落日のエデン

文字数 2,419文字

気持ちのいい風がふいている。
いままでなら、この風のながれに身をまかせて、心のままにぶらぶら、
ぶらーんぶらーんを楽しんだものだ、、、、、、、
しかし今、私はあらたなる時代の流れ、変革にこの身をまかせることになりそうな予感に身を震わせている。
  ここで一句、詠んでみたい。
今の私は俳句も嗜めてしまうのだ、、、、、、、、、

落日の エデンたたずむ まっぱかな
     
     ・・・・・・・・・・・・・・・・・・

そう、エデンにたたずむ、まっぱの不審な男、これが自分だった・・・
な、なんじゃこりゃあー!
慌てて、彼女をふりむくと、
「見ないでよ!変態!すっぱ!」と言われた・・・
お、お前だってすっぱだかの変態さんじゃん・・・?
そのとき、
おとうさんの、いや、おそれおおくも、神、の声が聞こえた。
慌てて、園の木の間に身を隠す。
前を隠すべきか、後ろを隠すべきか、それが問題だ、、、、、、、、
とりあえず、一番大きなイチジクの葉で前をおおった。
蛇のいったとおり、善悪?は知ったけど、どうすればいいのかわからない。
・・・私は、本当にみじめな人間だ。  

『あなたは、どこにいるのか。』
全知全能の神様でも、隠れたら見えないのかな?
いや、隠れてる木の前で、こちらをうかがっているね、、、、、、
バレバレだったとしても、今までのように神の前にでられるわけがない。
「私は、あなたの声を聞きました。
 それで私は裸なので、恐れて、隠れました。」

神、はとても悲しそうな顔をしているようにみえた。
こんなに近くにいるのに、神と、とても距離を感じる。
今まで、くったくなく“おとうさん”と、そばにいっていたのに。
     
    
『あなたが裸であるのを、だれがあなたに教えたのか。
 あなたは、食べてはならない、と命じておいた木から食べたのか。』
 「あ、あなたが、私のそばに置かれたこの女が、あの木から取って
  私にくれたので、私は食べたのです。」
     
今度は、彼女がきかれる番だった。
『あなたは、いったいなんといことをしたのか。』
「蛇が私を惑わしたのです。それで私は食べたのです。」

神は、蛇に言われた。
『おまえが、こんな事をしたので、おまえは、あらゆる家畜、
 あらゆる野の獣よりものろわれる。
 おまえは、一生、腹ばいで歩き、ちりを食べなければならない。』
蛇が、這ってその場をにげた。

しかし、神のことばはつづいた。
『わたしは、おまえと女との間に、
 また、おまえの子孫と女の子孫との間に、敵意を置く。
 彼は、おまえの頭を踏み砕く、おまえは、彼のかかとにかみつく。』
そのとき、私は確かに、見た。
私たちを誘惑したもの、、蛇、をつかって私たちをまどわした、
神に反逆する“もの”が、いなずまのように、地に落ちるのを。


      
そして、神は、
彼女には、こう仰せられた。
『わたしは、あなたのうめきと苦しみを大いに増す。
 あなたは、苦しんで子を産まなければならない。
 しかも、あなたは、夫を恋い慕うが、彼は、あなたを支配することになる。』

そして、人― 私に、神はこう仰せられた。
『あなたが、妻の声に聞き従い、食べてはならないと
 わたしが命じておいた木から食べたので、
 土地は、あなたのゆえにのろわれてしまった。
 あなたは、一生、苦しんで食を得なければならない。
 土地は、あなたのために、いばらとあざみを生えさせ、
 あなたは、野の草を食べなければならない。
 あなたは、顔に汗を流して、糧を得、ついに、あなたは土に帰る。
 あなたはそこから取られたのだから。
 あなたはちりだから、ちりに帰らなければならない。』


      
もう、動物たちがそばによってくることもなくなった。
全ての、神から造られた被造物が、この世界から平安と愛が失われたのを
嘆いているようだった。
     
神である主が、私たちのために、皮の衣を作り、着せてくださった。
私は、生きているものから、血がながされていく“死”を見て、
自分のしてしまったことを、思い知った。
私の愚かさから、罪のないものが血を流し、私たちの恥を覆うことになったのだ。

神は仰せられた。
『見よ。人はわれわれの一人のようになり、善悪を知るようになった。 
 今、彼が手をのばし、いのちの木からもとって食べ、
 永遠に生きないように。』
    
・・・私たちは、エデンの園を追放され、いつも“死”におびやかされるようになった。
しかし、これでよかったのかもしれない。
私の、この神に背いてしまった罪悪感と、喪失感。
神との親しい交わりもなくなり、みすてられてしまったような、孤独感。
この全てにさいなまれながら永遠に生きるよりは、きっと、、、

   
    
-私は自分がそこから取り出された土を耕すようになった。
地は、神が言われたとおり、いばらがはえ、耕すことは困難だった。
植物は実を豊かに実らせることもなくなり、食べ物が溢れていたエデンの園とは雲泥の差だった。

私は彼女にエバ、と名をつけた。彼女は全ての生きているものの母となった。
神のいわれたとおり、
子を宿し、生み出すことは彼女にとって苦しみであったが、
     
     
それは、エバにとっても、私にとっても、希望でもあった。
神が、あのとき語ってくださった、
『女の子孫』
私たちをたぶらかした、あの存在、あれの頭を踏み砕く、“女の子孫”を、
私たちは、待ち望んでいる。

―そして、私は、祈り続ける。 
私の罪が赦され、再び神を、『おとうさん』と呼べる時がくることを、

私が神にそむいたあの時から失われた、“おとうさん”との、親しい関係。
神との、このへだての壁がなくなり、私が、再び、神の子となれる、その時を。
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