第24話 お隣さんと人形美女と肝試し
文字数 7,675文字
暗闇に響くは夏の虫の声と風に揺れる木々の音…
そして目の前に広がるのは鬱蒼とした雑木林…
夏の夜に雑木林、そして片手に懐中電灯を持った若者達が集まれば何をするかは明確である。
そんな真夏の夜の雑木林の前で紙切れを片手にわたしは絶望的な気持ちで立ち尽くしていた。
「花ちゃん…俺だって同じ気持ちだよ。」
「す、すみません…顔にすぐ出てしまって…」
「…俺達くじ運悪いよな…」
「はい…」
隣に並び気遣わし気に肩を叩くのは楓先輩。顔は既に青ざめいつもの爽やかスマイルも引きつっていた。
合宿一日目の夜から夏の大イベント、肝試し…それが今から始められようとしていた。
そして今重大な鍵である組み合わせペアが決められた所なのだが…
よりにもよって楓先輩って…。そりゃ先輩は優しくてイケメンで穏やかな人で好きだけど…ドジっぷりヘタレっぷりはわたし並みだ。つまり頼りない。
でもこれで忍先輩とかでもそれはそれで嫌だ。あの人は自由人で飽きっぽいからすぐに置いて行かれるだろうし…
「楓先輩!灯の事絶対守ってあげて下さいね!!放置したら絶対許しませんからね!!」
「わ、分かってるよ奈々ちゃん…忍じゃあるまいし…」
「ですよね…あ~!でもあたし心配!!蘭子先輩!やっぱりペア替えても良いですか?」
心配性の奈々ちゃんは冷静に暗闇を見つめていた蘭子先輩に声を掛けた。
先輩凄い…こんな時まで顔色一つ変えずに…数余りで一人でこれから散策するっていうのに…
ちなみに、ペアはこうなっている。わたしと楓先輩、奈々ちゃんと咲良君、緋乃先輩と忍先輩、そして蘭子先輩だけは何故か一人(本人希望)だ。
「駄目よ…一度決まった事を変更したら面倒臭いわ。」
「で、でも!このペア凄く不安なんですけど…あっちのペアも自由人過ぎてある意味不安ですけど…」
「え?でも楽しそうじゃん!俺忍先輩とが良かったなぁ…」
「あたしで悪かったね…あたしだってどうせなら灯とが良かったよ。」
「あ!勘違いしないでって!俺は可愛い女の子なら大歓迎だし。なっち(奈々ちゃん)でもあかりんでも緋乃先輩でも勿論蘭子先輩でも!あ、楓先輩も可愛いから歓迎しますよ?」
咲良君…それって誰でもいいって事じゃないのかな?可愛ければ…
この鬱蒼とした風景とは程遠いキラキラスマイルを浮かべ何節操のない事言ってるんだか…
「とにかく駄目よ…これで決まりです。わかったらさっさと始めるわよ?初めは葉月と春宮、次に文月と緋乃、その次に立花と花森…最後に私ね。」
「蘭子ちゃんは相変わらずクールですわねぇ…そこが素敵なのだけど…」
「女王様の言葉は絶対だからな…諦めろちーこ。」
忍先輩が珍しく慰める様にわたしの肩を叩いてくれた…けど、多分絶対内心ワクワクしているに違いない…
「大丈夫だって…いざとなったら俺が探しに行ってやるって…」
「忍先輩…」
「…骨はちゃんと拾ってやるって。楓の分は面倒だからそのまま放置するけど…」
「既に何か起こる事前提じゃないですか!?ほ、骨って…うう、せめて骨になる前に探してください…二人分…」
ああ、ちょっとでもいい人って思ってしまった自分が憎い…!この人に優しさなんて絶対求めちゃいけない!!
