第33話「文芸部の一番騒がしい日」
文字数 4,160文字
「終わったー!」
俺は書き終わったテキストファイルをPC上で上書保存する。
北志摩先生から課されていた宿題……部誌の原稿ノルマは終了した。
「終わってないわよ。土路はあたしの手書き原稿をパソコンで打ち直さなきゃならないんだから」
高酉がニヒヒと笑うように、俺に原稿の束を渡してくる。こいつ、仕事押し付けようとしてるな。
「PC貸してやるから、自分で打たないか? 社会に出たらPCスキルは必要だって言われてるだろ」
「いいのよあたしは。将来はアパレル系に行くんだから」
「あ、でも、アパレル系でもパソコン使うことあるよね」
厚木さんが絶妙のフォローを入れてくる。
「そうなの?」
「うん、それにデザインとかやってみたいってアリス言ってたじゃん。あれもパソコン使えた方がいいっていうよ」
「それなら、あたしパソコン覚える」
さすが厚木さんは高酉の扱いは慣れている。
「凛音姉さま、ここはこんな感じのレイアウトでいいですか?」
「そうね。部誌の場合、簡易製本でホチキス止めにするらしいから、ノドの部分、あ、この内側ね。ここは少し広めにとってほしいの」
「了解です。あと、ここなんですが……」
黒金がめずらしくおとなしいと思ったら、志士坂と出来上がった原稿のレイアウトを打ち合わせしているのか。
今回は黒金は原稿を書く必要がないが、手が空いているので部誌のレイアウト製作を頼んでいる。あいつ、意外とPCスキルは高かったのだ。
俺は、出来上がったテキストファイルをネット上の共有ドライブへとぶち込む。
俺の作業は終わったのでネットでも見回ることにした。私立校ともあって、校内にはインターネット回線が引かれているが便利だ。
我が校はネットリテラシーへの教育にも力を入れているので、各教室にはLAN端子と無線wifiが設置されている。
もちろん鍵付きなので特定のタブレットやノートPCにしかネットに繋げないが、多少のスキルがあればネットに繋げるのも簡単なことだ。
校内では、普段からPCに触れているものとの情報格差が、かなり出来上がってしまっていると言っていいだろう。
「そういえば涼々ちゃんて西中出身なのよね」
厚木さんが黒金に話しかけている。
「ええ、そうですよ」
「わたしも、あそこ出身なのよ。部活とかやってなかったから、あんまり後輩との交流はなかったけど。まあ、だからこそ涼々ちゃんの存在にも気づかなかったんだよね」
「あ、そうなんですか。あたしはバンジョウユウギ部に所属してましたから、先輩たちとの交流もあったんですよね」
「涼々、そのバンジョウユウギブって何をする部なの?」
興味深げに志士坂も話に加わってくる。
「そうですね。将棋とか囲碁とか、オセロとか、ああいうボードゲームで遊ぶ部ですね」
なるほど盤上の遊戯部ということか。
「へぇー面白そうね」
「涼々ちゃんは得意なボードゲームあるの?」
厚木さんが黒金へと質問する。
「オセロ好きですよ。あの白い石が全部黒にひっくり返る瞬間がたまらないですね」
「なんかおまえの性格出てそうだな」
「せんぱぁい。失礼ですよ!」
「涼々、部員は何人ぐらいたの?」
と、これは志士坂からの質問。
「えっと、ほとんど男子でしたけど、10人くらいですかねぇ」
「うふふ、逆ハーレムね。涼々ちゃん」
高酉が嬉しそうに、羨ましそうに微笑んだ。
「けど、半年くらいでやめちゃいました」
「なんで? 面白そうだし、練習とかないから楽そうじゃない?」
厚木さんが疑問を呈す。
「なんか部員同士がギスギスしてきてやめちゃったんですけどね」
「え、なんでなの? 涼々」
志士坂はお姉様ぶってはいるが、心がピュア過ぎて彼女の本質に気づけていないのだろう。
「あはは、なんか周りが勝手にあたしを巡って争いを始めてしまって」
「サークルクラッシャーかよ!」
思わずツッコんでしまった。
「涼々ちゃんは悪くないわ。悪いのは勘違いする男どもよ」
高酉がなんか、俺のことにらんでるんですけど……。
「まあ、涼々ちゃんかわいいからねぇ」
厚木さんはにっこにっこ顔で黒金を褒め称える。
「まりさぁ」
「アリスもかわいいよ」
「えへへ」
この偽百合が! というか、高酉って自己顕示欲が強すぎるんじゃね? まあ、そういうところも含めて、いずれこいつも攻略しなきゃならないんだろうな。
この攻略というのは恋愛対象としてではない。ラスボスを倒すという意味だ。
「あれ? 黒金と厚木さんが同じ中学ってことは、高酉もなんだよな?」
そういえば、と俺は気付く。
「当たり前よ。何言ってるの?」
「じゃあ、斉藤も同じ中学だから知り合いなんだよな? 教室ではそんな雰囲気ないけど」
そういえば、厚木さんと斉藤が話しているところって見たことがなかった。あの誰にでも気さくに話しかける彼女が、どうして斉藤とは話さないんだ?
