第１話

　私は矢島蘭子様のクローンだ。蘭子様のためだけに存在している。
「コピー、今日代わりに学校に行って」
「わかりました」
　蘭子様の代わりに学校へ行くこともしょっちゅうだ。
　外見は全く同じだし、記憶や性格もトレースしているために全く気付かれることはない。

　私自身は本が好きだが、蘭子様の性格通りに行動しなければならない。友達とだべり、スマホをいじる。
　スマホの中身は蘭子様のものと連動しているため、私はいじっている振りだけだ。途中で蘭子様からの指示も入ってくる。今日は、まっすぐ帰ってこいとのことだった。私の寄るところなど図書館ぐらいしかないのだけど。

　勉強もできすぎてしまうと不審に思われるため、セーブする。
　私はいつも通り学校で過ごし、家に帰った。

　蘭子様自身が学校に行くときは、家政婦のようなことをしている。掃除、洗濯、食事の準備などだ。
　蘭子様は帰ってきたら私を自室に追いやる。ずっと同じ顔を見ていたくないようだ。

　それからは一人の時間を過ごす。本を読んだり勉強をしたり。

　そして毎朝蘭子様の記憶を植え付けるのだ。
　私の記憶を移すことはできない代わりに、学校であったことを逐一報告する。
　蘭子様は私がどう行動したかなどに興味がなく、あまり聞いていないので、いつもと変わったことがあった時だけ話すことにしていた。