第56話 酒宴
文字数 3,765文字
麗射が水浴びを満喫してから外に出ると、まだ牙蘭はそこに立ちすくんでいた。
使用人部屋に帰った麗射と牙蘭は床にひかれた柔らかいマットの上で、とろけるように眠りに落ちた。
「麗射様、牙蘭様」
二人を起こしたのは、ガラスの器の中にろうそくを入れた灯りを持った煌露だった。いつしか日は沈み、あたりは暗くなっている。もともと目鼻立ちのはっきりした煌露の顔だが、灯の作る陰影がさらに身体の線の美しさも際立たせていた。引き締まってはいるが肉感的な肢体が炎のゆらめきで妖しく浮き上がる。麗射の背後で牙蘭の息を飲む声が聞こえた。
「大旦那様が、お二人を酒宴に招かれています。どうぞ本殿においでください」
「玲斗は俺たち平民と同席するのを嫌がっているんじゃないのか」
「酒宴の主催は大旦那様です。坊ちゃまは口出しができません。大旦那様は生粋の武人で時間を無駄にすることがお嫌いですのでお急ぎください」
二人は今まで袖を通したこともないような絹の礼服に着替えされられると、追い立てられるように大広間に案内された。
広間ではすでに酒宴が始まっていた。二人が来たことに気が付いた玲斗が、苦々し気な表情で麗射を睨みつけた。
細長いテーブルの一番の上座に座っていた、玲斗に面立ちの似た初老の男が二人を迎え入れるように手を広げ、肩までの金髪を光らせて立ち上がった。
「私は玲斗の父の凱斗 だ。このたびは息子の命を助けてくださり、感謝の言葉もない」
肩から腹部にかけて逆三角形、筋骨隆々としており、隙のないまなざしはいかにも武人である。
麗射達は慌てて頭を下げた。
「公子は、公子はご無事ですか?」礼もそこそこに牙蘭が声を上げる。
「ああ、近隣一番の名医を呼び、金に糸目を付けず薬湯を調合させた。こんこんと寝ておられたようだが、さきほど目を覚まされた様子だ」
「ああ、御差配ありがとうございました」
それさえ聞けば十分とばかり、牙蘭は深々と一礼すると再び物言わぬ男に戻った。
人々が座る長いテーブルには真っ白な布が引かれ、武骨だが明るい光を湛えるランプが一定間隔で置かれている。テーブルの上には何種類もの大皿がずらりと並んでいるが、目を引くのはいかにもそのまま焼きましたとばかりに原型を残した鳥獣の丸焼きだった。山がちな煉州は狩猟が盛んである、この肉も野生の獣をとってきたものだろう。飢えと口喝との戦いが続いた砂漠行、目の前にふんだんに置かれた飲み物と、湯気とともに漂う野趣あふれる香ばしい香りは、麗射の本能を否応なく刺激した。
居並ぶ人々はみな手にナイフとフォークを持ち、好きに目の前の料理を取っている。時には細長い卓の端っこまで好みの料理を漁りに立ち上がるものもいた。
「礼儀は必要ない、煉州特産の野牛だ。自由に食べてくれ」
そういうと凱斗は剣のように太いナイフをひらめかせ目の前の大きな肉と、丸のままの野菜を豪快に切り取って自らの皿に入れた。切り取られた肉は柔らかく歪み、淡紅色の断面から肉汁が溢れる。美術工芸院では肉と言えば鶏肉が主であり、数年ぶりとなるまともな牛肉料理に思わず麗射の喉がなった。
「煉州は平野が少ないが、低い山に住む野生の牛たちは肉が鍛え上げられて、噛めば噛むほど味が出て来る一級品だ。南方で産出されるこの塩も絶品だぞ」
テーブルの上にはハンマーで粉砕された薄桃色の岩塩が乗っており、凱斗はそれを手でつまむと無造作に肉の上にかけた。
使用人たちがここに座れとばかり玲斗の父の横の椅子を引く。
