竹青(6)

文字数 402文字

「みんな、ゆめだったのかなあ」
 魚容は、竹青とすごしたしあわせな一日が、わすれられません。おじいさんにもらったお金をはたいて、からすのえさを買いました。
 えさをまくと、からすたちがつぎつぎと飛んできます。



「竹青は、いませんか」
 よびかけてみても、こたえるからすは、いません。みんな、えさをひろって食べているだけです。
 魚容はそれでもあきらめられず、
「この中に竹青がいたら、いちばんあとまで、のこっておいで」
 と、心をこめて、いってみました。

 だんだんえさがなくなって、からすは一羽、二羽と飛びたっていきます。
 魚容はむねをどきどきさせて待ちましたが――

 えさがすっかりなくなると、さいごの一羽も、飛んでいってしまいました。

 魚容はがっかりして、泣きたくなりました。
「やっぱり、ゆめだったんだ。もう、竹青には会えないんだ。
 ああ、わたしなんて、どうせひとりぼっちで、だれにも愛されないで、死んでいくんだ」 
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