詩小説『赤提灯の下』3分の想い出。あの日を懐かしむ人へ。

エピソード文字数 511文字

赤提灯の下、肩を並べて。ドブ川に並ぶ、屋台街。
お湯割りに、指でとんとんと、七味を落とす、その飲み方も。
グラスをかたむけ、交わした約束は、生中の泡に消えていった。

会わせたい人がいると打ち明ければ、俺以上に照れていた。
黙りこくったかと思えばしばらくして、「良い人なのか?」と零してる。
静かに頷き、煮込みの大根に、箸を入れて頬張った。

いつしか売れると信じてた、丸めた原稿用紙が転がる、傘電球の下。

締め切り間際、殴り書きの完の文字。まとめて表紙をしたためる。
原稿を入れた赤いポストに向かって、彼女は真面目な顔して手を合わせてる。
賽銭箱でもないだろうと、笑ってみせた俺のとなりで。
細く伸びた坂を駆け上がり、四畳一間のアパートで。小窓を空けて見下ろせば。窮屈にならぶ家と、垂れ下がる電線。埋もれた神社。

いつしか売れると信じてた。丸めた原稿用紙が転がる、傘電球の下。

きしむベランダに出て、洗濯物の下。ラムネを開けて乾杯をした。
「それもまた人生か」と難しい顔で言ったあなたと、また屋台。
白髪交じりで背中を丸めて。これからのことを話してる。

あんな時代もあったなと懐かしめるくらい、人生は良いものだ。
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登場人物紹介

主人公はあなたです。それぞれの恋愛模様を『詩小説』で。

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