麗射達がテーブルに着くと、凱斗は肉汁を飛び散らせながら豪快に大きな肉の塊を切り出して客人達の皿の真ん中にどさりと乗せた。
テーブルの上には果物も肉もほぼ丸ごとが乗せられている。
きっと美術工芸院の食堂であれば、食材を見栄え良く繊細に盛り付けるところなのであろうが、ここはよくも悪くも豪快であった。
「息子の命を助けてもらったようで、心から礼を言う」
凱斗は麗射に酒を勧めながら頭を下げた。
「どうにもできの悪い息子で、申し訳ない。仲間を見殺しにしておめおめ実家の土を踏めるとは、煉州貴族の風上にも置けない馬鹿息子だ」
吐き捨てるように言うと凱斗は麗射から少し離れた下座に座っている息子を睨みつけた。
玲斗は色を失った顔で視線を避けるように頭を垂れた。
「いえ、あれはどうしようもなかったことで――」
麗射の言葉を手で制し、凱斗は首を振った。
「自らの命をかけて家臣を救うのが我々煉州の貴族の矜持だ。戦人 として大成しないのはわかっていたから、絵のうまい下級貴族の子弟を従者につけて好きな芸術の道に進ませてやったというのに、そこですらこの体たらく」
頬を赤く染めた父親の怒りの言は収まらない。
「母親を早くに亡くして、不憫だと甘やかしすぎた。わしの落ち度だ」
そういうと凱斗は大杯をぐいっとあおった。
「いえ、玲斗は助けようとしたのですが、流れがあまりにも早く、俺が羽交い締めして止めたんです。玲斗のせいでは――」
「理由はどうあれ、従者が死んだのだ。煉州の武人たるもの、どの面をさげて帰ってきたのかという話だ」
「あの濁流の中、玲斗が行っても命を無駄にするだけでした」
「うるさい、麗射。黙れ、もういい」
会話を聞いていたのだろう、俯いたまま叫んだ玲斗が小刻みに震えている。居並ぶ家臣らしき人々も杯を止め、気まずそうな顔で玲斗と凱斗をかわるがわるにうかがった。
しばらく無言の時間が過ぎた。ナイフが皿に当たる音や食べ物を飲み食いする音だけがやけに大きく広間に響く。
これは話題を変えなければ。麗射はおずおずと口を開いた。
「煉州は今どうなのですか、反乱軍は鎮圧されたのですか」
突然の質問に、凱斗はぎろりと赤い目を麗射に向ける。
「一度は鎮圧されかけた反乱軍どもだったが、山賊上がりのならず者を頭に据え、また気勢を上げ始めている」
「ならず者、それは氷炎とは別人なのですか」
氷炎の優しい顔つき、凛とした声が麗射の脳裏によみがえり、彼は思わず口を開いた。
「ああ、煽動者の氷炎は反乱軍を組織化することができなかったが、今度の首魁は農民、山人を巻き込んで本格的な軍に作り替えようとしているようだ」
「氷炎はどうしているんでしょう。反乱軍に戻れたのでしょうか。何か噂をご存知ありませんか」
「えらく氷炎のことが気になっているようだな」
凱斗の額に深い皺が寄る。
「おまえ、まさか反乱軍の一味か? それとも奴の信徒か」
「い、いえ」
反乱軍とは敵であろう貴族の館で思わず氷炎の安否を聞こうとした自分の浅はかさを悔やみながら麗射は口を閉じた。
「氷炎は民衆にいらぬ知恵をつけて、反乱の原因を作った大うつけだ。山がちで、細々と痩せた畑で芋や高黍を作り獣を狩って暮らすしかないこの貧しい煉州が、他の国から攻められないのは我々貴族が規律を作り、強固な武力で守っているからだ。命をかけて守護するものが豪華な生活をするのは当たり前。守られるものが我々と平等な生活を叫ぶのは身の程知らずというものだ」
