第一幕(13)

文字数 345文字

(冷たく)じゃ、僕は、アイでお願いします。「ミスター」なしの、アイで。
おやすみなさい、ハース。
おやすみなさい、アイ。

テントのなかで並んで横たわって、ほんの五、六十センチの距離にいて、僕らは、遠く離れていた。のばした手の、とどきようのないほど。


正直さほど、傲慢なものがあるだろうか?

友だち。友だちって何だ。男も女も、同性も異性もないこの不可思議な星の上で。

僕は男だ。僕だけが男だ、終始一貫、徹頭徹尾。

だが彼らは、ゲセン人は、人類史上ほかに例を見ない、特異な進化をとげた彼らは、男でも女でもない――その両方なのだ。変化[へんげ]の民、異形の族[やから]、僕にはきょうだいでもなければ、友でもない。

僕らのあいだに、心の通うわけがない。



僕らは眠った。雪がしんしんとテントに降りつもる音がした。

音楽。

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登場人物紹介

ゲンリー・アイ

地球出身。惑星同盟《エキュメン》の特使。惑星《冬》ことゲセンに単身降り立ち、カーハイド帝国の皇帝に開国をうながす。長身。性格は誠実で直情的。推定される容貌はアフリカ系。男性。

セレム・ハース・レム・イル・エストラヴェン


ゲセン出身。帝国カーハイドにおける《王の耳》(宰相に相当する最高実力者)。ゲンリーの使命の重要性をただ一人理解する。やや小柄(ゲセン人の平均的体躯)。性格は慎重かつ大胆。推定される容貌はアジアあるいはエスキモー系。中性(両性具有)。

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