あとがき&十一月の物語からのメッセージ

文字数 4,353文字

 あとがき

 いかがでしたか?


 心優しい「龍平」君を、ずっと月から

見護(みまも)っていた『月花龍(げっかりゅう)』。


 淋しさや苦しみをたくさん(かか)えた

「龍平」君の力になるために、

(みずか)ら覚悟を決め、成龍(せいりゅう)に成長した

『月花龍』の願いはひとつ。


 ≪「龍平」君を幸せにすること。≫



 でも『月花龍』には

もう一つの切なる願いがありました。





 それは。。。


「龍平」君が、ずっと(かか)え続けている

淋しさや苦しみを(みずか)ら乗り越えられる

人になってくれること。



 大好きだったお母さんが

亡くなってしまった悲しみ。


 友だちができないという

淋しさと苦しみ。



 それを乗り越え、

(みずか)らの力で人生を切り開いてほしい。≫


 『月花龍』はそう思っているのです。





 お母さんを失ってしまった

悲しみを一番わかっている「龍平」君。


 『母龍(ははりゅう)』が『月花龍』を迎えに来た時、

「龍平」君は、自分のせいで

『母龍』と『月花龍』を

引き離してしまうのではないか。。。

そう悩みました。



 でも。。。



それでも「龍平」君は

『月花龍』と一緒にいたかった。



 その決断で、

どれだけ

「龍平」君の心が傷ついていたか、

どれだけ

ひとりぼっちのつらい日々を送っていたか、


この物語を読んでくださった読者のみなさん

ならきっとお分かりになるでしょう。



 「龍平」君は、誰にも言えなかった

つらさを『母龍』と『月花龍』には素直に

伝えていましたね。



 「龍平」君にとっては、それを話すという

ことは、とても勇気のいることだったのだと

思います。



 しかし、同時にそれは

とても、とても≪大切≫なこと。



 なぜなら。。。



『母龍』も言っていたように

どんなに「龍平」君のことを思っている

『月花龍』でさえも、きっと解決が

難しいこともあるでしょうから。





 人はみな

何かしらの苦しみを(かか)えています。


 『月花龍』は『月花龍』自身にだけで

なく、もっといろいろな人に力になって

もらうことも「龍平」君にとっては大切な

ことなのだということに気づいてほしいと

思っていたのです。



 でも、そのつらさを誰かに話しても

またその人が自分から離れて行って

しまうのではないか。


 ずっとその繰り返しだった

「龍平」君はそのたびに傷ついて。。。


 いつの日か、その傷ついた心を、

そしてその叫びを、心の奥にしまい込み、

自分ひとりで(かか)え続けていたのでしょう。





 「龍平」君は、

ずっとずっと我慢してた。



ずっとずっとあきらめてた。





そして、



ずっとずっと勇気を出せずにいた。





 でも。。。



 ≪勇気を出して一歩を踏み出すこと。≫


 これこそが人生を変える()(ふだ)



