第4話

文字数 1,788文字

ミュータントウォーズ・新人類戦記第一章(1980年作品)第4回●ベトナム・クチニン村への取材記者の乗ったトラックはカンボジア軍に攻撃される。竜は昔のエージェント時代の知り合いのベトコンであったハイニンに助けられる。

2024/06/07(改稿
ミュータントウォーズ・新人類戦記第一章(1980年作品)第4回●ベトナム・クチニン村への取材記者の乗ったトラックはカンボジア軍に攻撃される。竜は昔のエージェント時代の知り合いのベトコンであったハイニンに助けられる。

ミュータントウォーズ・新人類戦記第一章(1980年作品)第4回


■ベトナム共和国

ベトナム戦争、続いてのカンボジア軍との戦争戦禍のひどさが、あちこちに見受けられた。
爆弾の穴や、鉄ぴついた兵器の残骸がころがっている。
 キエンジアン省クチニン村へ向かい、戦跡の残る風景の中を記者団を乗せたトラックが走っていた。
 突然、銃声がおこった。
林の両側が弾が飛来してくる。
ジー・ブを運転していたペト十ム人民軍兵が後にのけぞり、ジープは道路右側の大木
に激突した。
竜は大地にいきおシいよく投げだされた。
後続のトラックもすでに燃えあがっていた。
 1連射のあと銃声がやみ、カンボジア兵が現われる。生き残っている人間を調べ始める。
 「クチニンの虐殺」の報復のために再び侵入してきたカンボジア軍クメール・ルージュ
の1団だ。
トラック乗員で生きて残っている間にはとどめをさしている。
悲鳴とうめき声が響いてくる。

銃床でなぐりつけているのだ。皆若い。十四・五才だ。表情は堅い。手にしているのは中
国製の突撃銃である。ソ迷製カラシニコフAK47勝撃銃のコピーだ。
 カンボジア軍クメール・ルージュは気を失なっている竜の方へとゆっくり近づいてぐる。
カンボジア軍の背後で爆発がおこった
迫撃砲らしい。クメールルージュ達は散開し、爆発のあった方へ走っていぐ。
その時、近くの竹やぶから大男が走りでて、竜を背にかつ
ぎあげ、再び竹やぶの中へ駆け込む。その間わずか数秒、カンボジア兵は誰も気がつかな。かった。


■ベトナム共和国。キエンジアン省クチニン村
■竜は小さな農家の一つに寝かされ
ていた。あたりの田んぼの中には戦闘中に死一んだ水牛の死体がころがっている。
 竜は息をふきかえした。
竜の目の前に知人が立っていた。
精悍な大男だ。しかし表情には影がある。
「ハイ・ニン、あんたか」   
 竜は起き上り、あたりを見渡す。
「助けてくれたわけか。すまん。他には」
「か前さんだけだ」
「ここは」
「キエンジアン省クチニン村だ。再び、報復のためにカンボジア兵が
攻めてきたんだ」
 竜は遠慮なくハイ・ニンの姿をながめまわす
「あんた、なぜ、こんな所に来ているんだ。
あんたの実力ならばベトナム新政府の役人になっている
はずじゃないか。もと南ベトナム人民解放戦線のおえらがた
のあんたならぱな」
「いや、ベトナムがベトナム軍(北ベトナム軍)に統一されて、
南ベトナム人民解放戦線の俺の役目は
もう終ったのさ」ハイ・ニンは心なしか寂しそうに見える。

ベトナム社会主義共和国誕生時、旧解放戦線、南臨時革命政府の人々はほとんどこの政
府に名をつらねなかった。
新ベトナム政府の中央や地方の役所は大部分、北から来た政府の人間でしめられた。
新ベトナム人民から隔離されていた。南ベトナム人民解放戦線の彼らはあまりにその
地の住民と密接に次関係にありすぎたからだ。
「一体、これぱどういう事だ。俺達、日本人にとっては理解に苦しむことだぜ、こいつは
かっ。て、米帝国主義と戦ってきたあんた方がこうして戦っているとはな」 
 「竜、ちよっと村の外をのぞいてみろ」
クチニン村には屍臭が。ただよっていた。村の方々で死体が
散乱している。
「たとえば、あの赤ん坊を見てみろ」
 頭から脳漿が流れ出ている。
「カンボジア兵あいつらは、両足をつかみ地面にたたきつ
けだんだぜ」
繁みが動いた。竜とハイ・ニンは身構えた。
竹やぶの中から若い娘がふらふらと歩き出してきた。
足どりがおぼつかない。
今まで隠れていたのだろう。少女のあどけなさから見て
年の頃は十七、八才だろう。
竜とハイニンは彼女を助けた。が彼女は意識を失った。
ミュータントウォーズ・新人類戦記第一章(1980年作品)第4回
(アメリカとソビエトの冷戦時代の話
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

登場人物はありません

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み