氷炎からはもっと悲惨な話を聞いている。麗射は思わず声を上げた。
「しかし、狩ったものもほとんど税として取られ、山菜や雑穀を煮詰めた粥で糊口をしのいでいると――」
「真珠の都は言論の統制が無くて皆好き勝手なことをほざいているらしいがここに暮らしてもいないものが、さも見てきたように語るのは止めてほしいものだな」
気が付くとテーブルについている皆が再び声を潜めてじっと凱斗と麗射の方を見ている。麗射の方に向けられる目は総じて冷ややかだった。
反乱軍の話題はもう沢山だとばかりに凱斗は口をへの字にして黙りこくっていたが、ふと牙蘭の指に目を止めた。そこには星の意匠の入った太い銀の指輪が光っていた。
「お主、弓を引くのか」
「は、拙 いながら」
筋肉の盛り上がった大きな身体をすぼめ、牙蘭は会釈をした。
「銀の公子の従者ともなれば、弓だけではなく武芸の腕は相当であろう。皆そろそろ飲み食いには飽き飽きしているころだ。どうだ、我が館の武人と勝負してもらえまいか」
「私でよろしければお相手を務めさせていただきます」
牙蘭の言葉に、静まり返っていた場が生き返ったかのようにざわめき始めた。人々は我を指名しろとばかり席から半分腰をあげて凱斗をじっと見つめた。
「それでは騎剛 」
「はっ」
声と共に満面の笑みを浮かべて立ち上がったのは大きな牙蘭より一回りも大きい、煉州には珍しい銀茶色の短い髪と光沢のある浅黒い肌の男であった。
「彼は槍の名手だが、武芸ならなんでも一通りこなす。お主の武器はなんとする」
「それでは槍で」
「強がらなくても良い、わしは槍の師範だ。わしが短剣で、お前が槍でも構わんぞ」
騎剛は薄笑いを浮かべながら牙蘭の方を向いた。
「お気遣い痛み入ります。私も槍を得意としております、お互い槍で勝負いたしましょう」
顔色一つ変えずに答えると、牙蘭は目の前の大杯を一気に飲み干した。
「宴席を移すぞ」
凱斗の宣言に、場は一気に盛り上がった。
使用人部屋に帰った麗射と牙蘭は床にひかれた柔らかいマットの上で、とろけるように眠りに落ちた。
「麗射様、牙蘭様」
二人を起こしたのは、ガラスの器の中にろうそくを入れた灯りを持った煌露だった。いつしか日は沈み、あたりは暗くなっている。もともと目鼻立ちのはっきりした煌露の顔だが、灯の作る陰影がさらに身体の線の美しさも際立たせていた。引き締まってはいるが肉感的な肢体が炎のゆらめきで妖しく浮き上がる。麗射の背後で牙蘭の息を飲む声が聞こえた。
「大旦那様が、お二人を酒宴に招かれています。どうぞ本殿においでください」
「玲斗は俺たち平民と同席するのを嫌がっているんじゃないのか」
「酒宴の主催は大旦那様です。坊ちゃまは口出しができません。大旦那様は生粋の武人で時間を無駄にすることがお嫌いですのでお急ぎください」
二人は今まで袖を通したこともないような絹の礼服に着替えされられると、追い立てられるように大広間に案内された。
広間ではすでに酒宴が始まっていた。二人が来たことに気が付いた玲斗が、苦々し気な表情で麗射を睨みつけた。
細長いテーブルの一番の上座に座っていた、玲斗に面立ちの似た初老の男が二人を迎え入れるように手を広げ、肩までの金髪を光らせて立ち上がった。
「私は玲斗の父の
肩から腹部にかけて逆三角形、筋骨隆々としており、隙のないまなざしはいかにも武人である。
麗射達は慌てて頭を下げた。
「公子は、公子はご無事ですか?」礼もそこそこに牙蘭が声を上げる。