「う、うん。そうだね。斉藤君とは、同じ中学だったけど、クラスが一緒になったことはないんだよ」
厚木さんの、どこもおかしくない返答。……だけど、俺はわずかな違和感を抱く。
ふと視線を高酉に向ける。俺が変なことを聞いたものだから、いつもなら俺をにらんでいるはず。
だが、彼女の視線は隣にいる厚木さんを見上げていた。その表情には不安が表れている。
どこもおかしくないのに、何か変であった。
「そういえば斉藤先輩って双子なんですよね?」
「え?」
そんな話は初耳だ。とはいえ、俺は2年になってからクラスメイトになったわけだから、知らなくても仕方がない。
だが、高酉の答えが即座にそれを否定した。
「いやいや、斉藤君は一人っ子だよ。なにいってるの?」
「でも、あたし見たんですよ。帰りの電車でたまたま斉藤先輩を見かけて、一緒の車両に乗り込んだ後に、反対方向の電車に乗る斉藤先輩の双子の方を」
「それ、いつの話?」
高酉がいぶかしげな顔で黒金に問いかける。
「えー、2週間くらい前ですかね」
「それ、絶対、見間違えだよ。ねぇ、アリス」
高酉が見上げた厚木さんの顔には苦笑いの表情が浮かぶ。
「う、うん。そうだね」
なにかおかしい。彼女は何かを隠そうとしているようにも思える。
ねえ、厚木さん、本当は斉藤のことを昔から知っているんじゃないの?
声には出せなかった。
「ねぇ、涼々の見たのって『どっぺるくん』じゃないの?」
それまで沈黙を保っていた志士坂がそう告げる。
「どっぺるくん? なんですか、凛音姉さまぁ」
「双子じゃないのに、あきらかに同じ人物が同じ場所に現れるって噂」
「あれ? あたし、もしかしたら聞いたことあるかも」
そう言い出したのは高酉。彼女はスマホを取り出して、何かを検索し始める。
「どっぺるくんって、ドッペルケンガーのあれか?」
俺が志士坂にそう聞き返すと、彼女は恐る恐る頷く。なんだよ、ちょっとホラーじみてきたじゃねえか。
「見つけた! これよね」
そう言って、スマホの画面を皆に見せるように掲げる高酉。それを読み上げるのは黒金だ。
「えーと、ある条件が揃うと自分とそっくりの人間が現れる。その状態で誰かに目撃されると、本物を消滅し、ニセモノと入れ替わる。そのニセモノの正体は悪魔であると。……せんぱぁい、こわいですぅ」
黒金のわざとらしい、あざとい台詞には惑わされない。
「だとしたら斉藤は悪魔と入れ替わってるってことだな。まあ、あんまりうちらには関係の無いことだ」
あいつが別人だろうが、俺らには何の影響もない。
「せんぱい、無視しないでくださいよぉ」
「それより『ある条件』ってなんなんだ?」
「むー」
俺は黒金を無視して高酉にそう聞く。
「知らない。そこまでは書いてないよ。このwiki」
「あたしが聞いたのはSNSで悪魔と友達登録することだって」
志士坂が答えてくれるが、どうにも胡散臭い内容だ。というか、悪魔ってなんだよ。
「なんだよ。一気に冷めるような内容だな。悪魔もSNSやってるのか? もっと魔法的な儀式とか異能的な空間とかないのか?」
「そうですよね。夜中の二時に何かおまじないするとか、鏡に向かって呪文を唱えるとか」
黒金が口元に手を当てて、そういう都市伝説にありがちなあるあるネタを挙げていく。
「でもさ、涼々の見た斉藤君って、ただの似た人かもね。『どっぺるくん』はあくまで都市伝説だし」
志士坂が盛り上がりかけた話を現実へと引き戻す。まあ、こいつが最初に都市伝説的な話を持ちだしたんだもんな。
「えーそうかなぁ?」
「そうよね。世の中には自分に似た人が3人はいるって言われるもの」
