2 6つの文明要素

文字数 1,924文字



文明とは一体、何でしょう?
文明はどんな要素から成り立ち、それらはどのような関係にあり、
その関係をどう利用すれば、持続可能性が得られるのでしょう?

文明とは〝土木技術や国家制度のように、
高度な自然・社会科学的技術を持つ、知的生命活動の様式〟です。
知的生命活動とは、脳神経系のように専門分化した情報処理器官により、
環境の違いに応じて活動を制御することで、よりよく生きられる生命活動です。

社会科学的な技術は、政策の実現を助けるものなので、
高度な社会科学的技術は、高度な制度・政策とも言い換えられます。
そこで、文明とは〝高度な技術と政策を持つ知的生命活動の様式〟である、
ということもできます。

文明の要素としては、
①科学・技術、②制度・政策、③経済・社会活動という
3つの文明活動要因と、
④物的資源、⑤人的資源、⑥自然・社会環境という
3つの環境要因を()げられると思います。

『ああいう時は、ああいうことが起きる』『こうすれば、こうできる』
といった社会的な事実認識が、科学・技術です。
『ああいう時は、ああすべきである』『今は、こうすべきである』
といった社会的な意思決定が、制度・政策です。
社会の全ての人々が、実際にああしたりこうしたり、
といった社会的な現実行動が、経済・社会活動です。

生命活動とは結局、生きるために必要なものを作って、分ける活動です。
高度な技術と政策をもつ、文明という様式(かたち)を備えていても、
それが富(財、資源)の生産と分配からなることに、変わりはありません。

文明活動の本体は、全ての人々が営む『経済・社会活動』であり、
それは生きるために必要な富(資源、財)を作ること(生産)と、
社会の中で分けること(分配)の均衡(バランス)で成り立っています。
食用米と種籾(たねもみ)の配分のように、
どんなにたくさん作っても、分配が悪いと困る人が増える一方、
将来のことも考えて分けないと、以後の生産が続きません。

『科学・技術』は『ああすればああなる』といった法則に従う、
〝自然〟から富を得て、経済・社会活動を豊かにする活動です。
『制度・政策』は『どうすべきか』を話し合って決める、
〝人々〟の間で富を分けて、経済・社会活動を健全に保つ活動です。
両者は経済・社会活動における生産を増進して豊かにし、
あるいは分配を調整して健全に保つため、
分業化し、発達してきた活動といえましょう。

文明活動の本体たる社会活動において、
富の生産と分配を飛躍的に増進する文明活動の二本柱が、
技術と政策です。

しかし、技術は『物的資源』に具現化されなければ、
社会を豊かにできません。
政策は『人的資源』によって実現されなければ、
社会を健全に保てません。
政策が人・物や資金を動員して次の新技術を開発・普及する際に、
それを促進または制約するのが『自然・社会環境』です。

物的資源は技術利用の、人的資源は政策実現の、
自然・社会環境は政策による技術開発の、
必要条件であるといえましょう。

では、以上6つの文明要素と(文明活動の)持続可能性は、
どんな関係にあるのでしょう?

持続可能性とは元々、水産資源の確保という特定分野の、
技術的な性格の強い課題をさす用語だったようです。
しかしその後、資源だけでなく環境問題や、貧困・格差、戦争・犯罪、
人口爆発や少子高齢化、経済の不安定化、行政の機能不全など、
経済・社会や行政も含めた他の様々な問題についても、
使われるようになりました。

『どうすればああできるか、どうすればこうできるか』という、
自然から富を得るための技術的な課題だけでなく、
『ああできるのがいいのか、こうできるのがいいのか』といった、
社会の中で富を分けるための政策的な課題でも使われるようになったのです。

また、そもそも様々な生産と分配の問題は相互作用の関係にあり、
それらを解決すべき技術と政策にも助け合いの関係があります。
それゆえに技術的な課題であっても、
特に地球環境問題の解決のように、大勢の人々の利害に関わる大きな課題は、
同時に技術的(いわゆるハード的)な政策の課題にもなります。

そこで今日(こんにち)、持続可能性といえば、
政策課題を示す言葉になっていると思います。

文明の持続可能性が政策の課題であるなら、
文明の体系(システム)を形作る、6つの要素の関係から政策を分類し、
その分類に従ってまとめるのが、合理的で分かりやすいと思います。
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