第13話 英才教育~プロファイリング~

文字数 3,243文字

──いつものカラオケ店にて

「さて、今日はたくみちゃんに私の霊能力を授けてあげる♡」

「え、えっと……今日はより一層ぶっ飛んでますね……どんなエロ同人誌に影響されたんですか?」

「違うわよ! これは真面目な話だから!」

「www 意外に畑口さんも乙女チックな趣味持ってるんですね」

「私のは本格的だから! 何てったって著名な霊能者の子孫だから、私」

「wwwwww」

「笑ってられるのは今のうちだから! ……って、口で言っても分からない様ね……いいわ、私の未知なる力を見せてあげる。手始めにたくみちゃんの禁忌に触れちゃうから」

「wwwwww」

「笑ってないで、目を瞑って私に左手を突き出しなさいよ!」

「はいはい、これでいいですか?」

「……たくみちゃん、やけに冷静だね。これから何をされるか分からないのに、全く脈拍数変わってないじゃない」

「そりゃ……2週間ちょい畑口さんと一緒にいれば大体手口も分かりますって……少なくともいきなり変態プレイなんぞ絶対しないという事くらいは……」

「流石、キラーキングと呼ばれるだけあるわね。ただ……これから私が発する言葉に、たくみちゃんはきっと目を見開いて驚く事になるわ……!」

「フッ……絶対そんな事、ありませんよ。賭けてもいいですよ?」

「ハッ……この私に賭けを挑むとは……いい度胸してるわね。いいわ! 勝負よ! 敗者は勝者に絶対服従、それでいいわね?」

「……いいんですか? 俺、畑口さんの英才教育で訳分からん知識得てますよ? 後悔しても知りませんよ?」

「その言葉、そっくり返すわ! きっと泣く程後悔するから! じゃ……いくわよ!」

「いつでもどうぞ。そもそも俺に禁忌なんて何も──」

「たくみちゃん……九重ちゃんと一緒に住んでるね?」

「──?! な、何で……」

「ほ~ら、やっぱり言う通りになった。これで賭けは私の勝ちだね」

「い、今のはカマかけただけじゃないですか……ひ、卑怯ですよ……」

「ハッ……さっきまでの余裕はどうしたのかしら? ま、いいわ。大サービスで今のはノーカウントにしてあげる。……これはまだ序の口だから。……続けるわよ、覚悟はいい?」

「手口はもう分かりましたので、二度と──」

「たくみちゃん……ちょっと前に凄い大事な人、亡くしたね?」

「──?! ど、どうして……?」

「これが私の能力だから。……まだ続けるわよ……ここが断片的で理解に苦しむんだけど……仕送りしてる?」

「ちょ、ちょっと待って下さい……まさか、俺の事、調べたんですか? 小橋さんみたいに」

「何度も言うけど、これが私の能力だから。さっきも言ったけど、私、著名な霊能者を先祖に持つから、人の過去と未来が手に取る様に見えるの」

「──?!」

「だから最初に言ったでしょ? たくみちゃんの禁忌に触れるって。どうする? まだ続ける?」

「も、もう……勘弁して下さい。これ以上は……」

「……というのが私の能力。感想はどう?」

「す、凄いです。本物の霊能者を初めて目の当りにしました。あ、あの……俺、悪霊に取りつかれてるんでしょうか? もしそうなら、是非除霊お願いしたいんですが……後、口寄せできたら──」

「www そんな事できる筈ないでしょ。だって、霊能者の話は嘘だから」

「え? で、でも……ズバズバ当ててたじゃないですか。九重の件はともかく、美幸の事とか仕送りまで……霊視でもできなければ分かる筈ないじゃないですか」

「霊視なんてできなくてもそれくらいは分かるわよ。……プロファイリングすればね」

「プロ……ファイリング? え、えっと……それってそんな事までズバズバ分かるんですか? 参考までにどう分析したんです?」

「簡単だよ。まず、九重ちゃんとの同居については……2人共同じ髪の匂いと洗剤の匂いしたから。偶然の一致と考えるより、一緒に住んでいると仮定した方が自然かな、って」

「──!」

「次、大事な人を亡くした件。3月までの化け物じみた実績とその後の落差が大きかったから。後、九重ちゃんの不自然過ぎる急接近に、小橋さんの動き……絡み合わせると余程の事があった、イコール大事な人を亡くしたと考えるのが妥当かなって」