「ああ、近隣一番の名医を呼び、金に糸目を付けず薬湯を調合させた。こんこんと寝ておられたようだが、さきほど目を覚まされた様子だ」
「ああ、御差配ありがとうございました」
それさえ聞けば十分とばかり、牙蘭は深々と一礼すると再び物言わぬ男に戻った。
人々が座る長いテーブルには真っ白な布が引かれ、武骨だが明るい光を湛えるランプが一定間隔で置かれている。テーブルの上には何種類もの大皿がずらりと並んでいるが、目を引くのはいかにもそのまま焼きましたとばかりに原型を残した鳥獣の丸焼きだった。山がちな煉州は狩猟が盛んである、この肉も野生の獣をとってきたものだろう。飢えと口喝との戦いが続いた砂漠行、目の前にふんだんに置かれた飲み物と、湯気とともに漂う野趣あふれる香ばしい香りは、麗射の本能を否応なく刺激した。
居並ぶ人々はみな手にナイフとフォークを持ち、好きに目の前の料理を取っている。時には細長い卓の端っこまで好みの料理を漁りに立ち上がるものもいた。
「礼儀は必要ない、煉州特産の野牛だ。自由に食べてくれ」
そういうと凱斗は剣のように太いナイフをひらめかせ目の前の大きな肉と、丸のままの野菜を豪快に切り取って自らの皿に入れた。切り取られた肉は柔らかく歪み、淡紅色の断面から肉汁が溢れる。美術工芸院では肉と言えば鶏肉が主であり、数年ぶりとなるまともな牛肉料理に思わず麗射の喉がなった。
「煉州は平野が少ないが、低い山に住む野生の牛たちは肉が鍛え上げられて、噛めば噛むほど味が出て来る一級品だ。南方で産出されるこの塩も絶品だぞ」
テーブルの上にはハンマーで粉砕された薄桃色の岩塩が乗っており、凱斗はそれを手でつまむと無造作に肉の上にかけた。
使用人たちがここに座れとばかり玲斗の父の横の椅子を引く。
麗射達がテーブルに着くと、凱斗は肉汁を飛び散らせながら豪快に大きな肉の塊を切り出して客人達の皿の真ん中にどさりと乗せた。
テーブルの上には果物も肉もほぼ丸ごとが乗せられている。
きっと美術工芸院の食堂であれば、食材を見栄え良く繊細に盛り付けるところなのであろうが、ここはよくも悪くも豪快であった。
「息子の命を助けてもらったようで、心から礼を言う」
凱斗は麗射に酒を勧めながら頭を下げた。
「どうにもできの悪い息子で、申し訳ない。仲間を見殺しにしておめおめ実家の土を踏めるとは、煉州貴族の風上にも置けない馬鹿息子だ」
吐き捨てるように言うと凱斗は麗射から少し離れた下座に座っている息子を睨みつけた。
玲斗は色を失った顔で視線を避けるように頭を垂れた。
「いえ、あれはどうしようもなかったことで――」
麗射の言葉を手で制し、凱斗は首を振った。
「自らの命をかけて家臣を救うのが我々煉州の貴族の矜持だ。
頬を赤く染めた父親の怒りの言は収まらない。
「母親を早くに亡くして、不憫だと甘やかしすぎた。わしの落ち度だ」
そういうと凱斗は大杯をぐいっとあおった。
「いえ、玲斗は助けようとしたのですが、流れがあまりにも早く、俺が羽交い締めして止めたんです。玲斗のせいでは――」
「理由はどうあれ、従者が死んだのだ。煉州の武人たるもの、どの面をさげて帰ってきたのかという話だ」
「あの濁流の中、玲斗が行っても命を無駄にするだけでした」
「うるさい、麗射。黙れ、もういい」
会話を聞いていたのだろう、俯いたまま叫んだ玲斗が小刻みに震えている。居並ぶ家臣らしき人々も杯を止め、気まずそうな顔で玲斗と凱斗をかわるがわるにうかがった。
