第3話(5)

エピソード文字数 2,979文字

「はっ? どうなってるんだ?」

 俺はたまらず、目を瞬かせる。
 隠せる場所は、全部探した。なのになんで見つからないんだ?

「皆目、見当が付きませんわ。ただただハテナですわね……」
「にゅむむ、にゅむー? どーしてこーなったのかな?」
「………………。もしかして……」

 皆で首を傾げていると、シズナが顎に手をやった。

「虹橋様? どうされたのですか?」
「………………サクさん。貴方の能力は、名刀と名剣を感知できるのよね?」
「はい。左様でございます」

 半径74メートル内にあるソレらに、気付ける。ソレは何回も聞いた内容だ。

「にゅむむん? シズナちゃんどしたのー?」
「………………ミラルさんに空を飛ぶ力はないから、上空には隠せない。つまりここに絶対あるはずなのに、感じられない。これって…………」

 これって?


「サクさんの能力が、双剣ラーとミーを名剣と認識してないんじゃないかしら」


 ブッ
 わぁ。麗平さんの鼻から、謎の液体が噴き出したよ。

「なっ、なななな何の冗談ですの!? ウチの愛器がっ! ラミラミミーに伝わる聖剣がっ、名剣じゃないですって!?

 麗平さん、大激怒。顔を真っ赤にしてキレております。

「……私の心臓は、一定のリズムを刻んでいるわ。もう、従兄くん以外では興奮できない身体になっちゃったのね……」
「真面目な時なんだからバカやるな! 真剣に取り組め!!
「ぁぅはんっ! 自然な怒られ、いただき、ましたぁ……っ」

 シズナは女の子座りになり、頬を赤らめる。
 俺は今、軽く殺意が芽生えた。そして心の底から、フュルじゃなくてコイツが抜けたらよかったと思った。

「ラーとミーは、駄剣じゃありませんわ! 色紙クンもそう思うでしょうっ!?
「聖剣に含まれるんだから、そこらの剣とは格が違うでしょう。ただ、ね」

 ただ、だ。

「能力を生み出したのは、周りに『黄金浄化』など数段上の剣があった英雄さん。レミアやシズナの武器を基準にした場合は、『名』とはならないよ」

 俺と麗平さんの感覚のようなモノで、彼女にとって『金穏光波』は超強力だが、自分にとっては小技。優れた剣が名剣とは限らないんだ。

「空間を少し切って隠した物というのは、その座標にしっかり立たないと見えない。これだと、くまなく探しても見つからない事が腑に落ちるのよ」

 どんなに探し回っても出会えなかったのは、二つの意味で発見の条件を満たしていなかったから。確かに、コレだと腑に落ちる。

「く、悔しいけど、それが妥当ですわね……っ。……ウチの剣が、非名剣扱いされるなんて……」
「にゅ、にゅむっ、元気だしてーっ。異世界のラミラミミーなら、キチンと名剣(めーけん)さんだよー」
「うん、レミアの言う通りだ。アナタの得物は優れてますよ」

 今回は、相手が悪かっただけ。最強決定戦で散った、2位チームとおんなじなんだよ。

「さ、サンキューですわ……。どうにか理性を保てました……」

 麗平さんは腕で額の汗を拭い、かぶりを振って落ち込んだ気持ちを引き上げる。
 英雄達の無意識の必殺技・『プライドブレイク』。こうかはばつぐんだ!

「精神が、崩壊しかけましたわ……。恐ろしい出来事でしたわね……」
「もっ、申し訳ありませんっ。わたくしめの能力がご迷惑をおかけしました!」

 サクは寸時に正座し、またしてもていねーいに深謝。それから両手をくっつけ前に伸ばし、掌に黄色の飴玉を登場させた。

「麗平様、せめてものお詫びです。伝説の踊り子の究極奥義、『元気(げんき)の舞(まい)』をお納めください!」
「キミそれって超強力な技ですわよね!? そんなモノは受け取れませんわっ!」
「わたくしめが持っていても、猫に小判でございますっ。どうぞお使いください!」

 伝説の踊り子侍、退く気なし。この人はどうしても渡したいようだ。

「麗平さん麗平さん、俺は独りで四つも持ってる。敵に狙われる危険性はあるけども――ってサクっ、敵に狙われるからプレゼントしちゃいけません!」

 近いうちに彼女が力を取り戻しても、
敵『コイツ、英雄よりは弱いな。殺れるんじゃね?』
 となり、襲われかねない。ソレは最悪の贈り物だぞっ。

「ううん従兄くん。これに関しては、そうならないわ」

 両手をクロスさせて×印を作っていたら、そんな台詞が飛んできた。
 ??? どういうことにゅむ?

