第1話 ソーダバーを噛み砕く
文字数 732文字
おれが文芸部の部室の冷蔵庫を開けると冷凍庫にソーダバーが二本入っていた。
今は放課後。部室には誰もいない。
おれはそっと冷蔵庫の冷凍庫から、ソーダバーを一本取り出す。
開封し、木で出来た棒を掴んで、齧る。
「納涼だぜ!」
おれが舌鼓を打っていると、
「なぁにが納涼だよ、青島ぁ。このアイス泥棒」
振り向くと、同じ一年生で文芸部の月天だった。
「アイスを愛すにも人生は短かすぎる。だから恋せよ学生って、な」
と、おれ。
「命短し恋せよ乙女的な物言いをしても無駄だ。ソーダバー代を払え、青島」
と、月天。
「えー?」
「えー、じゃないぜ、ったく」
おれが手に持っているソーダバーが解け出しそうだったので、またひと齧り。
「もう、いいよ。食っちまえよ、青島」
「かたじけない」
「うっせ。早く食え」
おれががつがつ食べ終え、部室の隅にある木の棒をダストシュートに放り投げると、木の棒は一発でダストシュートに入る。
「スリーポイント、成功!」
「ハッ! 嬉しそうだな、青島」
そう言って月天も冷蔵庫を漁って、冷凍庫からソーダバーのアイスを取り出す。
おれは月天に訊く。
「月天、ソーダバーが二本冷凍庫に入ってたのは、一本、おれの分だったんだろ?」
ソーダバーをガリガリ齧りながら、月天が返す。
「ああ、まあな。意外と夏は短いからな。学生の夏なんてのはその最たるものだろうよ。アイスを愛するには人生が短すぎるように、よぉ。先輩たちを待つ間に一緒に食おうとしてたのはマジな話だわな」
「せんきゅ、月天」
「うっせ、青島。やっぱ気が変わったわ。ソーダバー代を出せ」
「えー? そこに戻るのかよ」
「アイスの寿命が短い程度には、おれの気も短いってわけ」
「上手いこと言いやがって」
こうして、おれたちの日常は続く。
今は放課後。部室には誰もいない。
おれはそっと冷蔵庫の冷凍庫から、ソーダバーを一本取り出す。
開封し、木で出来た棒を掴んで、齧る。
「納涼だぜ!」
おれが舌鼓を打っていると、
「なぁにが納涼だよ、青島ぁ。このアイス泥棒」
振り向くと、同じ一年生で文芸部の月天だった。
「アイスを愛すにも人生は短かすぎる。だから恋せよ学生って、な」
と、おれ。
「命短し恋せよ乙女的な物言いをしても無駄だ。ソーダバー代を払え、青島」
と、月天。
「えー?」
「えー、じゃないぜ、ったく」
おれが手に持っているソーダバーが解け出しそうだったので、またひと齧り。
「もう、いいよ。食っちまえよ、青島」
「かたじけない」
「うっせ。早く食え」
おれががつがつ食べ終え、部室の隅にある木の棒をダストシュートに放り投げると、木の棒は一発でダストシュートに入る。
「スリーポイント、成功!」
「ハッ! 嬉しそうだな、青島」
そう言って月天も冷蔵庫を漁って、冷凍庫からソーダバーのアイスを取り出す。
おれは月天に訊く。
「月天、ソーダバーが二本冷凍庫に入ってたのは、一本、おれの分だったんだろ?」
ソーダバーをガリガリ齧りながら、月天が返す。
「ああ、まあな。意外と夏は短いからな。学生の夏なんてのはその最たるものだろうよ。アイスを愛するには人生が短すぎるように、よぉ。先輩たちを待つ間に一緒に食おうとしてたのはマジな話だわな」
「せんきゅ、月天」
「うっせ、青島。やっぱ気が変わったわ。ソーダバー代を出せ」
「えー? そこに戻るのかよ」
「アイスの寿命が短い程度には、おれの気も短いってわけ」
「上手いこと言いやがって」
こうして、おれたちの日常は続く。