高酉も志士坂に同意する。
「まあ、そうだよな。似てるといっても、双子だけとは限らないし」
俺もそれに同意して、この話は終わるように思えた。
けど、おかしい。だって、あのムードメーカーの厚木さんが、この話にいっさい加わっていないのだから。
「ねえ、まりさぁ。どうしたのさっきから黙り込んで」
高酉が心配そうに厚木さんに視線を向ける。
「う、うん。なんでもない」
「まさか、厚木さん。悪魔と友達登録とかしてないよね?」
俺は冗談のつもりで言っただけだった。
「知らない……あたしは悪魔なんか知らない」
厚木さんの表情は、俺が見たことのない不安げな顔をしていた。
◆次回予告
次からは、いよいよ第四章。
あらたなイジメが問題になり、主人公の知略がそれを打ち砕く展開。
第四章 知恵の小悪魔
第34話「嵐の予感なのです」をご期待ください。
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俺は書き終わったテキストファイルをPC上で上書保存する。
北志摩先生から課されていた宿題……部誌の原稿ノルマは終了した。
「終わってないわよ。土路はあたしの手書き原稿をパソコンで打ち直さなきゃならないんだから」
高酉がニヒヒと笑うように、俺に原稿の束を渡してくる。こいつ、仕事押し付けようとしてるな。
「PC貸してやるから、自分で打たないか? 社会に出たらPCスキルは必要だって言われてるだろ」
「いいのよあたしは。将来はアパレル系に行くんだから」
「あ、でも、アパレル系でもパソコン使うことあるよね」
厚木さんが絶妙のフォローを入れてくる。
「そうなの?」
「うん、それにデザインとかやってみたいってアリス言ってたじゃん。あれもパソコン使えた方がいいっていうよ」
「それなら、あたしパソコン覚える」
さすが厚木さんは高酉の扱いは慣れている。
「凛音姉さま、ここはこんな感じのレイアウトでいいですか?」
「そうね。部誌の場合、簡易製本でホチキス止めにするらしいから、ノドの部分、あ、この内側ね。ここは少し広めにとってほしいの」
「了解です。あと、ここなんですが……」
黒金がめずらしくおとなしいと思ったら、志士坂と出来上がった原稿のレイアウトを打ち合わせしているのか。
今回は黒金は原稿を書く必要がないが、手が空いているので部誌のレイアウト製作を頼んでいる。あいつ、意外とPCスキルは高かったのだ。
俺は、出来上がったテキストファイルをネット上の共有ドライブへとぶち込む。
俺の作業は終わったのでネットでも見回ることにした。私立校ともあって、校内にはインターネット回線が引かれているが便利だ。
我が校はネットリテラシーへの教育にも力を入れているので、各教室にはLAN端子と無線wifiが設置されている。
もちろん鍵付きなので特定のタブレットやノートPCにしかネットに繋げないが、多少のスキルがあればネットに繋げるのも簡単なことだ。
校内では、普段からPCに触れているものとの情報格差が、かなり出来上がってしまっていると言っていいだろう。
「そういえば涼々ちゃんて西中出身なのよね」
厚木さんが黒金に話しかけている。
「ええ、そうですよ」
「わたしも、あそこ出身なのよ。部活とかやってなかったから、あんまり後輩との交流はなかったけど。まあ、だからこそ涼々ちゃんの存在にも気づかなかったんだよね」
「あ、そうなんですか。あたしはバンジョウユウギ部に所属してましたから、先輩たちとの交流もあったんですよね」
