第51話 フレデリックのお部屋で私が思う事
文字数 1,516文字
朝、紅茶の香りで目が覚める。目を開けると見知らぬ天井が見えた、ここは……。
アンが入れてくれているのかと、思ったらフレデリック付きの侍女マリアが目覚めの紅茶を入れてくれていた。
「おはようございます。セシリア様。お体はもう大丈夫ですか?」
私に紅茶を渡してくれながら、マリアは気遣う言葉をかけてくれる。かおり草の心配だよね。
「おはよう、マリア。かおり草の毒はもう抜けたみたい」
「それはよろしゅうございました」
「そういえば、フレデリックは?」
「陛下でございますか? 昨晩は執務室の仮眠室で寝るとおっしゃられていたので、そのまま仕事に入っているのではないでしょうか」
マリアは、少し考えてからそう答えてくれた。
フレデリック、執務室で寝たんだ。クリストフを逃がしてしまった後処理、大変だったのかしら。
「起きれるようでしたら、朝食をお持ち致しますね」
紅茶を飲んだ後は、侍女たちによって部屋着に着替えさせられた。
……そっか、私の謹慎はまだ続いているんだ。
そういえば、私の侍女たちはどうなったのだろう? フレデリックが治療の指示を出してくれていたみたいだけど。
「マリア。わたくしの侍女たちが、あの後どうなったのか知らない?」
「みんな回復に向かってますよ。解毒の薬湯が良く効いたようで。本当なら、明日にでも復帰できるのですが、様子見で二日くらい休ませるそうです」
「そう。よかった」
本当に良かった。心底ホッとした。
視線を感じて振り向くと、マリアが優しい顔をして私を見ていた。
「セシリア様付きの侍女たちが休んでいる間は、何かとご不自由をおかけしますが。わたくし共が、精一杯代わりを務めさせて頂きますので、なんなりとお申し付けくださいませ」
マリアとその後ろの侍女たちが、私に礼を執っている。何だかよく分からないけど。
「ありがとう。助かるわ」
私もにこやかに返事をしておいた。
それにしても、外の気配がすごい。
この分だと、近衛騎士団だけでなく、騎士団も何部隊か駆り出されていそう。
昨日の今日だから仕方が無いのかもしれないけれど。
王族の居住区まで入り込めるという事は、もうこのお城のどこでも入り込めるという事だ。
いくら警備を厳重にしても無駄だと思うわ。
クリストフの目的も分からないのよね。
だってオービニエ外務大臣はもう使えない。
外交ルートを握っているオービニエ外務大臣と繋がって、かおり草を自分からでなく、他国からの輸入という事にしていたようだけど。
私だけでなく、フレデリック側からも外交ルートを潰しにかかっているので、早いうちにオービニエ外務大臣は大臣職を失うであろう。
後任の私を狙う意味も分からないものね。私がいなくなっても、次の外交を担当するのは確実にフレデリックの信頼が厚い側近だから。
外交の引継ぎはもう殆ど終えている。
各国も私が外交の席に着くのに納得してくれてるわ。
まぁ、これはピクトリアン王国が外交の際、私を単独指名してくれたおかげなのだけれどもね。ピクトリアンの後ろ盾があるとの噂も浸透して来たし……。
私は溜息を吐いていた。
このままクリストフが現れず、かおり草の騒ぎが治まってしまったら、前国王の時の様に有耶無耶なまま事件は終わってしまう。
オービニエ外務大臣は、外務大臣職を失うだろうが、貴族としての地位はそのまま、罪に問われることもない。かおり草に関わったという、物的証拠は何も無いのだから。
これでは、ソーマ・ピクトリアン国王との約束が果たせない。
私がフレデリックのお部屋にいたのは、アンとセルマが職場復帰してくるまでの、二日間。
その間、フレデリックは全く自室に立ち寄らなかった。
アンが入れてくれているのかと、思ったらフレデリック付きの侍女マリアが目覚めの紅茶を入れてくれていた。
「おはようございます。セシリア様。お体はもう大丈夫ですか?」
私に紅茶を渡してくれながら、マリアは気遣う言葉をかけてくれる。かおり草の心配だよね。
「おはよう、マリア。かおり草の毒はもう抜けたみたい」
「それはよろしゅうございました」
「そういえば、フレデリックは?」
「陛下でございますか? 昨晩は執務室の仮眠室で寝るとおっしゃられていたので、そのまま仕事に入っているのではないでしょうか」
マリアは、少し考えてからそう答えてくれた。
フレデリック、執務室で寝たんだ。クリストフを逃がしてしまった後処理、大変だったのかしら。
「起きれるようでしたら、朝食をお持ち致しますね」
紅茶を飲んだ後は、侍女たちによって部屋着に着替えさせられた。
……そっか、私の謹慎はまだ続いているんだ。
そういえば、私の侍女たちはどうなったのだろう? フレデリックが治療の指示を出してくれていたみたいだけど。
「マリア。わたくしの侍女たちが、あの後どうなったのか知らない?」
「みんな回復に向かってますよ。解毒の薬湯が良く効いたようで。本当なら、明日にでも復帰できるのですが、様子見で二日くらい休ませるそうです」
「そう。よかった」
本当に良かった。心底ホッとした。
視線を感じて振り向くと、マリアが優しい顔をして私を見ていた。
「セシリア様付きの侍女たちが休んでいる間は、何かとご不自由をおかけしますが。わたくし共が、精一杯代わりを務めさせて頂きますので、なんなりとお申し付けくださいませ」
マリアとその後ろの侍女たちが、私に礼を執っている。何だかよく分からないけど。
「ありがとう。助かるわ」
私もにこやかに返事をしておいた。
それにしても、外の気配がすごい。
この分だと、近衛騎士団だけでなく、騎士団も何部隊か駆り出されていそう。
昨日の今日だから仕方が無いのかもしれないけれど。
王族の居住区まで入り込めるという事は、もうこのお城のどこでも入り込めるという事だ。
いくら警備を厳重にしても無駄だと思うわ。
クリストフの目的も分からないのよね。
だってオービニエ外務大臣はもう使えない。
外交ルートを握っているオービニエ外務大臣と繋がって、かおり草を自分からでなく、他国からの輸入という事にしていたようだけど。
私だけでなく、フレデリック側からも外交ルートを潰しにかかっているので、早いうちにオービニエ外務大臣は大臣職を失うであろう。
後任の私を狙う意味も分からないものね。私がいなくなっても、次の外交を担当するのは確実にフレデリックの信頼が厚い側近だから。
外交の引継ぎはもう殆ど終えている。
各国も私が外交の席に着くのに納得してくれてるわ。
まぁ、これはピクトリアン王国が外交の際、私を単独指名してくれたおかげなのだけれどもね。ピクトリアンの後ろ盾があるとの噂も浸透して来たし……。
私は溜息を吐いていた。
このままクリストフが現れず、かおり草の騒ぎが治まってしまったら、前国王の時の様に有耶無耶なまま事件は終わってしまう。
オービニエ外務大臣は、外務大臣職を失うだろうが、貴族としての地位はそのまま、罪に問われることもない。かおり草に関わったという、物的証拠は何も無いのだから。
これでは、ソーマ・ピクトリアン国王との約束が果たせない。
私がフレデリックのお部屋にいたのは、アンとセルマが職場復帰してくるまでの、二日間。
その間、フレデリックは全く自室に立ち寄らなかった。