「伝説の踊り子の究極奥義は風変わりで、戦闘用じゃないのよ」
「内容(ないよー)は『周りに元気を与える踊りを踊れるよーになる』、なのっ。力を求めてる敵さんは、興味を持たないんだよー」
「ぁ~、それはそうでしょうね。しっかし何がどうなって、そんなんが究極の奥義になったの?」

 理解に、苦しみます。いやまぁ、英雄が絡むと大抵理解に苦しむんですがね。

「私達の国で『踊り』は、見た者の気分を明るくする為に生まれた物なの。よって必ず目的を果たせるソレが、究極なのよ」
「へぇー、そうだったんだ。てことはもしかしかて、持ってる技はテンションを上げる系だけなの?」
「んーん、攻撃系(こーげきけー)もあるよー。相手をひたすら踊らせて衰弱死させる踊りとか、どっさり興奮(こーふん)させて血管を破裂させる踊りがありますー」

 そういや件の決定戦では、全試合KO勝利してるんだもんね。当然攻撃用もありますわな。

「この究極奥義は、わたくしめに相応しくありません。くしくも麗平様は御気分が本調子ではございません故、どうぞお受け取りください」
「襲撃の危険は0で、本人がそう仰ってるんだ。有難く受け取っておいたらどうかな――と言っていて、気が付いた」

 俺は、またストップをかける。南国土佐から来た変わり者界の雄曰く、『ストップップ』の発動だ。

「にゅむ? なーに?」
「これってさ、踊った人は元気になれないじゃん。だからサクが、『元気の舞』を舞って元気づけるのが一番だよ」

 麗平さんが受け取ったら、自分のためにはならない。これが最適でしょう。

「そ、そうでございますね……。………………わたくしめは、史上最大級の失態を犯してしまいました……!!
「おいおい。そこまでのことじゃないでしょう」
「それがね、従兄くん。力を飴玉に変えたら、二度と自分には戻せないのよ」

 ソレは要するに、もう舞ってあげれない。だから落ち込んでるのか。

「わたくしめが先走った為に、全て台無し……っ。自ら打ち首を致します!」
「あーもぅ早まるな! それなら俺が飲んで、代わりに元気にして差し上げるよ」

 正直言うと、こんな能力要らない。けどレミアとシズナに押し付けるのは忍びないんで、名乗り出ました。


 ――皆様、覚えておきましょう。これが所謂、貧乏くじです。


「色紙、様……! よろしいの、ですか……?」
「よろしいですよ。はい頂きます」

 ヒョイ パクン パァァァァ
 右の手の甲に□と△が合わさった刻印が浮かび上がって消え、踊り子の究極奥義を渋々入手。この奥義は持ち主が踊ると元気にさせる粒子を振りまくモノだそうなので、唯一完全にマスターしてるよさこいをやってみますです。
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登場人物紹介

色紙優星 16歳の少年


高知県生まれの主人公。

リリウという神様の聞き間違えで魔王使いになってしまい、おまけに『究極奥義』と呼ばれる力を何個も持ってしまった高校生。優しく他人想いなのだが、彼はとあるセンスが全くないのであった……。

黒真レミア 16歳の少女


魔王、でありながら伝説の勇者の能力を持つ。冷徹でクールな容姿と声音を持つ美少女だが、性格はほわほわでお子ちゃま。『にゅむ』という独特な言葉を多用し、時にはにゅむのみで会話を行おうとする。例「にゅむーむ。にゅむ。にゅむりん」。

なお愛用の武器である聖剣は魔王の天敵であるため、使うと痺れる。

金堂フュル 16歳の少女


伝説の勇者、でありながら伝説の魔法使いの能力を持つ。元気一杯の猫っぽい女の子で、高知県の英雄・坂本竜馬の大ファン。そのせいで『ぜよ』と中途半端に覚えた土佐弁を使い、主人公のことは『師匠』、仲間のことは名前のあとに『先生』とつけて呼ぶ(例えばレミアの場合はレミア先生)。

なかなかにおバカな女の子。

虹橋シズナ 17歳の少女


伝説の魔法使い、でありながら魔王の能力を持つ。大和撫子然とした容姿を持つ美少女であり、主人公の義理の従妹。

重度の怒られ好き。

とにかく変で厄介で面倒くさい人。

茶操ユニ 18歳の少女


伝説のドールマスター、でありながら伝説のプリーストの能力を持つ。キグルミ族という一族の人間で、閉園したテーマパークのキャラクター・二足歩行ウサギの着ぐるみを着ている。口癖は、ミョン。

実はお笑いにうるさく、親戚は某有名人。

プリースト神 年齢不明


茶操ユニが持つプリーストの杖に宿る、プリーストの神様。

実は……。

橙式エイリ 14歳の少女


伝説のモンスターテイマー、でありながら伝説の召喚士の能力を持つ。所謂スケバン然とした容姿と声を持つが、グループ最年少の中学生でみんなの妹的存在。でもレミアやフュルよりずっとまともで、ヤツらの方が妹的存在な気がする。

野菜が大好きで、とても詳しい。

タンザ・クー 年齢不明


橙式エイリの召喚獣で、俳句世界(はいくわーるど)の王女。

タンザが姓で、クーが名。

二万年後に、地球の傍に誕生する世界からやって来た。


色紙育月 16歳の少女


高知県大豊町在住の、優星の従妹。中学卒業と同時に本格的にピーマンの生産を始め、今ではテレビの取材を受けるほどになっている。


薄幸の美少女然とした容姿と、従兄想いの優しい性格が自慢の従妹です! by色紙優星

謎の声 年齢不明


優星にだけ聞こえる、不思議な声。

なぜか正体を明かそうとしない。

リリウ 神様


願いを聞き間違えて、優星を魔王使いにしてしまった神様。

神様の世界で流行しているゲームに夢中で、神様のお仕事はほとんどしない。

とってもダメな、神様(?)な神様。

麗平活美 16歳の少女


ストロベリーブロンドのドリルヘアーが特徴の、優星のクラスメイト。

お嬢様然とした容姿で気品があるように見えるが、非常に活発。実は……。

空霧雲海 16歳の少年


頼れる兄貴系の容姿と性格を持つ優星の同級生であり、悪友であり、重度のオタク。

作中に登場する名曲(迷曲)を作った人。

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