ゲームデザインのはじめ方

文字数 5,620文字

2日目ですので、会場移しました。

本日もどうぞよろしくお願いします。

今日はみなさまそれぞれのペースでご参加ください。

今日も自由に質問、お話してくださればと思いますが、まあ、ゆるやかなテーマとして、ゲームデザインの初歩の初歩、どういう地点から発想するのが、一番ゲーム作りやすいか、などについて話せれば。

ゲームデザインについては、テーマ先行で作る(物語的要素や世界観先行でつくる)のとシステム先行で作る(双六とか大富豪系とか)があると思いますが、カナイさん、架神さん、参加者のみなさんはどちら派ですか?

また、初心の初心者にとってはどちらが作りやすいものなんでしょうか。

目指したいプレイ感覚を目指して作る……感じですかね……。


「ウィザードリィみたいに、少しずつ培ってきたものが一瞬にしてクソのように失われるゲームを作りたい」


みたいな。

ダンゲロス・ボードゲームの時は、


「ダンジョン内を実際に移動しながら、敵と戦って少しずつ強くなっていくゲーム」


を目指してました。いろいろあってダンジョンじゃなくなっちゃったけど。

初心者は何から始めればいいのかは分からんので(というか、おれも初心者なので)カナイさんにマルナゲ!
おそらく、最も多いアイデアの発起点は、既にあるコンテンツです。アニメや漫画、デジタルのゲームなど、その時にはまっているもの、昔から好きだったものを手掛かりにするのが、知識量的にも一番やりやすいのではないかと思います。例えばモンハンが好きで協力してモンスターを狩るゲームを作る、みたいな感じですね。
テーマとメカニクスどちらから、というのは定番のお話ですが、私個人で言うとややテーマよりでしょうか。まず表現したいテーマがあって、それをゲームとして表現するのに必要なシステムを考えていく形です。
ただ、メカニクスから、というのをやらない訳ではありません。例えば、トリックテイキングやワーカープレイスメント、デッキ構築など、既に類型化されているシステムを基準に作るようなこともあります。メカニクスから入るデザイナーさんには、1からメカニクスを構築して始める方もいらっしゃいますが、これは私にはちょっと難しい手法かな。
どちらが作りやすいか、というと、これは実は個人の適性にもよるので何とも言い難いですね。バリバリの理系の方だと、無理にテーマから入るより、それこそ将棋のような完全情報型ゲーム・アブストラクトゲームを作るのに向いている方とかもいらっしゃいますし。いくつか市販のゲームを遊んでみて、自分の好みを確認してみるのもいいかもしれません。

ちょっと紹介。

第一線で確約する日本のゲームデザイナーへのインタビュー集『創造的な習慣』というnoteのコンテンツがあります。

カナイセイジさんの回ももちろんあって、めちゃくちゃおもしろく、この座談会に興味もってくれているユーザーの方にはとても役に立つと思います。

今回の座談会では、こちらのインタビューと重複する質問もあるのですが、とまれ、関心のある方には熱烈におすすめしておきますです。

>「ダンジョン内を実際に移動しながら、敵と戦って少しずつ強くなっていくゲーム」

こっちもウィザードリィじゃねーか!

架神さん、さすがウィザードリィでゲーム経験が大きく変わった、と言っているだけのことはあるな……(言ってましたよね)

>「最も多いアイデアの発起点は、既にあるコンテンツ」

これ、たしかにそうだと思います。

で、カナイさんがモンハンの例挙げてますけど、元ネタがゲームだと、ゲームとしての展開仕組みをうまく換骨奪胎できればゲームとして成立はするので、アニメや小説より作るのイメージしやすいかもとも思いました。

スプラトゥーンのボードゲーム作るってなったら、それはコマ動かして、オセロみたいにタイルひくりかえして陣地取り合うゲームで、で、敵はアタックかけて排除して、プレイスタイルと展開の多様性は武器の種類で持たせて……とかやるべきことは見えてきそう。

>tomorrow3さん

「ルールを簡潔にせよ」というのはわかるんですが、「ゼロサムゲームは避けるべき」というのは、プレイヤー同士での奪い合いになるからってことですか?

ゲームを通してポジティブな達成感が生まれにくい&直接攻撃的なギスギス感が出るのが問題なのかしらん。

であれば、それとあわせたテーマにする、というのではどうなんでしょうかね。

たとえば、世紀末モヒカン族同士での水・食料・資源の奪い合いゲームにすれば、あ、これはテーマとあってるね!ってなったりはしないのかなあ。

私は初心者の勢いで特に方法論気にせずにゲーム作ってみたんですが、いまのところ、まとまったかな、というのはテーマ先行型ですね。

メカニクスを軸にしても指針が立ちにくいですが、テーマは指針になるという感じ。


春のゲムマに出すのは(初発表作です)、『ヤマタノオロチ』というカードゲームですが、これは完全にテーマ先行です。テーマと入りまじったプレイ感覚先行型というべきかもしれませんが。

