ソロで山登りしてる女の子を変な男から護ってあげたら……うわあああ……

文字数 589文字

「おい、お嬢ちゃん、1人なの?」
 返事がない。
「おい、おっちゃん」
 背後から若造の声。
 喧嘩になると……厄介だ。
 休日に山に登ると、普段、忘れてる自分の本当の年齢を思い出してしまう。
「気にするな。あんなのは、弱いと思った相手にしか噛み付けない女の腐ったような男だ。俺みたいな男が一緒に居るだけで怖けづく」
 ……。
 前方に居る女の子は……気にしてないようだ。俺の事さえも。
 あ……マズい。
 そっちは……。
「マズい、そっち行くな、そっちは……」
「おい、おっちゃん……」
 うるさい。
 人1人の命がかかってるんだぞ。
 あのお嬢ちゃんが、崖から落ちる前に助け……。
「お……おっちゃん、待て〜ッ‼」
 えっ?
「ああああ……馬鹿かぁ〜ッ⁉ やめろ〜ッ‼」
 えっ? えっ? えっ? えっ?
 うわああああ……ッ‼

「ええ、山登り仲間の間では有名な人でしたよ。悪い意味でね。若い女の子と見れば、すぐに声をかけて、ウザがられてると判った途端に癇癪(オステリー)起こすような」
 登山中に中年男が転落死したのを目撃した、その若い男は、そう証言した。
「そんな厄介な人に出喰わした挙句、しかも、そいつが、ず〜っと、何か、意味の判んね〜事をブツブツ言い続けてたんで……すんげ〜気味悪くてしょ〜がなくて……何かヤバい事になるな〜、とか思いつつ、下手に近付くのも()だったんで……ええ、崖から落ちた時に助けられなかったんですよ、ええ」
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