。
いつものようにジムで汗を流した。今日で借りてるDVDの期限が切れるから、帰りにビデオ屋寄らなくちゃと思って原チャで来てて。で、ジム出て飛ばして、交差点で右折するのに急いでたから無理して突っ込んで、コケた。で轢 かれたんだ、トラックに。
そして潰れた。
そうだ。
おれは死んだんだった。
えーと……あれ、おれはどこにいるんだ……? ゆっくりと周りを見回してみる。
真っ白い部屋だ、壁も床も天井も。どの面も真っ平らで何の装飾もない。家具類も窓も見当たらない。
いやそうじゃねえ、何もないわけじゃないな。正面にあるわ、物が。真っ白な、幅3メートル高さ1メートルくらいの机が。そしてそこには女が座っている。金色の長い髪に青い目、白い肌。凄みを感じるくらいの、メチャメチャな美形だ。変わった服の上にプロテクターみたいなのを着けて、さらにその上に薄い半透明の、ありゃショールってのか? そんなんを巻きつけている。
えーと、なるほどな。これはあれだ。
アメリカ人だな。
「違います」
突然女が
…………え?
「どこだここは」
声を出してみて、またあれっ? と思う。違う、違うぞ。今のはおれの声じゃねえ。
「まずはこれを。メニュー」
言葉と同時に、座っているねーちゃんの目の前の空間に何かゴチャゴチャ書かれている長方形の半透明なパネルが現れた。女はそのパネルを右手の指2本で押さえると、手をスッと自分の右肩の前に移動させた。半透明パネルは指先に吸い付いてるように右手と一緒に位置を変え、再びおれから女の顔が見えるようになる。
女が表面に指先を走らせピポピポと何やら操作する、すると足元でブンッと音がした。見下ろして驚いたね。今まで何も無かったはずの足元に服があるんだよ。
いやそれはいいんだ。問題は、だ。
おれの脚だ。むき出しなんだ。ズボン履いてねえ。
いやそれもいいんだ。
ここからが核心だ。
パンツ履いてねえ。
可愛いねーちゃんの前に珍棒丸出しで立ってるわけだ。もちろん上半身も服ナッシング、まっぱちゃんだよ。
「いやぁ〜〜〜ん!」
思わず可愛い声が出ちゃったよ。
メッチャ急いで服を着た。アメリカ人にガン見されながらね。着ながらおれは混乱している。声だけじゃねえ。違うんだ、体が。まるで違う。鍛えて鍛えて鍛え抜いて、闘うための筋肉で武装していたおれのターミネーターボディがどっか行っちまってる。なんなんだ、このヒョロい胴体は、細い腕は!? いったい何がどうなっちまってんだ。
「で、えーと、なんだっけ? おれさっき何か言ったよな?」
妙なデザインの服を着終わったおれは、何か尋ねたよなと思い出そうとする。どうも頭が上手く回らない。
「いや〜〜〜ん! ですか?」
「違うわ! その前だよ!」
「その前ですか。当然の疑問ですね。ここがどこか、ということですけど」
そう、それだよそれ!美女は声もキレイだねえ、やや
しかしなんだ。このねーちゃんが使ってんのは日本語じゃねえ。今まで耳にしたことがあるどの国の言葉とも全然違う。なのにその言葉をおれはちゃんと理解できてる。いや、それどころか、おれ自身もその何だかわからねえ言葉を喋ってんだが……こりゃいったいどーゆーことだ?
「いいですか、落ち着いて聞いてください、梶
「はああ?? ある惑星だぁ!?」
何言ってんだコイツ。なんとかルームってのも全然わかんねえけど。
「そうです。その惑星の名はヴァルハラ。最上位神であるオーディン様やゼウス様をはじめ、大勢の高位神が力を結集して造り上げたバトルゲーム専用の惑星です。あなたにはそこでパーティーの
「…………あ〜〜〜っ、はい」
おれはしばらく口をポカンと開けていたようなんだが、どうにか気を取り直して返事をした。ずいぶん間の抜けた声が出ちゃったよ。
「あ、自己紹介が遅れましたね。わたしは女神イスタルシア。大地に恵みをもたらす
………うーーーん!
微笑むアメリカ人の顔を、改めてよく見てみる。
なのにだ、にも関わらずだ!
これはあれだ。
アレがナニしちゃってる人だ。
可哀想に。お気の毒に。見ればまだ若いのに。こんなに見た目はイケてるのに。ご家族は、さぞやお嘆きのことだろう。
「何を言ってるのかしら。意味がわからないわ」
微笑んでいた女の表情が変わってる。
「わたしは神ですから。読もうと思えば、あなたの思考を読むことができます」
うーーーん、なんつーーかな。リアクション難しいなコレ!
とりあえず、なぜこんなことになってるのかを考えてみる。
えーと。ここで気がつく前、最後の記憶は……と。まだ上手く回らない頭をひねり……思い出した。
そうだ、帰るところだったんだ。
いつものようにジムで汗を流した。今日で借りてるDVDの期限が切れるから、帰りにビデオ屋寄らなくちゃと思って原チャで来てて。で、ジム出て飛ばして、交差点で右折するのに急いでたから無理して突っ込んで、コケた。で
そして潰れた。
そうだ。
おれは死んだんだった。