第7話
文字数 2,521文字
12月25日のクリスマス、今日はこのホテルでパーティが開かれる。私はここで運命の人を必ず見つける。そして私は必ず幸せになって私を裏切ったあいつ等を見返すのだ。そのためにはイイ男を見つけなければ。私は意を決してホテルの中に入った。流石は高級なホテルだけあって内装が豪華絢爛だ。こんな会場に集まるのだから、イイ男も探したい放題なのだろう。私は受付を済ませ、早速パーティ会場の大部屋に入った。部屋には既にたくさんの人がおり、贅沢なごはんや酒を楽しみながら談笑しあっていた。私はこうしてはいられないと思い、早速運命の人を探すことにした。
会場内で私はいろいろな男に話しかけたが、いまいち運命の人となるような男はいなかった。お金持ちの経営者でも背が低かったり、顔は格別に良いけどお金がないようなミュージシャンだったりと、どこか惜しい男がたくさんいた。私は
「ここには運命の人はいないのか」
と残念に思っていた時、会場の端っこの目立たない所にいる男を見つけた。顔やスタイルは普通で頼りなさそうな風貌をしているが、私は彼を今日の最後のチャンスだと思い、話しかける事にした。
「すみません、良ければ少しお話しませんか?」
私が男に話しかけると、男は一瞬ギョっと驚いたような素振りを見せたが、すぐに微笑んで
「いいですよ是非、お話しましょう」
と爽やかに返してくれた。
「私は金花茉莉といいます。えっと、あなたのお名前は?」
「竜胆賢治と申します。よろしくお願いします」
「竜胆さんは、今日はお一人で来られたんですか?」
「はい、一人で来ましたね。金花さんは?」
「私も今日は一人で来ましたよ。仕事が終わった後での参加なのでヘトヘトなんですけど、どうしても参加したかったので気力を奮い起こしてきちゃいました」
「へぇーどんなお仕事をされているんですか?」
「事務仕事やってますね。ひたすらパソコンの計算ソフトを使って、画面とにらめっこですよ。肩も目もガチガチでホントに参っちゃいますよ」
私は肩に手を当てて疲れている素振りを見せながら、彼が何の仕事をしているのか聞くことにした。
「竜胆さんは何のお仕事をしておられるのですか?」
「僕は、一応外科医をやらせてもらっています。」
外科医の仕事をしているという事は金銭面も学歴も申し分ないのだろう。私はますます彼に対して興味を抱き、もっと詳しく彼について知りたくなった。
「外科医をされているなんてすごいですね。やっぱりモテたりするんですか」
「いえいえ、私はまったくモテませんよ。生まれてこのかたずっと勉強ばかりに励んでいましたからね。中高一貫の男子校に通いましたし、大学でも飲み会やサークルにも参加せず、ずっと家に籠って勉強ばかりしていましたから、そもそも女性とあまり関わった事がないんですよ。そして大人になった今では仕事にばかり集中しています。そんなこんなで過ごしていたら、あっという間にアラサーになってしまいましてね。この間、親に結婚の催促をかけられたので、このパーティに参加してみたのですが、女性に話しかける事ができず、先ほどまで部屋の端っこで立ち尽くしてたんです。」
なるほど、彼は今のエリートの地位に立つために必死で努力した代償として女性、いやそもそも人との関わり方を知らずに育ってしまったのだろう。彼の仕事を知れば、いろいろな女から引く手あまただろうが、接する機会がないので今までモテていないのだ。しかし、私にとっては非常に都合がいい、だって埋蔵金を見つけたようなものだからだ。私は彼を運命の人にする事にした。
「実は、私も今日は恋人を探すためにこのパーティに参加したんです。竜胆さんさえよろしければ、私たちお付き合いしませんか?」
まずは、赤い糸を使わずに誘いをかけてみた。彼の返答は私の予想通りだった。