「ま、まぁ…決まった事は仕方ないし…頑張ろうな、花ちゃん。」
「はい…万が一何かあったら二人で忍先輩の枕元に化けて出てやりましょうね?」
「花ちゃんまで縁起の悪い事言わないでくれよ…」
こうして不安だらけの肝試しは始まったのだった。不安だらけの相棒と共に…
ザザッ…
雑木林を歩くこと数分…急に吹く穏やかな夜風も不気味に感じる…
わたしと楓先輩はお互い身を寄せ合いながら慎重に一歩一歩進み懐中電灯を握りしめていた。
「は、花ちゃん!手繋いであげようか?」
「先輩も怖いんですね…お願いします!」
「…よ、よし!これで少しは心強くなった…よね?」
「先輩凄い手汗…」
「花ちゃんも人の事言えないだろ…」
手汗でびっしょりになった手をお互い握りしめながらヘタレなりに前へと進んで行く頼りないコンビ…
もう少し速く進んだらもしかして前を行く緋乃先輩と忍先輩のペアに追いつくかもしれない!よし、ここは仕方がないからわたしが楓先輩を引っ張って行くしか…!!
「せ、先輩!なるべく速く歩いて前の人に…きゃっ!!」
「あ!花ちゃん!?」
恐怖と焦りのせいか、いつもの事なのか…わたしは一歩踏み出そうとした瞬間思い切り自分の足に躓いた。ついでに手を繋いでいた先輩も一緒に。
ああ…恰好悪いわたし!!いつものパターンとは言え…
ここに蒼がいたら物凄く呆れた顔して手を貸してくれただろうか?いや、躓く前に多分阻止するな…
「あ~…はははっ…恰好悪いなぁ…」
「す、すみません!わたしがドジなの忘れて急いだせいで…本当恰好悪いですよね…」
「ああ、違う違う。俺がって事。奈々ちゃんならきっと転ぶ前に阻止してただろ?なのに一緒に転ぶって…俺年上で男なのにな?」
半身を起こし、そのまま足を投げ出し座り込むと楓先輩は苦笑してそんな事を呟いた。
確かに恰好悪い…少女漫画なら転んでも『大丈夫か?』とか言って手を差し出すのが定番なのに。一緒に転ぶパターンは相当恰好悪い。
でも、それが楓先輩らしくて良いのになぁ…いきなり恰好良くなってもそれはそれで怖いというか…
「先輩はそれで良いんですよ…それにドジ度で言ったらわたしの方が遥か上を行きますから!この前も普通に道歩いてたら何もないところで転びそうになったし、あ、その前危うく足の小指をですね…」
「それ、俺も良くやるよ…。でも、何か花ちゃんらしいよね?そういう所。俺さ、花ちゃんと会うまで俺よりドジな人間なんていないって思ってたんだよな。」
「わたしも先輩と会うまでは自分レベルのドジはいないかと思ってました…えっと、覚えてます?ほら…忍先輩がわたしを捕獲して部室に運んで来た時の事…」
「ああ、あの時俺思い切り机の角に足ぶつけて派手に転んだっけ?恥ずかしかったなぁ~…」
「そう、それです!わたし思わず親近感を感じました…ああ、自分以外にもこんな事する人いるんだって。」
「酷いなぁ…ま、それなら俺もあるけどな?花ちゃんがぼんやり廊下歩いてたらさ、思い切り掃除用具入れにぶつかってさ…上からバケツ落ちてきてちょうど頭に被さって!」
「み、見ていたんですか!?」
「偶然だけど…あれちょっと笑っちゃったなぁ!今思い出しても…ははっ…あはは!!」
「ちょ、そんなに笑わなくても!先輩だって人の事言えない癖に!!」
その後わたしと先輩はお互いのドジエピソードを語りながらゆっくりと慎重に進んで行った。
楓先輩は本当頼りないけど和む…いつだって優しいし分かりやすいし。蒼とは大違いだ。
でも…そんなわたしと先輩の様子を蒼が物陰から見守っていたとしたら…さぞハラハラして助けに行きたい衝動に駆られウズウズしていることだろう。
彼は基本的に危なっかしい人間は放っておけないのだ。
まぁ…そんな事さすがにないだろうけど…
*****
一方、肝試しが始まる少し前…
「駄目だ…やっぱり放っておけない…」
陸上部はちょうど夕食も済み各自自由時間となっていた。
この時間は読書かトレーニングでもしようと考えていたが…俺、雛森蒼にはどうしても放置することの出来ない悩みがあった。
幼馴染みの花森灯…彼女はとんでもなくドジでおまけにいつも夢見がちでぼんやりしている危なっかしい奴だ。あいつのお隣さんとして幼馴染みとして見守る事十三年…ハラハラしっぱなしだ。
そんな危なっかしい奴が夜の雑木林で肝試しをすると言ってきた…それもあの奇妙な部活仲間達と…どう見ても危ない匂いしかしない。
灯の部活動に一々口を出すつもりはさすがに無い。だが、さすがに夜に肝試しは無いだろう。危ない。あいつ自分がドジだという自覚があるのか?