 そして私たちにできることは、

相手の立場になって考え、

相手の現状を理解し、互いに助け合う

思いやりの気持ちを持つこと。





 私たちは、とかく自分中心に物事を

考えてしまいがち。


 自分が知っていることは

当然誰もが知っているはず。


 自分が好きな食べ物は

当然誰もが好きなはず。


 自分が正しいと思うことは

当然誰もが正しいと思っているはず。



 そして、

自分ができることは、

当然誰もができるはず。





 自分にはこれができても、

相手にもこれができるのか、

それはわかりません。


 まず相手にそれができるのか

尋ねる必要があるのです。


 もっと踏み込んだ言い方をすれば

それを(さっ)するようにすること。

それに気づくこと。



 普段当たり前のように

自分がしていること、

自分ができること、

すべての人が自分と同じように

それができるとは限らないのです。



 聞こえる人にとって

ごく当たり前のように

日常、自然に耳に入る声や音。



 それは、「龍平」君には届かない。





 この物語を書いている作者の私も

あることがきっかけで

≪手話≫を学び始めました。



 ≪手話≫を教えてくださる

≪ろう者≫の先生が、その実情を話して

くださった時、私は衝撃(しょうげき)を受けました。



 電車の中で、

もし突然電車が止まったら、

何が起こったのかわからない。

 とても不安。



 自動車や自転車が

後ろから近づいてきてもわからない。

 とても怖い。



 一人でエレベーターに乗れない。

 乗っている途中で

突然エレベーターが

止まってしまったら

恐ろしくて、

どうしていいかわからない。



 そして、

夜中に火事が起こっても

それに気づくことができない。





 その≪ろう者≫の先生は

親しかった知り合いの≪ろう者≫の方を

火災で亡くされたそうです。





 そのような状況に目を向け、

≪ろう者≫の方々の立場になって考えれば、

「龍平」君がどのような気持ちでいるのか、

きっと読者のみなさんになら

わかっていただけると思います。



 そして、

もしそれに気づけば、力になれる。





 もう一つ。


 同時に「龍平」君も

過去のつらさを乗り越え、勇気を出して

自分の苦しみや現状を話し、理解して

もらうことが必要なのだと思います。





 なぜなら私たちには、

話してもらわなければわからないことが

まだまだたくさんあるからです。


 でも、もし話してもらえたら、

理解してくれる人たちはたくさん

いると思うんです。



 『母龍』も、あの時「龍平」君に言って

いましたが、その中に、きっと。。。

力になってくれる人たちがいます。





 ≪手話≫教室も今はコロナの影響で

ずっと休講が続いていて、

なかなか私の≪手話≫の上達は難しく。。。





 「そんなに落ち込まないでください。

  (めい)さん。」


 「えっ? だれ? 

 こんな私を励ましてくれるのは。。。」


 「『月花龍』です。」


 「やっぱり『月花龍』だったのね。 

 ありがとう。

 元気だった?」


 「はい。 お陰様(かげさま)で。

 息災(そくさい)に過ごしております。


 私の願いは、

誰もがみなお互いに理解し合い、

助け合っていけるように

なってほしいということです。


 「龍平」君もそう思ってるんです。


 だからみなさまには

もっと自然に≪ろう者≫の方々と

≪手話≫で会話ができるように

なっていただけたらとてもうれしいです。


 どうか読者のみなさま、

ご協力、よろしくお願いいたします。


 『月花龍』でした。」



 「『月花龍』もホントは

ご両親の元へ帰りたかったでしょうに。」


 「いいえ。 私はもうずっと

「龍平」君のそばにいると誓いました。


 それに次の≪ブルームーン≫が

やって来たら、その時に里帰りも

できますし。。。」



 「『月花龍』は(えら)いね。 

 それに(たの)もしい。」



 「いいえ、それほどでも。。。


 私も(めい)さんを応援しています。


 ≪手話≫がもっと上達しますように。。。


 それに今は≪ユーチューブ≫に

≪手話≫の動画を公開している方々も

たくさんいらっしゃるようですよ。


 その動画を見て学ぶのも

よいのではないでしょうか?」



 「あっ、そうか。

 そういう方法もあったね。


 その動画を公開している方々も

きっと『月花龍』と思いは同じでしょう。


 でも『月花龍』、

どうして≪ユーチューブ≫のことを

知っているの?」



 「だって、私はいつも

「龍平」君と一緒ですから。(笑)


 「龍平」君もあらゆる方法で

いろいろな情報を得て、勉強している

んですよ。


 ≪ユーチューブ≫も大いに活用して

いますしね。


 私はいつも、そんな「龍平」君を

微笑(ほほえ)ましく、そして頼もしく思って

いるんです。


 将来はお父さんのように

ソフトウェアを開発するエンジニアに

なりたいと思っていますが、

でもそれだけではなくて、もっとたくさんの

ことを勉強したいみたいです。


 英語や他の外国語を学んだり、

世界の歴史にも興味があるみたいだし。」



 「よかった。。。

 「龍平」君も夢に向かって一生懸命

努力しているのね。


 それを聞いて、

とってもうれしくなったわ。


 『月花龍』、ありがとう。


 私も絶対にもっともっと

≪手話≫を学んで上達するわ。 


 見ててね。」



 「はい。

 雨が降ろうと。

 風が吹こうと。

 雪が降ろうと。


 (めい)さんを応援します。


 季節がどんなに移り変わろうと、

ずっと(めい)さんを見護(みまも)っています。」



 「約束してくれる?」



 「約束します。」





 『月花龍』の≪エール≫の言葉は、

作者の私の心に響きました。(嬉)