「お誘いは嬉しいんですけど、すみません。まだ金花さんの事よく知りませんし、それに正直釣り合いませんよ。僕みたいな人なんかじゃ・・・」
やはり彼は自分に自信を持っていない。それが一番モテてない原因だろう。職場ではたくさんの看護婦と一緒に働いているはずなので、フリーな彼は少なくとも何回かは彼女らからアプローチを受けているはずである。しかし彼は勝手に卑屈になって、せっかくの誘いを全て断っているのだろう。本当にもったいないことだ。しかしその卑屈さのおかげで私はあなたを手に入れる事ができるのだ。
「そんな事ありません」
私はそう言いながら、彼の両手を掴んだ。もちろん彼の左手の薬指に私の手は触れている。私は既に、この会場に入る前から自分の左手の薬指に赤い糸を結んでいた。ここまでくればあとは簡単だ。
「私、竜胆さんみたいに毎日、ひたむきに努力し続ける人は大好きですよ」
私がこう言い終わった瞬間、私の赤い糸は彼の左手の薬指に巻き付いた。
「そんな事を言ってもらえたのは初めてです。本当にありがとうございます。僕も是非あなたとお付き合いしたいです」
やった成功だ。赤い糸の効果は本当だった。私と彼との間で赤い糸はしっかりと結ばれている。私はついに運命の相手を我が物にしたのだ。しかも竜胆さんは私が今までお付き合いした男の中で一番ハイスペックな男だ。私を裏切ったあいつ等の事などもう眼中にないくらいな気がした。
パーティが終わって彼と会場をでた後、最寄りの駅まで談笑しながら向かっていった。会話の内容は当たり障りのないもので正直つまらなかったが、ドキッとする出来事があった。私たちが歩いていると、一台のトラックが車道にあった水たまりの上を走ったのだ。すると大きな水しぶきが私たちの方へ飛んできたが、彼は全身で水しぶきを受けて、私にかからないように守ってくれたのだ。彼は私の方を見て
「大丈夫?」
と高級なスーツから水を滴らせながら聞いてきた。
「大丈夫です。おかげで助かりました。」
と私は答え、持ってたハンカチで彼のスーツをふいてあげた。私は自分を身を挺して守ってくれた彼を運命の人にして本当に正解だったと思った。
駅に到着したあと私たちはお互いに連絡先を交換し、それぞれ別の電車に乗って帰った。私は彼と結ばせてくれたこの赤い糸に心の底から感謝し帰路についた。
会場内で私はいろいろな男に話しかけたが、いまいち運命の人となるような男はいなかった。お金持ちの経営者でも背が低かったり、顔は格別に良いけどお金がないようなミュージシャンだったりと、どこか惜しい男がたくさんいた。私は
「ここには運命の人はいないのか」
と残念に思っていた時、会場の端っこの目立たない所にいる男を見つけた。顔やスタイルは普通で頼りなさそうな風貌をしているが、私は彼を今日の最後のチャンスだと思い、話しかける事にした。
「すみません、良ければ少しお話しませんか?」
私が男に話しかけると、男は一瞬ギョっと驚いたような素振りを見せたが、すぐに微笑んで
「いいですよ是非、お話しましょう」
と爽やかに返してくれた。
「私は金花茉莉といいます。えっと、あなたのお名前は?」
「竜胆賢治と申します。よろしくお願いします」
「竜胆さんは、今日はお一人で来られたんですか?」
「はい、一人で来ましたね。金花さんは?」
「私も今日は一人で来ましたよ。仕事が終わった後での参加なのでヘトヘトなんですけど、どうしても参加したかったので気力を奮い起こしてきちゃいました」
「へぇーどんなお仕事をされているんですか?」
「事務仕事やってますね。ひたすらパソコンの計算ソフトを使って、画面とにらめっこですよ。肩も目もガチガチでホントに参っちゃいますよ」
私は肩に手を当てて疲れている素振りを見せながら、彼が何の仕事をしているのか聞くことにした。
「竜胆さんは何のお仕事をしておられるのですか?」
「僕は、一応外科医をやらせてもらっています。」