ああ、やっぱり無理やりにでも付いて行くべきだったか…くそっ…心配で夕飯もろくに食べれなかった…
あの眼鏡の先輩…もしあの人と一緒に回る事になったら…絶対放置される…そして方向音痴の灯は泣く泣く夜の雑木林を歩き回り最悪足を滑らせて崖から…
「遭難…」
脳内に駆け巡る女子高生行方不明遭難の新聞記事…白骨化して発見…
ありえる…あいつなら絶対やりそうだ…
いや、落ち着け俺…夏にも水城にも過保護だと言われただろ?そうだ俺は少し灯に対して過剰な心配をし過ぎるんだ…
十五年も生きているんだ、さすがにあいつも自分のドジ加減を自覚して気を付けている…俺が知らないだけで…
あ…でもさっき廊下であいつを見かけた時何もないところで躓いて危うくフロントのカウンターに頭をぶつけそうになってた…俺がたまたまいたから良い物を…
「雛森?どうした?風呂行こうぜ?」
「…すまん水城…ちょっと散歩に行ってくる…」
「散歩って…まさかお前…やめろって!花森の部活にまで付いて行くなよ!!」
「ち、違う…ちょっと近くの雑木林を散歩したくなっただけだ…」
「同じだろそれ!あ~…まぁ、気持ちは分かるけど…花森うっかり足滑らせて崖から落ちそうだし…」
「お前もそう思うか?」
「え!?あ、ああ…例えばだって!お、お前本当気にし過ぎ…っておい!?」
駄目だ…もうじっとしていられない…。この際後で怒られても良い。無視はさすがに嫌だけど止む終えない。
水城の制止も聞かず、俺は走り出していた…
「…おい、雛森…」
「静かにしろ…ああ、あいつ何ぼんやりしてるんだ…もっと気を引き締めて…」
「…初めてのおつかいで見守る両親かよ…」
数分後、俺は雑木林の陰に身を潜め幼馴染みを見守っていた…いや、これはある意味ストーカー行為になるのか?
何故かついて来た水城はこの際どうでもいい。夏よりはマシだ。大人しい。
それにしても…あいつのペアの男は誰だ?先輩みたいだが…
少しクセの入った髪に泣きぼくろの優男といった感じか。灯が好きそうなタイプだな…さすがあいつが選んだ部活だけある。面子が華やかだ。
「…頼りなさそうな奴だな…大丈夫なのか、あんな奴に灯を任せて…」
「え?背高いし優しそうじゃん。大丈夫だって、帰ろうぜ?」
「思い出した…あいつ…宿の入り口で灯並みに派手に転んでいた…駄目だ…まだ俺は帰れない…」
「…お前な…」
「静かにしろ…よし、灯の番だな…行くぞ…」
「お前こんな時はよく喋るな…」
こうして俺は灯を危険から回避させるため物陰から見守り続けた。もう誰にどう思われようが構わない。この肝試しが無事に終わりさえすれば。
*****
「何か嫌な気配がしませんか…?」
時は戻り語りはわたしに…
優しいが頼りない楓先輩と手を繋いで身を寄せ合い歩いていると、突然悪寒を感じ身震いした。
何だろう…?凄く嫌な予感がするのは…
わたしは辺りをきょろきょろ見渡し…そしてある茂みの方へと目を向けた。
まさか…いや、まさかね…?この向こうに蒼がいるなんて恐ろしい事ある訳が…
と、そんな時だった…茂みの向こう側から聞き覚えのある明るい声がしたのは…
「二人とも何面白そうな事してんだよ~!!俺も仲間に入れろってば!!」
ガサッ!!
