第三幕(6)

文字数 249文字

(静かに)一つ、おとぎ話をしてあげよう。それを聞いたら、眠るんだよ。
昔むかし、
もう、いつだったか思い出せないほど昔のこと。
カーハイドはエストレの国に、二人のきょうだいがありました。

当時も今と同じく、きょうだい同士の結婚は許されていましたが、
子どもをつくってはなりませんでした。

ところが二人は、この掟を破りました。
弟のほうが子どもを生み、追放されたのです。

残された兄は絶望し、
毒をあおって――

みずからの命を断ちました。




今も
地獄の吹雪のなかを
さまよっていることでしょう。




(ふっと微笑み)おしまい。
沈黙。
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登場人物紹介

ゲンリー・アイ

地球出身。惑星同盟《エキュメン》の特使。惑星《冬》ことゲセンに単身降り立ち、カーハイド帝国の皇帝に開国をうながす。長身。性格は誠実で直情的。推定される容貌はアフリカ系。男性。

セレム・ハース・レム・イル・エストラヴェン


ゲセン出身。帝国カーハイドにおける《王の耳》(宰相に相当する最高実力者)。ゲンリーの使命の重要性をただ一人理解する。やや小柄(ゲセン人の平均的体躯)。性格は慎重かつ大胆。推定される容貌はアジアあるいはエスキモー系。中性(両性具有)。

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