偶然か必然か、(仮)野球の話

文字数 1,669文字

 神様は、イタズラが大好きだ。それをまとめて”運命(キセキ)‪”‬と呼ぶのだから。


 二十五年前、彗星のごとく現れて消えた、一組のバッテリーがいた。
 無名の弱小校に所属する、所謂『負け格』の球児たちは、同じ状況にいた彼らを尊敬した。嫉妬した。憧れた。追いつくことは不可能に等しいとは感じながら、彼らは近くて遠過ぎる彼らの背を追った。
 灼熱の太陽の陽を全身に浴びて。一握りの球児にしか踏むことの許されない土を踏みしめ。彼は大きく振り被った。14m先にあるミットをめがけて。まっすぐとこちらを見る一対の目と向き合って。キャッチャーマスクを被った己の相棒を信じて。
「ズドンッ」
一瞬、それに尽きる。光の矢のように、茶色の土には映える白球が一瞬で目の前を過ぎ去っていった。
彼らは彼らが存在すれば十分だった。”チーム”など要らなかった。”協力”など、相棒とできれば満足だった。しかもそれで勝てる、そんなもの必要ないと考えてしまうことは、必然だったのかもしれない。

 16歳、彼らが高1の夏のときのことだ。彼らの通う新設都立高に野球部が発足した。中学(リトル)でライバルだった彼らは出会ってしまった。一方は「家から近かったから」一方は「安いから」。決して”ちゃんと”した理由ではない。だが理由など、何とでも後付けできるものである。『彼らが出会った』この紛れもない真実を覆すことはできないのだ。
 彼らは野球部に入部した。公式戦では一勝もしたことのない弱小校だ。部員は集まらない。監督もいない。グラウンドは借りる必要がある。そんな状態の部活だ。いつ消滅するのか、と噂までされてしまうほどだった。
 だが、彼らには関係のないことだった。部員は九人いれば良い。監督なんて要らない。グラウンド?練習できれば良いじゃない。結局部員は七人。試合のときだけ二人そこらから調達してきていた。勿論部内戦なんてできやしない。七人中四人はド素人。でも彼らには問題ない。どんなに(その他大勢)が下手糞でも、どんなに周りがうるさくても。二人が相手を抑えれば良いし、二人が塁に出れば良い。本当にそれだけで、勝ててしまうのだ。
 
地区大会を難無く突破、県大会もたったの二人で勝ち上がった。そしてむかえた甲子園。一回戦、二回戦。県大会のように、までは行かないが、彼らは勝った。だが準決勝。世間からの注目は最高潮。疲れも出てきたところのことだった。当時球数制限なんてものはなかったから、一人で投げていた彼は、ついに限界を向かえた。七回裏一死、彼は(マウンド)に膝をついた。駆け寄るチームメイト、心配する審判。声を荒らげる観客たち。「もう無理か」誰しもがそう思った。それほどまでに、彼は圧巻の投球を見せつけていたからだ。
 何か、捕手(キャッチャー)投手(ピッチャー)に言葉をかけた。投手は首を横に振る。捕手は深呼吸をした。
「そうか」
確かにそう言った。テレビ越しでも、フェンス越しでも、そう言ったことだけは分かった。
投手(ピッチャー)交代。一番に代えてオレ」
ざわめき。動揺、あきらめ、ほんの少しの期待。マウンド上でも、観客席でも。
 投手に代わった彼は、捕手にフラフラの相棒を置いた。まるで『アイツ以外には譲らない』そう言っているようだった。
 何と、捕手だった彼は七回八回九回を無失点で乗り切った。九回裏二死、フルカウント(スリーボールツーストライク)の場面では、誰もが固唾を飲んで見守った。
そして勝利。最後の整列のときには、投手の彼はもう倒れそうだった。捕手の彼はなぜか泣いていた。
「ぁざしたっ‼」
 
 次は決勝。世間は大いに騒いだ。新設都立高がまさかの決勝。どうなるのか?様々な憶測が飛び交った。
当日、彼らはとうとう来なかった。欠場だ。
 そのまま、彼らは野球部を辞めた。次の年の夏も来なかった。

 彼らは、”伝説”となって球児たちの間に語り継がれていった。

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あれ?カクリヨどこ行った?

お風呂入っていたらふと思いついた話です、そのまま彼らの子供達の話に繋がるはず…。
多分球数制限の話とか野球の設定全般間違ってます。やったことないんです【言い訳】
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