「ば、やめろって日向!?」
「重い…」
ガサガサガサッ!!
「ぎゃぁぁぁぁぁ!?」
そして響く楓先輩の絶叫…
茂みが激しく揺れたかと思うと…そこから転げ出る三人の男子高校生…正確には日向君に圧し掛かられた水城君と蒼の姿…だが。
「あれ?あかりんだ~!」
「ひゅ、日向君…?それに…水城君まで…蒼もなにやってんの?」
「てか何?今の絶叫?あかりん?」
「違うけど…び、びっくりした…」
何となく嫌予感がしたのはこれか…。
わたしと目が合うと蒼は気まずそうに目を反らし、うっとうしそうに日向君を押しのけ立ち上がった。
何?この涼しい顔して『俺はただの通りすがりだ』と言わんばかりの雰囲気は?バレてるよ?もう隠しようがないよ?蒼??
「…よし、良いトレーニングになった…」
「ふっ、そうだなぁ…あ、あれ~?花森こんなところで何やってんだぁ?は、ははは!」
二人とも演技が下手過ぎる…。本当正直者だな…。
「蒼…ちょっとこっち来て…」
「…すまん…」
「やっぱ付けて来たんだ…」
「お前がうっかり崖から足を滑らせないかとか、放置されて泣く泣く彷徨ったあげく遭難していないかとか考えたら色々心配になって来た…」
「物騒な事考えすぎだよ!?あ~…なんかこっちまで怖くなって来たじゃん…唯でさえ怖いのに…」
「…やっぱり怖いのか…付けて来たかいがあった…」
「開き直らないで!!」
「悪い…」
「まぁ…蒼の顔見たら安心したけど…」
本当まさかとは思ったけど本当に陰から見守ってたなんて…この人どんだけわたしを心配しているんだろう…
まぁ、蒼の良いところは下手な言い訳をせずすぐ謝るところだ…今回はちょっと下手な嘘ついて誤魔化そうとしたけど。
目の前で珍しく気まずそうに目を反らしている姿を見ると何だか可笑しくて、少し安心するのが悔しい…
「花森~!この人大丈夫?」
「…あ、楓先輩…大丈夫ですか?先輩??」
どうやら気絶しているらしい…本当ヘタレだな…
日向君がペチペチ頬を叩いても反応が無い…
「…俺が背負って行く…こうなったのも全て責任は俺にある…」
そして蒼は潔くてなんか清々しいな…
言っている事は間違っていないけど何か恰好良い…
倒れている楓先輩を担ぎ上げようとしたその時だった。あの人が静かに現れたのは…
「…あなた達、何をしているの?」
暗闇の中懐中電灯の明かりに照らされて浮かぶビスクドールの様な人形美少女…蘭子先輩は無表情にわたし達一人一人を照らし出し首を傾げた。
無表情なのでその姿はまさに精巧に作られたアンドロイドの様だ…暗闇で見るから尚更…
「で、デタァァァァ!!」
日向君の悲鳴が雑木林中に響いたのは言うまでもない…
蘭子先輩の迫力は凄いのだ…夜だろうと昼だろうと…
「…そう、あなた達陸上部の…」
「そ、そうっす…いやぁ、すみません!こんな完璧な美人がこんな山中にいるなんて思っても見なくって~!!あはは!!」
日向君のフォローにも怒らずまして喜びもせず蘭子先輩は無表情に淡々と話しながら歩いていた。
片手で楓先輩の襟首を掴み引きずりながら颯爽と…綺麗な波打つ赤茶色の髪を夜風に靡かせ美しく…
「…うちの花森が迷惑を掛けたわ…ごめんなさいね。」
「い、いやぁ!あかりん…灯さんにご迷惑をお掛けしたのはむしろ俺達の方でして…」
