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文字数 264文字
早咲きの桜の花が
小さく手招きするから
急ぎ足の人々も
足を緩めて上を見上げる
空は待ち侘びていたように
雲の隙間から優しく手を伸ばし
無理しないでと包み込む
誰かが向かう先々には
大小様々な未来へのスイッチがあって
右から左へと押して行くのだろう
それがどんな形になるのか
見えていない人も多くいるけど
いつか巡り巡って自分の元へと
届くギフトかもしれないし
名前もないあの人の
全てを奪う何かかもしれない
知ることと知らない事とが
この優しさの中で交差して
暖かい色に包まれたなら
今日この花の目覚めを知ったように
知らない何かを少しだけでも
知る努力をしたくなった