無事に返された石像の謎
文字数 907文字
無事に返された石像の謎。
学校は今日1日、その話題でもちきりです。
ガーゴイルは昨晩、トメさんに健康診断を受けて万全の状態で学校に戻りました。
校長先生への謝罪も済ませ、今朝には何事も無かったかの様に復帰し石像として鎮座しています。
今から何十年も昔の話。
トメさんと同級生が卒業製作で寄贈した石像こそ、あの2対のガーゴイルでした。
当時の先生達には彼らの健康管理やメンテナンスを伝えてあったのですが、長い時の流れで忘れられてしまった様です。
…校長先生…可哀想(笑)
放課後、すずとランカは彼のいるロビーに来ていました。
話題の石像を一目見ようと人だかりが出来ていたのも朝だけの事。
いつもと変わらない風景は皆の興味を削ぎます。
話のネタには上がっても、わざわざ立ち止まってまで時間を潰す人はいません。
そこはいつものロビーの階段前に戻っていました。
でもすず達は感じています。
前と少し雰囲気が違うみたい。
彼は少し優しくも頼もしい顔つきになった気がしました。
ガーゴイルは喋りません。
彼の仕事は様々な脅威から学校やみんなを護る事。
そして本来は生徒と話すどころか動ける事も知られてはいけないのです。
言葉は交わさなくても、
自分とアナタ達はずっと友達であります!
別れ際にガーゴイルが2人へ伝えてくれた言葉でした。
ねぇねぇ。アタシ学校で勉強して、パパやママの知らない事もたくさん習って、すっかり一人前な気がしてたよ。
でも、きっとアタシ達にはガーゴイルさんみたいに影で支えてくれる人がいて、初めて当たり前な生活がおくれているんだね。
うなづいたすずはガーゴイルにウインクをしました。
やっぱり彼は沈黙を守り動きません。
実はすず、あの顔がちょっと恐くて少し石像が苦手でした。
でも今は少し寂しい気持ちもあります。
知られない所からずっと見守ってくれている存在。
無性に手紙を書きたくなったすずは部屋に戻るとペンをとりました。
魔法学校のある箱庭の地から遠く離れた故郷。
何か気持ちのこもった手紙を書こうとすると、幼い日の記憶が彼女を邪魔します。
すずは書きかけの便箋を破き捨てると、いつも通りの綺麗な文章を書き綴り、仕送りのお金を添えて手紙を送りました。