 ですので、いざという時には

微力(びりょく)ながら、≪ろう者≫の方々の

力になれるよう私も最善を尽くします。



 この物語を読んでくださっている

読者のみなさんも、もし何か困っている

≪ろう者≫の方々を見かけたら

どうか、どうか力になってください。



 身振り手振りでも、筆談でも。



 大切なのは、気づくこと、

そして行動を起こすこと、

だと思います。





 最近、日本でも頻繁(ひんぱん)に起こる

豪雨(ごうう)大地震(だいじしん)


 その情報を得るのが難しい

≪ろう者≫の方々は、どうしても

孤立してしまいがちです。



 避難場所にいても、

今、どのような状況なのか、

どうすればいいのか、

なかなか正確な情報を

得られないために不安になったり、

自分の持病や体調など

現状を伝えられない苦しみやつらさを

(かか)えてしまっている方々が

たくさんいらっしゃると聞いています。



 また、

いきなり手話で話しかけたら

失礼なのではないか、

相手の方に悪い印象を

与えてしまうのではないか、


そういう気持ちから

遠慮(えんりょ)したり、躊躇(ちゅうちょ)したり、

なかなか私たちに思いを伝えられずにいる

≪ろう者≫の方々がたくさんいらっしゃる

とも聞いています。



 それを理解し、みなさんそれぞれが

それを身近な方々に伝え、

いざという時には、≪助け合いの輪≫、

そして≪和≫というものを広げていって

くださればとってもうれしいです。



 私たちはけっして一人で

生きているわけではない。


 みなお互いに助け合って

生きているのですから。





 「龍平」君。 もう大丈夫。 

 これからも勇気を出して

夢に向かって進んでいこう。


 『月花龍』もみんなも応援しているから!





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 十一月の物語からのメッセージ


 十一月の行事で有名なものと言えば、

≪七五三≫のお祝いですね。


 諸説ありますが、三歳と七歳の女の子、
五歳の男の子が真新しい着物や
ドレスを身にまとい、

神社へお参りし、今まで無事に過ごせた
ことを神様に感謝し、これからも見守って
くださいとお願いをする行事。


 十一月の物語の主人公は
そんな≪七五三≫を楽しみにしている
七歳になる「水島(みずしま) (あい)」ちゃん。


 とっても優しく元気な女の子です。


 その「愛」ちゃんを、
いつもそばで見護(みまも)っていらっしゃった
幼神(おさながみ)、『明光照尊(みょうこうしょうのみこと)』さま。



 実は天界に住まう神々の世界でも
≪七五三の()≫があるそうなのです。


 幼神(おさながみ)の中でも、特に優秀な三柱(みはしら)の神々が
選ばれ、より位の高い神に昇格(しょうかく)する儀式。


 たいへんおめでたいことに、
今回、『明光照尊(みょうこうしょうのみこと)』さまは
みごとその優秀な神として選ばれたのです。



 「愛」ちゃんのことが大好きな
『明光照尊』さまは「愛」ちゃんを
その儀式へ招待します。


 そして「愛」ちゃんは、とってもすばらしい
贈り物をいただきます。


 さて、いったいどんな贈り物をいただける
のでしょうか? 


 不思議な世界に(いざな)われた「愛」ちゃん。


 そこでも大活躍です。


 十一月の物語 三柱(みはしら)幼神(おさながみ)


 十一月十五日に投稿いたします。



 愛ちゃんで~す。 絶対に読んでね!
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