神の恩恵を受けし者

エピソード文字数 1,967文字

「う~ん、私の世界の話かぁ。それは難しい質問ですね……。えーっと…………あっ、そーだ!」
 私はぽんと手を打ち、王子を見上げた。
「まず王子が、質問して下さいよ。何が訊きたいですか?」
「え?……私から質問を……?」
「ええ。一問一答、って感じにしてもらえたら、こっちとしても答えやすいですし」
「……なるほど」
 王子は私の申し出に納得したように、僅かにうなずいた。
「では、そうだな……君の世界とこの世界とでは、何か大きく違う点はあるかい?」
「大きく違う点……って、そりゃーありますよ、もちろんっ!」
 私は思わず拳を握り締め、前傾姿勢で叫んでしまった。
「へえ――。たとえば、どんなところが?」
「えっと、そうですねぇ……。――あっ、そうそう! セバスチャンですよ、セバスチャン!」
「セバス……?」
「ええ、そうです。セバスチャンみたいな生き物を、私の世界では鳥って言うんですけど……でも、セバスチャンみたいに大きくないんです!……あ、でも、ダチョウなんかは大きいか……」
 私は一瞬、考え込んだ。
「あの、でも、セバスチャンにそっくりな鳥は、いるにはいるんですけど、もっと小さくて……えっと、確か、二十センチ――……っても、わかんないかな? 大きさの単位って違うのかもだから……えと、このくらいの大きさで――」
 仕方ないので、両手でおおよその大きさを示す。
「それに何より違うのは、人間の言葉を話したりはしない、ってことです。私達の世界の鳥は、教え込めば『おはよう』とか、数種類程度の言葉を発するようにはなるんですけど、セバスチャンほどハッキリと話すことはまず無理ってゆーか……えっと、人の言葉を正確に理解するとかは、出来ないんじゃないかなぁ?」
 実際に理解出来てるかどうかは、鳥に訊いてみなきゃわからないことだから、一応ぼかしておく。
「とにかく、セバスチャンみたいな生き物は、私の世界にはいません! どこ探しても!」
「……セバスのような生き物、か。それはまあ、わかる気がするな。この世界の中でも、セバスのように人に近い存在は、とても希少だからね」
「えっ!? そうなんですか?」
「ああ、そうだよ。セバスは、この世界では『神の恩恵を受けし者』――と呼ばれている」
「神の恩恵を受けし者?」
「神の恩恵を受けし者は、生まれた時からあのような姿でいる訳ではないんだ。ある日を境に、人並みの知能を与えられ、人語を話し出すらしい」
「ある日を境に!?……って、いきなり巨大化して、ぺらぺら人の言葉話すようになっちゃうんですか!?」
「という話だが……私も実際、動物が『神の恩恵を受けし者』に変化するところを、直接見た訳ではないからね。本当かどうかはわからないよ。――ただ、セバスやウォルフから聞いた話だと、そんな感じだったらしい」
「うぉるふ?」
「ん?……ああ、君が知っている訳がないか。私の城にいる、『神の恩恵を受けし者』だよ。彼もセバスのように、国に仕えてくれているんだ」
「……へえ~……。王子の国にも、セバスチャンみたいな生き物が……」

 ……そっかぁ……。なんかちょっと、会ってみたいかも……。

「でも、いきなりあんな風になっちゃうなんて、不思議ですよね。……えっと、その……『神の恩恵を受けし者』――ってものに変化するには、何か特別な条件とか……そんなものが、あったりするんでしょうか?」
「――え? 特別な条件……?」
「はい、条件です。――だって、そんなものでもなければ、鳥さん達が次から次へと、セバスチャン化してっちゃうような気がしません?」
「セバスチャン化?」
 王子は一瞬ぽかんとして……それから、口元に手を当てて吹き出した。
「『セバスチャン化』って……。君は本当に、面白い表現をするね――」

 ……え……。そ、そーかな――?
 特に面白い言い方をしたつもりは、ないんだけど……。

「でも、そうだな……。これが条件かどうかはわからないが、もしかしたら……長生きすること、かも知れないね」
「――へ?……長生き……?」
「ああ。……君は、セバスの年齢は知っているのかな?」
「え……あ、ああ――。訊いた時は、『百は過ぎてる』って、言ってたと思いますけど……」
 自分でもわからなくなるくらいなんだから、かなりの長生きには違いない……よね……。
「……それは多分、変化した後のことを言っているんだろうな。セバスだけではなく、他の数少ない『神の恩恵を受けし者』の例を挙げてみても、変化前、彼らは百年以上は生きていたそうだから」
「ひゃ――っ、百年以上!?……ってことは、変化前既に、みんな百歳超えてた……の?」