『ヤマタノオロチ』では、オロチ退治のゲームではなく、「いけにえの娘を出す村人同士での葛藤や苦悩や押し付け合い」をプレイ感覚として再現したいな、というのが当初からの目標でした。英雄が出てきてオロチを退治するフェイズもあるんですが、それも広い意味では、「イケニエを出すかどうか」の葛藤へとゲームプレイが集約されるように作ったつもりです。

で、実際テストプレイしてみたところ、「ああ、うちの娘が!」とか「あの家、栄えているからたまには娘を出してつらい目にあった方がいいんだ」とか「こんな村、いっそオロチに襲われて滅びてしまえばいい」とかそういう村人ロールプレイが自然に発生しましたので、これはまあ狙い通りになったかな、と判断できた次第。


ゲーム中の各種手順の処理も細かく見ればけっこう煩雑なんですが、いちおう「オロチの脅威にさらされている村人」の振る舞いとして、違和感ない感じになっているとは思ってます。

ただ、まあ、メカニズムでいうと、ホントはボード使ってもっとジリジリした展開にするのはあったかもしれません。

「イケニエにするかどうかは村人の投票で決める」(そしてそれをプレイのメインに据える)と考えたので、これはもう一斉カード公開型にするというのはほぼ決まりでデザインしたんですが、この一斉公開のメカニズムはなんというシステム名なのかはわかんなくって、ゲムマとかでジャンル名言うのには困ってます。

バッティング要素もあるので、変則バッティングゲームと言っても間違いではないでしょうけど、そう言われたときにイメージされるものとは少しずれてる気も。

今更ですけど、今日のテーマでもある、「テーマ先行」か「システム先行」かという事についてですが。

テーマ先行の方は、自分がそっち寄りなんだと思うんで想像しやすいんですけど。

システム先行というのは例えばどういった例があるのでしょうか?

Karasu_K

>「最も多いアイデアの発起点は、既にあるコンテンツ」


うおーっ、よかった! 別に俺だけじゃなかった!!

メカニクスから組む場合の最も分かりやすい例は、アブストラクトゲーム各種です。要するに、テーマらしいテーマがなく、でも何らかの勝敗を競うようなタイプのゲームです。パッと思いつくところでは、クアルトやクゥワークルというゲームでしょうか。タイルをつないで得点する、というシステムはありますが、そのタイル自体が具体的な意味を持っているわけではありません。もっと身近なところではオセロとかかな。
名前が上がった、ゲームや言葉を調べてみました。

大分イメージが掴めてきた気がします。シンプルなというか原点というか、かなり根本的な部分の話しになるんですね。

ありがとうございます。勉強になりました。

Karasu_K

>tomorrow3さん

一斉公開型ゲーム一覧のご紹介、ありがとうございます。

こういうの大枠でバッティングゲームでくくっていいのであれば、『ヤマタノオロチ』もバッティングゲームで説明して、大きな誤解は招かなそうです。

いや、どうしてもバッティングというと『はげたかのえじき』のイメージ強いので、それとはプレイ感ちがうかなーってのが気になってました。

ゼロサムゲームの楽しくなさについても、そういう要素があるのは理屈わかりました。

ゼロサムというと、これも私のイメージですが、将棋というゲームがあって、将棋は傑作じゃないか、と思うんですが、しかし、あれはあれでかなり苦しいゲームですもんね。

伝統ゲームでその奥深さもよく知られていますし、愛好者もすでに膨大な数いますけど、万人に合うゲームかって言われればそうとはとても言えない。

あと、話が脱線しますが、将棋は実力差が露骨に出るあたり今風のゲームじゃないですね。プレイ人口が膨大なので、まあいい勝負になる相手のマッチングが比較的容易というのが強みですけど、いまデザインされたらなかなか広まんないゲームでしょう。

>カナイさん

そういうことができるかどうかわかんないですし、できるとしてもこの座談会の最後までくらいでけっこうなんですけど、「ゲームデザインをしてみたいと思っている人が、ゲームデザインの引き出しを多くするために出来たら遊んでおくべきゲーム10選」みたいなリストってあったらとてもおもしろいと思っていて、カナイさんがこういうの選ぶとしたらどんなラインナップになるのか気になります。

選んでもらうことって出来ますでしょうか。

もちろん、カナイさん以外の方の「おれ10選」も歓迎ですので、見せてくれるという方はぜひお願いします。

(私は遊んでいる数少なすぎて無理)

『ダンジョンオブマンダム』は、500円ゲーム(頒布価格を500円に収める縛り)という企画で誕生したゲームだったかと思います。

そうするとシステム先行というより、コンポーネント先行あるいはあえて制約型といえるかもしれません。俳句的というか。

このように制約作ってその中で発想する、というのも初心者の訓練にはなるかも。というか、アナログゲームデザインの授業があったら、これはどこかでやらされそうですね。

あと、500円ゲームといえば、たしかあの世界的傑作『ラブレター』も、この企画で誕生したんではなかったでしたっけ!?