しばらく無言の時間が過ぎた。ナイフが皿に当たる音や食べ物を飲み食いする音だけがやけに大きく広間に響く。
これは話題を変えなければ。麗射はおずおずと口を開いた。
「煉州は今どうなのですか、反乱軍は鎮圧されたのですか」
突然の質問に、凱斗はぎろりと赤い目を麗射に向ける。
「一度は鎮圧されかけた反乱軍どもだったが、山賊上がりのならず者を頭に据え、また気勢を上げ始めている」
「ならず者、それは氷炎とは別人なのですか」
氷炎の優しい顔つき、凛とした声が麗射の脳裏によみがえり、彼は思わず口を開いた。
「ああ、煽動者の氷炎は反乱軍を組織化することができなかったが、今度の首魁は農民、山人を巻き込んで本格的な軍に作り替えようとしているようだ」
「氷炎はどうしているんでしょう。反乱軍に戻れたのでしょうか。何か噂をご存知ありませんか」
「えらく氷炎のことが気になっているようだな」
凱斗の額に深い皺が寄る。
「おまえ、まさか反乱軍の一味か? それとも奴の信徒か」
「い、いえ」
反乱軍とは敵であろう貴族の館で思わず氷炎の安否を聞こうとした自分の浅はかさを悔やみながら麗射は口を閉じた。
「氷炎は民衆にいらぬ知恵をつけて、反乱の原因を作った大うつけだ。山がちで、細々と痩せた畑で芋や高黍を作り獣を狩って暮らすしかないこの貧しい煉州が、他の国から攻められないのは我々貴族が規律を作り、強固な武力で守っているからだ。命をかけて守護するものが豪華な生活をするのは当たり前。守られるものが我々と平等な生活を叫ぶのは身の程知らずというものだ」
氷炎からはもっと悲惨な話を聞いている。麗射は思わず声を上げた。
「しかし、狩ったものもほとんど税として取られ、山菜や雑穀を煮詰めた粥で糊口をしのいでいると――」
「真珠の都は言論の統制が無くて皆好き勝手なことをほざいているらしいがここに暮らしてもいないものが、さも見てきたように語るのは止めてほしいものだな」
気が付くとテーブルについている皆が再び声を潜めてじっと凱斗と麗射の方を見ている。麗射の方に向けられる目は総じて冷ややかだった。
反乱軍の話題はもう沢山だとばかりに凱斗は口をへの字にして黙りこくっていたが、ふと牙蘭の指に目を止めた。そこには星の意匠の入った太い銀の指輪が光っていた。
「お主、弓を引くのか」
「は、
筋肉の盛り上がった大きな身体をすぼめ、牙蘭は会釈をした。
「銀の公子の従者ともなれば、弓だけではなく武芸の腕は相当であろう。皆そろそろ飲み食いには飽き飽きしているころだ。どうだ、我が館の武人と勝負してもらえまいか」
「私でよろしければお相手を務めさせていただきます」
牙蘭の言葉に、静まり返っていた場が生き返ったかのようにざわめき始めた。人々は我を指名しろとばかり席から半分腰をあげて凱斗をじっと見つめた。
「それでは
「はっ」
声と共に満面の笑みを浮かべて立ち上がったのは大きな牙蘭より一回りも大きい、煉州には珍しい銀茶色の短い髪と光沢のある浅黒い肌の男であった。
「彼は槍の名手だが、武芸ならなんでも一通りこなす。お主の武器はなんとする」
「それでは槍で」
「強がらなくても良い、わしは槍の師範だ。わしが短剣で、お前が槍でも構わんぞ」
騎剛は薄笑いを浮かべながら牙蘭の方を向いた。
「お気遣い痛み入ります。私も槍を得意としております、お互い槍で勝負いたしましょう」
顔色一つ変えずに答えると、牙蘭は目の前の大杯を一気に飲み干した。
「宴席を移すぞ」
凱斗の宣言に、場は一気に盛り上がった。