「涼々、そのバンジョウユウギブって何をする部なの?」
興味深げに志士坂も話に加わってくる。
「そうですね。将棋とか囲碁とか、オセロとか、ああいうボードゲームで遊ぶ部ですね」
なるほど盤上の遊戯部ということか。
「へぇー面白そうね」
「涼々ちゃんは得意なボードゲームあるの?」
厚木さんが黒金へと質問する。
「オセロ好きですよ。あの白い石が全部黒にひっくり返る瞬間がたまらないですね」
「なんかおまえの性格出てそうだな」
「せんぱぁい。失礼ですよ!」
「涼々、部員は何人ぐらいたの?」
と、これは志士坂からの質問。
「えっと、ほとんど男子でしたけど、10人くらいですかねぇ」
「うふふ、逆ハーレムね。涼々ちゃん」
高酉が嬉しそうに、羨ましそうに微笑んだ。
「けど、半年くらいでやめちゃいました」
「なんで? 面白そうだし、練習とかないから楽そうじゃない?」
厚木さんが疑問を呈す。
「なんか部員同士がギスギスしてきてやめちゃったんですけどね」
「え、なんでなの? 涼々」
志士坂はお姉様ぶってはいるが、心がピュア過ぎて彼女の本質に気づけていないのだろう。
「あはは、なんか周りが勝手にあたしを巡って争いを始めてしまって」
「サークルクラッシャーかよ!」
思わずツッコんでしまった。
「涼々ちゃんは悪くないわ。悪いのは勘違いする男どもよ」
高酉がなんか、俺のことにらんでるんですけど……。
「まあ、涼々ちゃんかわいいからねぇ」
厚木さんはにっこにっこ顔で黒金を褒め称える。
「まりさぁ」
「アリスもかわいいよ」
「えへへ」
この偽百合が! というか、高酉って自己顕示欲が強すぎるんじゃね? まあ、そういうところも含めて、いずれこいつも攻略しなきゃならないんだろうな。
この攻略というのは恋愛対象としてではない。ラスボスを倒すという意味だ。
「あれ? 黒金と厚木さんが同じ中学ってことは、高酉もなんだよな?」
そういえば、と俺は気付く。
「当たり前よ。何言ってるの?」
「じゃあ、斉藤も同じ中学だから知り合いなんだよな? 教室ではそんな雰囲気ないけど」
そういえば、厚木さんと斉藤が話しているところって見たことがなかった。あの誰にでも気さくに話しかける彼女が、どうして斉藤とは話さないんだ?
「う、うん。そうだね。斉藤君とは、同じ中学だったけど、クラスが一緒になったことはないんだよ」
厚木さんの、どこもおかしくない返答。……だけど、俺はわずかな違和感を抱く。
ふと視線を高酉に向ける。俺が変なことを聞いたものだから、いつもなら俺をにらんでいるはず。
だが、彼女の視線は隣にいる厚木さんを見上げていた。その表情には不安が表れている。
どこもおかしくないのに、何か変であった。
「そういえば斉藤先輩って双子なんですよね?」
「え?」
そんな話は初耳だ。とはいえ、俺は2年になってからクラスメイトになったわけだから、知らなくても仕方がない。
だが、高酉の答えが即座にそれを否定した。
「いやいや、斉藤君は一人っ子だよ。なにいってるの?」
「でも、あたし見たんですよ。帰りの電車でたまたま斉藤先輩を見かけて、一緒の車両に乗り込んだ後に、反対方向の電車に乗る斉藤先輩の双子の方を」
「それ、いつの話?」
高酉がいぶかしげな顔で黒金に問いかける。
「えー、2週間くらい前ですかね」
「それ、絶対、見間違えだよ。ねぇ、アリス」
高酉が見上げた厚木さんの顔には苦笑いの表情が浮かぶ。
「う、うん。そうだね」
なにかおかしい。彼女は何かを隠そうとしているようにも思える。
ねえ、厚木さん、本当は斉藤のことを昔から知っているんじゃないの?