あと『ダンジョンオブマンダム』や『ラブレター』の次に名前出すのはどうかと思いますが、私が今度のゲムマ春に出す2つ目のゲーム『ザ・悟り』も制約先行のデザインといえます。これは、カードゲームが成立する最小限のアートワークでのゲームを目指して、いいところいったかなと。カードは2種類で、1種類は表も裏も図案なし。もう一種も片面にちょっとした汚れがあるくらいのデザインで、これ以上削れないところまで削ったつもり。ゲームとしても、まあ、成立してますよ、たぶん。

わくわく!わくわく!

>tomorrow3さん

ありがとうございます~。

このリストをもとに今度ボドゲ部で勉強会と称して遊んでみましょうよ!

> このように制約作ってその中で発想する、というのも初心者の訓練にはなるかも。というか、アナログゲームデザインの授業があったら、これはどこかでやらされそうですね。


確か、米光一成さんの講座で、カードの枚数を絞った状態でカードのみのボードゲームを作る講座があったと思います。(うろ覚え。ソース探したけど見つからなかった)

> 春のゲムマに出すのは(初発表作です)、『ヤマタノオロチ』というカードゲームですが、これは完全にテーマ先行です。テーマと入りまじったプレイ感覚先行型というべきかもしれませんが。


プレイ感覚先行型がやっぱり初心者には良い気がしますね。

「どういうゲームで自分が遊びたいか」「どういうフィエロを感じたいか」というところからスタートするのが取っ掛かりやすいかも。(フィエロ:うおーっ、やったぜ!感)


まあ、メカニクス先行型もそのメカニクスからどういうプレイ感覚を得たいか、というところに繋がってくると思うので、本質は似たようなものかもしれませんが、思考の順序としてはプレイ感覚先行型の方が足がかりにしやすいかも。


こう、楽しかった過去のゲーム体験を思い出して、そこを目指す感じで。

3日目ですので、こちらに会場移ります。

話題がこちらなのでここに投稿しておきますね。

遊ぶべき10点を私が提案するのであれば

1 パンデミック・レガシー(レガシー・協力)

2 マジック・ザ・ギャザリングもしくはハースストーン(カードバランス)

3 カタン(近代ボードゲーム)

4 アグリコラ(ワーカープレイスメント・大型カードプール)

5 トランプのハーツもしくはブラックレディ(トリックテイキング)

6 ドミニオン(デッキ構築)

7 クアルト(アブストラクト)

8 アンロックもしくはEXIT(謎解き)

9 テレストレーション(お絵描き)

10 ラブレター(ミニマル)


まあ、最後の1つは半分冗談ですが、小型ゲームの代表例として一見の価値はあるのではないかと。他に入れていくとしたらセブンワンダーズ(ドラフト)やハイパーロボット(パズル)、人狼、大喜利あたりですね。

おっしゃる通り、ラブレターは500円ゲーム企画を個人で続けていった中で生まれたゲームです。ブルーノ・カターラ氏(キングドミノなどの作者)が講演で提唱したゲーム要素が「テーマ」「メカニクス」「コンポーネント」なので、実際予算的制約などの理由で「コンポーネント」から作り始めることになる場合もあるでしょう。何らかの制約が加えられることで、他の2つである「テーマ」「メカニクス」を導く道筋が見えることにつながるわけです。

とはいえ、初めてゲームを作るような場合は、自由な発想でまずは作りたいものを作ろうとすることをお勧めしておきます。今までに練ってきたものをすべてぶつける感じですからね。

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登場人物紹介

ろれるり堂

1977年生まれ。生業は書籍編集者。

担当作家の架神恭介氏が『ダンゲロス・ボードゲーム』を作っているのを見て、「あ、ゲーム作るのおもしろそうだな」と思ってゲーム制作をはじめる。制作歴は半年。発表作はなし。

ゲームマーケット2018春2日目(5月6日日曜日)に「ヤマタノオロチ」と「ザ・悟り」というゲームで初出展します。架神さんのブースとお隣なので、みなさんいらしてくださいね。

アナログゲーム自体は、四半世紀前にスコットランドヤードとか遊んだりしててそれからずっと興味を持ちつつも、なかなか遊ぶ機会を持てずに各種有名作もほとんどプレイ経験なし。

好きなゲームは、『クーハンデル』とか『ブラフ』とか。



カナイセイジ
アナログゲームのデザイナー。アナログゲーム製作サークル「カナイ製作所」代表。
代表作はドイツゲーム大賞4位入賞作品『ラブレター』。
日本の「ミニマリズム」を体現する、小箱のカードゲームを多く手掛ける。
最新作は『文絵のために』。




架神恭介
作家、漫画原作者、サロンオーナー、そしてボードゲームデザイナー。
『戦闘破壊学園ダンゲロス・ボードゲーム』で昨年ボードゲーム界に進出。
本体はほぼ完売し、現在、拡張シナリオが第三弾まで発売中。
担当が触発されてゲームを作っては自分と至道先生を呼びつけてテストプレイに付き合わせてくるので、こりゃ参った、ということでトークメーカー・ボードゲーム部を立ち上げた。

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