◆Scene06

文字数 1,178文字

うふふ…

コタちゃん…


いいえ、大崎一番太郎…

あれ、ノン子さん?

まさか、君まで!?

サラリーマン小太郎の同僚とは仮の姿!


果たしてその実態は!

亀田製菓・特命係長、ノン子よ!


社内に不穏な動きがあるとの通報をうけ

ずっとあなたのこと見張っていたの

まさか、ボクを合コンに誘ったのも

監視するためだったのか!

ごめんね…


でも、たとえ

そのパソコンを持って逃げたところで、

あなたはハッピーパウダーの秘密を

手に入れることはできないのよ

なんだって!?

ねえ、牛にモーツァルトを聴かせると

おいしくなるって話、知ってる?


大根おろしだって

怒りながらすると辛くなるけど

優しい気持ちで丁寧にすると

すっごくおいしくなるの。


ハッピーパウダーのおいしさの秘密は

工場で働くわたしたちなのよ


レシピ通りの原料を集めても

けっしてパウダーは完成しないの


バファリンの半分が優しさでできているように

わたしたちの作るハッピーターンの半分も

優しさでできているの!


だから、盗んだレシピで作ろうとしても

ハッピーターンは完成しないの…

ガーン…

そ、そんな…バカな! 


夢にまで見た

あこがれのハッピーパウダーが

ボクを幸せにしてくれないだなんて…

これが、今まで誰もハッピーパウダーを

社外に持ち出すことができなかった本当の理由なの


コタちゃん…

人は力づくなんかじゃ

ハッピーになれないんだよ…


人は、人を幸せにすることでしか

ハッピーになれないの


だからわたしたちはこの工場で

ハッピーターンを作り続けるの


だからねえ

罪をつぐなって刑務所から出てきたら、

もう一度、わたしたちと

ハッピーターンを作らない?

え…いいんだすか?

許してくれるだすか?

工場長、いいですよね?

ああ、もちろんだ


もうすぐハロウィンだし

そのあとは声優魂やクリスマスもあるし


従業員は何人いても

足りないくらいだからな…

ありがとうだす!

心を入れ換えて、がんばるだす!

うん!


みんなをハッピーにするため

いっしょにがんばろ!

さあ、それじゃあ

行きましょう…


秘密のお仕置き部屋に…

え、社内にそんなのあるだすか?

さっき言ったじゃないですか


創業以来

ハッピーパウダーの秘密が守られて来たのには

理由があるって

もしかして、それって痛かったりするだすか?

どうですかねえ?

それも社外秘なので…

いやー!!!


お願いだす!

痛くしないで~


痛いのだけは、カンベンだす~

お~い、コタロウ

おつとめがんばってこいよー

 

それにしても、驚いたぜー

ハッピーパウダーに、あんな秘密があったなんて

ああ、あれね


口からでまかせのわりに

説得力あったでしょ?

え、全部ウソ!?

でも、おかげで

ハッピーパウダーの秘密も

社外に漏れなかったし、

優秀な社員も失わなくて済んだでしょ?

いやはや、課長、おみそれいたしやした…

<終わり>

犬山劇場「サラリーマン小太郎とチョコレート工場」
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登場人物紹介

◆サラリーマン小太郎


ハッピーターン工場で働く
マジメなサラリーマン

◆ノン子


小太郎といっしょにハッピーターン工場で働く同僚
合コンと社内ゴシップにしか興味がない

◆工場長


ハッピーターン工場の工場長
ハッピーターンのレシピは、工場長しか知らない

◆多田


OJTでやってきた新入社員

◆若林


OJTでやってきた新入社員

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