プロット

文字数 1,744文字

起)
 中学二年生の平野秀馬(ひらのしゅうま)は、友人で同じクラスの松田悟(まつださとる)に面白い話を聞く。
「ねえ秀馬、駅前の商店街にある映画館の(うわさ)知ってる?」
 悟の話によれば、その映画館のスクリーン数は本来9個なのに、夜中になるとあるはずの無い10個目が出現するらしい。
 好奇心が旺盛(おうせい)な秀馬はその日の夜中、悟と共に商店街へ向かう。悟は高身長イケメンでモテるのに臆病(おくびょう)という勿体ない奴だが、優しいので秀馬についてきてくれる。
 商店街では同じクラスの学級委員長で美人で秀才、岡田舞衣花(おかだまいか)を見かけるも、何とか逃げ、無事に映画館にたどり着く。そして映画館の中で、10個目のスクリーンがある場所を見つける。
 その前で映画の始まりを待っていると、明かりが消えて()(くら)に。目を開けると、目の前に知らない生徒が沢山いた。


承)
 悟と秀馬は考えた(すえ)、自分たちは映画の中に入り込み、さらに登場人物になっているのだと気づく。
 混乱していると、学園で上履き盗難事件が起きる。よく気づく秀馬の推理により、事件は犯人も自作自演だと判明したものの、悟の優しい(はか)らいでその事実は広めないことに。無事に上履きが見つかったとクラスの子に報告してなんとか解決すると、再び目の前が真っ暗になる。明かりがつくと、自分たちは映画館にいた。
「映画の世界を体験出来る映画館ってことか」
「最初は怖かったけど、結構楽しかったね。秀馬、また来ない?」
「ああ、また来よう。」
 そこからも映画世界での体験は、秀馬と悟を夢中にさせた。童話からミステリーと、今までと違う場所で活躍出来る楽しさは格別だった。
 映画館での時間は実際の時間に反映されていないようで、家に戻って寝ればさほど寝不足にもならない。
 夜にだけ現れる10個目のスクリーンの部屋の前には、映画のタイトルが貼って合ると秀馬が気づく。
 ある日、映画のタイトルが【松田悟】になっていた。秀馬と悟は不気味に思いながらもいつも通り映画の世界に入り込む。
 今回の映画は小学校。自分たちも小学生の姿でクラスにとけんでいた。そしてクラスメイトが上級生にものを強引に取られるという事件が連続して起こる。映画が進むにつれて悟の様子がおかしくなる。
「これ、映画なんかじゃない。実際に僕が、小学生の時に体験したことだ」
 悟の言葉に動揺(どうよう)する秀馬。反対に、悟は昔できなかったから今回は頑張ると言い、上級生に立ち向かっていく。上級生が悟を強く押しすぎたせいで、悟は地面に頭をぶつけて気を失ってしまう。
 そのタイミングで秀馬は目の前が真っ暗になり、明かりがつくと映画館だった。


転)
 映画館を一人出る秀馬。その前に、岡田舞衣花が立っていた。
「どうして秀馬くんが……」
 舞衣花が語るにこの映画館は、時折誰かの心に引っかかっている過去も上映しているらしい。
「どうしてそんなことを知ってる?」
「私も昔、ここで過去をやり直したの。そしたらそれがそのまま、今の現実に反映されていたのよ」
 翌日、秀馬が学校に行くと、松田悟という人物は初めからいないことになっていた。それを知った秀馬は、悟を取り戻すと決意する。
 協力すると言ってくれた舞衣花と共に再び夜の映画館へ。
 映画館の前には取り(こわ)し予定の看板(かんばん)が。しかも今回の映画館のタイトルは、何と【平野秀馬】だった。


結)
 小学生の姿になった秀馬と舞衣花で、上級生にいじめられていた同じく小学生の悟を助ける。上級生に怖い思いをさせることで問題は解決。真っ暗になり、目を開けると三人は教室にいた。
 先生がきて、「早く帰れよ、それにしてもお前ら本当に仲良いな」と言う。放課後の教室で、これまでに秀馬と悟と舞衣花の三人でいたことは無い。
「きっと過去が変わって、僕ら三人はあの時に仲良くなったんだな」と秀馬が言う。
 悟は「これからは三人で仲良くしよう」と言い、秀馬も舞衣花も照れながら頷く。悟は心の強いやつになっていた。
 商店街の映画館は、既に工事が始まり立ち入り禁止だった。しかし、看板が閉館からリニューアルオープンに変わっている。
 過去はもう変えなくていい。でも、この三人でまた違う体験をしてみたい。
 新たな冒険の予感に、秀馬と悟はハイタッチ。舞衣花はため息をついた。でも、その後に少し、微笑んだ。

「あなたたち、全然 ()りてないわね」
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