外科医の仕事をしているという事は金銭面も学歴も申し分ないのだろう。私はますます彼に対して興味を抱き、もっと詳しく彼について知りたくなった。
「外科医をされているなんてすごいですね。やっぱりモテたりするんですか」
「いえいえ、私はまったくモテませんよ。生まれてこのかたずっと勉強ばかりに励んでいましたからね。中高一貫の男子校に通いましたし、大学でも飲み会やサークルにも参加せず、ずっと家に籠って勉強ばかりしていましたから、そもそも女性とあまり関わった事がないんですよ。そして大人になった今では仕事にばかり集中しています。そんなこんなで過ごしていたら、あっという間にアラサーになってしまいましてね。この間、親に結婚の催促をかけられたので、このパーティに参加してみたのですが、女性に話しかける事ができず、先ほどまで部屋の端っこで立ち尽くしてたんです。」
なるほど、彼は今のエリートの地位に立つために必死で努力した代償として女性、いやそもそも人との関わり方を知らずに育ってしまったのだろう。彼の仕事を知れば、いろいろな女から引く手あまただろうが、接する機会がないので今までモテていないのだ。しかし、私にとっては非常に都合がいい、だって埋蔵金を見つけたようなものだからだ。私は彼を運命の人にする事にした。
「実は、私も今日は恋人を探すためにこのパーティに参加したんです。竜胆さんさえよろしければ、私たちお付き合いしませんか?」
まずは、赤い糸を使わずに誘いをかけてみた。彼の返答は私の予想通りだった。
「お誘いは嬉しいんですけど、すみません。まだ金花さんの事よく知りませんし、それに正直釣り合いませんよ。僕みたいな人なんかじゃ・・・」
やはり彼は自分に自信を持っていない。それが一番モテてない原因だろう。職場ではたくさんの看護婦と一緒に働いているはずなので、フリーな彼は少なくとも何回かは彼女らからアプローチを受けているはずである。しかし彼は勝手に卑屈になって、せっかくの誘いを全て断っているのだろう。本当にもったいないことだ。しかしその卑屈さのおかげで私はあなたを手に入れる事ができるのだ。
「そんな事ありません」
私はそう言いながら、彼の両手を掴んだ。もちろん彼の左手の薬指に私の手は触れている。私は既に、この会場に入る前から自分の左手の薬指に赤い糸を結んでいた。ここまでくればあとは簡単だ。
「私、竜胆さんみたいに毎日、ひたむきに努力し続ける人は大好きですよ」
私がこう言い終わった瞬間、私の赤い糸は彼の左手の薬指に巻き付いた。
「そんな事を言ってもらえたのは初めてです。本当にありがとうございます。僕も是非あなたとお付き合いしたいです」
やった成功だ。赤い糸の効果は本当だった。私と彼との間で赤い糸はしっかりと結ばれている。私はついに運命の相手を我が物にしたのだ。しかも竜胆さんは私が今までお付き合いした男の中で一番ハイスペックな男だ。私を裏切ったあいつ等の事などもう眼中にないくらいな気がした。
パーティが終わって彼と会場をでた後、最寄りの駅まで談笑しながら向かっていった。会話の内容は当たり障りのないもので正直つまらなかったが、ドキッとする出来事があった。私たちが歩いていると、一台のトラックが車道にあった水たまりの上を走ったのだ。すると大きな水しぶきが私たちの方へ飛んできたが、彼は全身で水しぶきを受けて、私にかからないように守ってくれたのだ。彼は私の方を見て
「大丈夫?」
と高級なスーツから水を滴らせながら聞いてきた。
「大丈夫です。おかげで助かりました。」
と私は答え、持ってたハンカチで彼のスーツをふいてあげた。私は自分を身を挺して守ってくれた彼を運命の人にして本当に正解だったと思った。
駅に到着したあと私たちはお互いに連絡先を交換し、それぞれ別の電車に乗って帰った。私は彼と結ばせてくれたこの赤い糸に心の底から感謝し帰路についた。