「──!」

「で、仕送りの件。これはちょっと根拠が弱かったし意味不明だったけど……たくみちゃんの稼ぎから考えて、2人共あまりにも質素だなって。持ち物も信じられないくらいお金かけてないし」

「い、いや、それは元々──」

「たくみちゃん1人だったらそう考えるかもだけど、九重ちゃんと一緒でそれは不自然かなって。余程の事情がなきゃ、彼氏の身なりとか整えるって。元々九重ちゃん、派手な方だったし。なら、稼ぎの大半を仕送りしている……と考えるのが自然かなって」

「す、凄いです! 思わず感動しちゃいました。畑口さんが何かカッコよくみえます」

「フフッ……ようやく私の魅力に気付いた様ね。伊達に平成のキャッツアイを名乗ってる訳じゃないから」

「お、おぉぉ……猫目という外見とパワーストーンの未来を予知するという効果、さらにアニメのキャッツアイ、畑口さんの為にある様な通り名です!」

「フフフッ……キャッツアイという言葉から即座に3つの意図を読み取る変態っぷり、流石ね。これから私の事を下の名で呼ぶ事を許すわ。光栄に思いなさい」

「ありがとうございます! これから伊織さんと呼ばさせて頂きます!」

「フッ……素直な子は嫌いじゃなくってよ。さて……稀代の変態のたくみちゃんに私の能力が加わったら……面白い事になると思わない?」

「え……い、いいんですか?」

「だから伝授するって言ったでしょ? 最初からそのつもりだから。ただ、ローマは一日にしてならず、だから。日々訓練だからね!」

「ありがとうございます! じゃ、まずは何をすればいいですか? 俺、何でもやりますよ~」

「じゃ、今日は……化粧の練習よ!」

「──?!」

「まずは女の子にならなきゃ。今日は衣装持って来てないからできないけど、最終目標は女装して街を自然に歩いて男にナンパされる事よ!」

「い、嫌ですよ……何ですか、その狂った罰ゲーム……」

「何言ってるの? 私に絶対服従でしょ? さっき賭けしたの忘れたの?」

「あ、あれ……有効だったんだ……」

「当たり前でしょ! 大丈夫! 私の言う通りにしてたら、たくみちゃんも立派なプロファイラーになれるから! 信じてついてきて! で、まず化粧の基本は────」

 畑口伊織は……ただの変人ではなかった。全く無意味の様に思われた畑口の英才教育(?)により、加藤は飛躍的に能力を伸ばす事となるが、それが実感できた時には畑口は──


■宿題……?(2)

「あれ? たくみ君、漫画読むなんて珍しいじゃん。どうしたの、それ?」

「あ……何か伊織さんが貸してくれたヤツ。月光の囁き……文学系なのかな? 是非あすかと2人で読んでくれ……だって」

「な、何か嫌な予感するけど……どんな内容なのよ……」

「いや、俺もちょっと構えてたけど、何か普通の恋愛ストーリーっぽいよ、今の所。ま、あの人も毎回変なものばかり貸す訳じゃないって、多分。……ま、取りあえずあすかも読んでみてよ」

「う、うん……」

──3時間後(読破後)

「こ、これは……どう解釈すればいいのかな……一応、ハッピーエンド?」

「やっぱり変態ものだったじゃない! しかも重度の!」

「……足フェチ変態M男に感化されてSに目覚める彼女、それに巻き込まれるノーマルな親友……一応純愛ものなのかな? なんか伊織さんがタイタニックが霞む程の名作だって異様に絶賛してたけど……」

「知らないわよ! そもそも何で私にまで勧めるのよ!」

「いや、分からない事があったらあすかに聞けって……後、実践して初めて分かる事もあるからって……」

「絶対やらないからね! っんとにもう……あいたたた……変な格好で本読んでたから足が痺れちゃったじゃない! ちょっと足、マッサージしなさいよ!」

「…………」

※加藤が変な性癖に目覚める事は当然なかった。……九重は知らんけど……
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