第24話 半日間の魔法

エピソード文字数 2,184文字

『透明化の魔法は成功したのラスト? なら、これからもずっと透明になっているってのは?』

 兵がいなくなり、僕らが動きだして初めにマクイからその質問をされた時、僕はどう思うかと、逆に質問した。

「もしそれが最適ならとっくにやっていたよねあの時。消費効率が悪いってこと?」

 頷くより前に説明する。

「一人なら別にいいんだけどな。3人だと一日持たない」

「そうか、うーん。ってか私は別に……」

 エイブリーも難しそうな顔をしている。

 光がようやく入る外用通路を抜けていた。闘技場の地下に一か所抜け道があったのである。まだ気づかれてい無さそうだったので、とんだくたびれ儲けだったが、僕らはそこを通っていた。

「それより」

 マクイとエイブリーの二人が、さっさと外に向かっていた僕の足が急に止まったのでなんだってな表情で見つめ返す。

 僕は黙って吹き抜けの窓の外を指さした。ギリギリ外を行き交う人の足が遠く彼方にみえる。

「……外ね。たしかにこのまま向かえば、どうなるかはわかりきってる。どうするつもりなの?」

 マクイに続いてエイブリーも、不安そうに心境を吐露する。

「私は別にあんたらについていく気は……どうせ一人でいても面白くない。でも、やっぱり、殺されるんだよな、多分きっと、いや確実に」

 エイブリーに続きマクイも顔を伏せる。

「じゃあなくって。見ろって」

 二人は僕のその言葉に首を傾げて、考える素振りをしていたが、段々とアホを見る顔に。

「あのさ」

「わかった、わかったあれだ。兵隊がいない!」

 おおお、っと若干ふざけている二人をおいて、僕はまたため息をついて、坂になっている地下通路を上った。ちょおっと二人がその後を追い、おいついて、手を掴まれる。

「まってまってまって! いくらなんでも、私達あれだよ? うーん、なんていっていいかわからないけど、別に悪い事なにもしてないし、いやでも! 一応あれだ。お尋ね者?」

 疑問形で人の行く手を阻むマクイ。

「あのな。とにかく、俺はそこまで馬鹿じゃない。まあ信用しろとは言わないけど、どっちみち、ここは闘技場跡地だとばれた以上、また兵がやってきて、取り壊される」

 そりゃそうだけど、と難しい顔をするマクイと、さっきからずっと話に乗ったり腑に落ちない顔をして足を止めたりするエイブリー。忙しない二人を置いてやはりまた先へ進む。そして、もう昼の明かりが見えていた。場所は正直わからないが、人通りの多そうな露店通りの音色が響いていた。なら、きっとその付近の空き家の地下通路とかだろう。

 もう一歩で外に出ようという時、後ろで身繕いをするがさごそした音。僕は心配の絶えない二人に、まあ見てなっと、先を急ぐ。

「ほら、きなって」

 マクイと、もう一人の魔喰いがおろおろと外に出る直前の階段で戸惑っている。

 僕はまたため息をついた。

「わかった。じゃあ、説明する」

 二人が顔をあげてきょとんとする。僕は道を開けるようにして、

「ここはただの空き家に繋がる通路だよ。路になっているところの出入り口に、模造の家を建てただけだろう。じゃあ、さっきから二人がずっと疑問に思っている事の答えだ。そもそも、なんであの追い詰められた時、開けていないはずの横穴が開いていたと嘘の伝聞で兵が散ったか。まず僕は、幻影の魔法なら何でも自由自在だ。相手がバグ石を纏っているなら、影響外のところで、魔法を使えばいい。だからまず、二人に幻影をみせた」

 え、と驚くエイブリー。マクイは、顎に手を当てたまま、考えている。

「二人に見せた幻影は、そのまま二人を見ている別の人々に伝染する。これが僕の使う、幻影魔法の一つ。広域幻影魔法。しかし、それでは外にいる兵にまで幻は及ばない。それで、何度か、現場の人間をシャッフルした。後はいつも通りの手筈だよ」

 わけがわからなそうに見つめるエイブリーと、唸るマクイ。

「バグ石は確かに魔法を通さない。しかし、あれは少量なら覆っている箇所以外にはあまり効かない。さすがに自分自身にバグ石が絡みついている様な場合は別だけれど、あいつらは、少なくとも、ある一点がお留守だった」

 ようやく、あっ、とマクイが声をあげた。

「そう、目さ。目を通して、幻を伝染させた」

 それにエイブリーも少し得心が言ったように眉をあげる。

 目には、あらゆる情報が映っている。人の目に映らないものはない。幻影にかけた人間の目を媒介して映る景色を連絡路に幻影を押し広げる魔法。それが、広域幻影魔法。

「三人分乗っけてあるから、もってせいぜい半日だ。少なくとも、透明になって街をこそこそ練り歩くよりは、全然いいと思う。だから言ったろ、もう国中の人間に幻影が入っている。その証拠に、彼らには、影が無い。問題ない」

 二人は多分、別々の思案で迷っていたが程なく、まいいかと声をはもらせて、階段を駆け上がった。

 凡そ半日。僕はその分水嶺を見極めて、最後にはこの地を去らなければならない。魔力が底をつくぎりぎりで出る。魔力は底をつくと、死ぬ。見極めを誤れば死ぬかもしれない。

 つまりまあ、忙しない日々の前の、ちょっとしたくだらない遊びである。

 この半日は。
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登場人物紹介

後々記載するにゃ

実は前に出した分を削除してしまったので再投稿にゃ

因みに吾輩は作中で喋る猫として登場するにゃ

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