「…そう?ならいいけど…」
「にしても本当お美しい!えっと…」
「蘭子よ…水無月蘭子。金髪のあなたは?」
「日向っす!日向小夏!夏でもぽちでもなんでもいいっすもう!」
「…みかんみたいな名前ね…そっちの爽やか君は?」
「み、水城っす!水城匠悟!!いやぁ、彼もイケメンなんすよ~!!でも一番モテるのはやっぱり…」
「雛森蒼君…あなたね…。成程、確かに…」
蘭子先輩は立ち止まりそのまま楓先輩を適当に下すと、蒼の目の前まで歩き、人差し指を彼の目の前へと向けた。
無表情美人の二人が並ぶとなんか迫力あるなぁ…
「…あなた、花森の事どう思っているのかしら?」
「…は?」
ら、蘭子先輩!?蒼を前にいきなり何を!?そりゃ、今朝告白したって話はしたけど…
いきなりそんな事を言われた蒼は当然きょとんとしている…
「…どう思っているのかと聞いているのよ。答えなさい。」
「…どうって…大切な人だと…」
「大切ね…まぁ、確かにそうみたいね。心配して肝試しに付いて来るくらいだし…でも、もし彼女があなた以外の人を好きだと言ったらどうするかしら?応援する?それとも…」
蘭子先輩!?何言ってるんですか!?
相変わらず無表情の蘭子先輩に、蒼も無表情でいつもの言葉を返す…そう思っていた。
あの海の時みたいに『特別な感情なんてない』って…ただ『幼馴染みとして大切なんだ』ってそんなニュアンスの言葉を…
緊張が走る中、蒼は無表情に少し考え込んで俯くと…ゆっくり顔を上げ蘭子先輩を見つめこう言ったのだ。
「それは困ります。…灯が好きなら応援したい気持ちもありますけど…多分俺は全力で力になってやれない…」
「…それは彼女を独占したいって思っているって事かしら?」
「独占…ああ、確かにそうかもしれない…灯の隣にはいつも俺がいてそれが当たり前で…その間に別の誰が入って来るとしたら正直不快です。」
「へぇ…」
「…俺はそれを隠しきれるほど器用な人間じゃない…多分…そのせいで灯にも嫌な思いをさせる…灯の隣は常に俺じゃないと嫌だから…まぁ、全部俺の勝手なエゴなんですけど…」
「…確かに勝手なエゴ以外のなんでもないわね。」
「…反論はしません…」
「素直ね…それに凄くストレートなのね…成程…」
蒼の言葉に満足したのか、蘭子先輩は再び楓先輩を引っ張り上げると颯爽と歩き出した。
何…今の言葉…?
わたしが蒼以外の人を好きになったら嫌だって…そう言う意味でしかない…鈍いわたしにでも分かるストレートすぎる言葉だ。
というか…蒼、あんな言葉言っといてやっぱり無表情だし…
分からない…蒼の考えている事が…
でもさっきの言葉を聞いていると何か蒼もわたしの事が好きだってそう勘違いせざる終えないような…
あ~!!ゆっくり焦らず想いを伝えようって決めたばかりだったのに!!また混乱するじゃん!!馬鹿!!
「雛森君、さっきの言葉に二言は無いわね?」
「ありません…」
「なら…花森の事を悲しませる様な事をしてみなさい?私が許さないわよ。」
「心配ありません…俺は灯を悲しませるような事はしない…」
「その言葉…忘れないでね…」
そして蘭子先輩はいつもにも増して恰好良いんですけど…
蘭子先輩に見惚れ、蒼の言葉に衝撃を受け動けなくなってしまったわたしは暫く立ち尽くすことしか出来なかった。