声には出せなかった。
「ねぇ、涼々の見たのって『どっぺるくん』じゃないの?」
それまで沈黙を保っていた志士坂がそう告げる。
「どっぺるくん? なんですか、凛音姉さまぁ」
「双子じゃないのに、あきらかに同じ人物が同じ場所に現れるって噂」
「あれ? あたし、もしかしたら聞いたことあるかも」
そう言い出したのは高酉。彼女はスマホを取り出して、何かを検索し始める。
「どっぺるくんって、ドッペルケンガーのあれか?」
俺が志士坂にそう聞き返すと、彼女は恐る恐る頷く。なんだよ、ちょっとホラーじみてきたじゃねえか。
「見つけた! これよね」
そう言って、スマホの画面を皆に見せるように掲げる高酉。それを読み上げるのは黒金だ。
「えーと、ある条件が揃うと自分とそっくりの人間が現れる。その状態で誰かに目撃されると、本物を消滅し、ニセモノと入れ替わる。そのニセモノの正体は悪魔であると。……せんぱぁい、こわいですぅ」
黒金のわざとらしい、あざとい台詞には惑わされない。
「だとしたら斉藤は悪魔と入れ替わってるってことだな。まあ、あんまりうちらには関係の無いことだ」
あいつが別人だろうが、俺らには何の影響もない。
「せんぱい、無視しないでくださいよぉ」
「それより『ある条件』ってなんなんだ?」
「むー」
俺は黒金を無視して高酉にそう聞く。
「知らない。そこまでは書いてないよ。このwiki」
「あたしが聞いたのはSNSで悪魔と友達登録することだって」
志士坂が答えてくれるが、どうにも胡散臭い内容だ。というか、悪魔ってなんだよ。
「なんだよ。一気に冷めるような内容だな。悪魔もSNSやってるのか? もっと魔法的な儀式とか異能的な空間とかないのか?」
「そうですよね。夜中の二時に何かおまじないするとか、鏡に向かって呪文を唱えるとか」
黒金が口元に手を当てて、そういう都市伝説にありがちなあるあるネタを挙げていく。
「でもさ、涼々の見た斉藤君って、ただの似た人かもね。『どっぺるくん』はあくまで都市伝説だし」
志士坂が盛り上がりかけた話を現実へと引き戻す。まあ、こいつが最初に都市伝説的な話を持ちだしたんだもんな。
「えーそうかなぁ?」
「そうよね。世の中には自分に似た人が3人はいるって言われるもの」
高酉も志士坂に同意する。
「まあ、そうだよな。似てるといっても、双子だけとは限らないし」
俺もそれに同意して、この話は終わるように思えた。
けど、おかしい。だって、あのムードメーカーの厚木さんが、この話にいっさい加わっていないのだから。
「ねえ、まりさぁ。どうしたのさっきから黙り込んで」
高酉が心配そうに厚木さんに視線を向ける。
「う、うん。なんでもない」
「まさか、厚木さん。悪魔と友達登録とかしてないよね?」
俺は冗談のつもりで言っただけだった。
「知らない……あたしは悪魔なんか知らない」
厚木さんの表情は、俺が見たことのない不安げな顔をしていた。
◆次回予告
次からは、いよいよ第四章。
あらたなイジメが問題になり、主人公の知略がそれを打ち砕く展開。
第四章 知恵の小悪魔
第34話「嵐の予感なのです」をご期待ください。
******************
「続きが読みたい」「エタるなよ!」「作品を応援したい」
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