 ……し……信じらんない……。人間だって、そこまで生きるのは難しいのに……。
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登場人物紹介

神木 桜(かみき さくら)


曲がったことや嘘が大嫌い(と言うより、嘘が下手。すぐバレる)な、16歳の少女。

ある日、神社の御神木(桜の大木)に吸い込まれ、中世ヨーロッパ風の異世界へと飛ばされてしまう。

本人に自覚はないが、そこそこモテる程度には整った顔立ちをしている。

方向オンチで、ちょっと騙されやすいのが玉にきず。

可愛いもの(人でも物でも動物でも)や、美味しい食べ物には目がない。

本文中には出て来ないが、実は虫が大の苦手。

母親譲り(と言われている)の黒髪で、髪型は肩よりちょこっと長めの、ツヤツヤサラサラのストレート。瞳の色はこげ茶。

ギルフォード・ルーン・ガーディナー


隣国ルドウィンの第一王子で、リナリア姫の婚約者。20歳。

自国では、三徳(知・仁・勇)揃った傑物と評判だそうが、桜(リア)から見た印象は、『意地悪』『からかい好き』『キス魔』。

常に余裕ある落ち着いた態度で主人公を翻弄するが、ふとした拍子に愁いの表情を浮かべることも。

未知数の治癒能力の持ち主だが、その力は血族者にしか発揮されないらしい。

外見は、王子と言うよりも“騎士”のイメージに近い、精悍な顔立ちの美青年。
髪質はやや硬めで、髪色はビターチョコレートのような、黒に近いこげ茶。
瞳の色は黄みよりのブラウン。光の加減によりグリーンがかったりもする、微妙で複雑な色合い。

カイル・ランス


ザックス王国の見習い騎士。リナリア姫専属の護衛で、17歳。

真面目で誠実、純情……といった印象だが、精神的に未成熟な部分もあり、本当のところ、ギルよりもよほど(色々な面で)危うい。

外見は、柔和で色白な美少年。主人公の印象だと、『王子よりよっぽど王子らしい』そう。
見掛けに寄らず熱しやすい部分もあり、一途過ぎるがゆえに、独占欲が強かったりもする。
髪質はふわふわでさらさら。髪色は蒸栗色(淡くて落ち着いた黄色)。瞳の色はコバルトグリーン。
リナリア姫をずっと気に掛けていたが、主人公の正体判明後、ギルの行動がきっかけとなり、彼女に対する恋心に気付く。

セバスティアン


見た目は巨大なオカメインコだが、先々代から王家に仕えている、執事兼リナリア姫の爺や。

年齢は軽く100歳を超えるという、『神の恩恵を受けし者』。

一応、有能とされているそうだが、案外おっちょこちょい。年のせいか涙もろい。

鳥の頂点に立つ者として、ほとんどの鳥を意のままに従えることが出来るらしいが、見た目が太っちょのため、威厳らしきものは感じられない。
本文中には出て来ないが、弱点は猫。
ルチノーオカメインコをやや太らせたような身体つき。瞳の色は、赤みを帯びた黒。
主人公は『セバスチャン』と呼ぶ。

レスター・オルブライト


主人公の教養面での教育係。“ザックス王国随一の叡智”と呼ばれるほどの頭脳の持ち主。セバスの証言によると、27~28歳くらい。

常に上から目線で人と接する毒舌家だが、根は意外と優しい。人付き合いが下手で、不器用なだけ――という見方も、出来なくはない。
外見は、細面の輪郭、ヴァイオレットの瞳、とがった鷲鼻、薄い唇が印象的で、やや冷たい印象は与えるものの、なかなか整った顔立ちをしている。眼鏡がトレードマーク。
髪色は栗色。腰辺りまで伸ばした髪を、後ろで無造作に結んでいる。

シリル・アウデンリート


カイルが旅立った後、主人公の護衛になる少年。

まだ十一歳ながら、剣の腕はかなりのもので、腕力のなさを俊敏さと技術でカバーしている。

性格は、穏やかで優しく、素直で従順。

外見は、ウェーブのかかったプラチナブロンドの髪、透き通るような白い肌に、ほんのりピンク色の頬、整ったアーチ型の眉、深く澄んだセルリアンブルーの瞳、形のいい小さめの鼻、ローズピンクの唇が印象的な、『完璧な天使顔』。

彼にとって主人公は警護すべき主だが、その主からのスキンシップが頻繁にあり、少々困惑しているようだ。

しかし、それは決して嫌だからではなく、ただひたすら、恥ずかしいため。

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