第10話 リコリス救出～ナンテン教授スキル炸裂～
文字数 1,454文字
ナンテン教授の誘導で難なく海を進み、箱庭地区付近の沖に着いた一行。
ナンテン教授の『海上水路（チョーク・ポイント）』は誰にも見つかることなくどんな海も越えられるスキルなのだ。
（アールグレイが通信端末に送ってくれる上空からの地図を見ながら）
近道するとなると、目的地まで樹海やら獣道やら……（苦笑）
任せて、突貫工事で道路作っちゃいますよ！
（大声で）開発許可っ
（人差し指を口に当てて）シナモン、住民に気づかれる、声のボリューム落として。
あ、そうだった、（小声で）ソリューション、間違った、開発許可（ファンタジスタ）……
サイレント・ユンボで木々をなぎ倒し簡易的な農道を作るシナモン。
小道作ったのはいいけど、無数の監視カメラを避けて行けるかなぁ。
シナモン君のスキル、とても素晴らしい。
それでは目的地まで私の『緩衝地帯（バッファー・ゾーン）』発動しましょう。
我々はステルスモードになりますよ。
すっごーい！ これ外から私達見えなくなるのね、しかもスイスイ行ける。
……カルダモン、大丈夫？
……大丈夫、船酔いにも慣れたぜ。やるな、おやっさん。
塀に囲まれた大きなお屋敷にたどりついた一行。
シナモンが今度は、サイレント・ダンプで『地上げ（ソリューション！）』発動。
塀を破壊し侵入、ナツメグが電気系統を切断しセキュリティーを無効化した。
みんなでこっそり大きな池のある日本庭園に忍び込む。
ね、あの子じゃない？ リコリスちゃん。綺麗な子。
サフラン先生の言ったとおり、蝶々が取り囲んでいる。
（飛び出して）おい、あんた、リコリスだろ？ 助けに来たぜ。
…………！！
驚き、ビクッとして身構えるリコリス。
隠れる蝶々。
私達怪しいものではありませーん。サフラン先生に頼まれて来たの。
（通信端末にサフラン先生を映す）
リコリス、大きくなったのね、無事でいる？
白い蝶が私の所まで飛んで来たの。リコリスを助けて欲しいって。
そこにいる子達は信頼できる私の仲間よ。
そこから脱出して私のところに来て。
サフランお姉ちゃん、生きていたんだ、よかった……
（涙をこぼすリコリス）
（グッとくるね。甘草町の女は儚げな美人だって噂は本当だったんだ。
薬の精製技術も持っているし、これは上級州国民が囲う訳だわ）
突然のことで驚かれたと思うけど、あまり時間がありませんので。
外の世界に出よう？ 自由になろう？
私がここでのしがらみを縁切りしてあげようか？
その前に、おやっさん、人事異動（カースト・リバース）ってのはどんなスキルなんだ？
その名の通り、身分階級（カースト）をひっくり返すんだよ。
カースト制や差別なんてものは悪魔軍が仕込んだ悪しき慣習だからね。
奴らの手口はいつでも巧妙なんだ。
おやっさん、それをこの地域全体に発動してくれ。
おやおや、カルダモン君は人使いが荒いね。
（笑いながら楽しそうに）それでは４年ぶりにやりますか。
……大天使のご加護を我に、神の前に我らは等しく平等、箱庭地区甘草町を対象に『人事異動（カースト・リバース）』本日付けで発令！
（カルダモンって頭の回転が速くて仕切りも上手いんだよな。さすがリーダー。やっぱりユーカリの目は節穴）
（あ……足元がグラグラする、めまいがして気持ち悪い）
そのとき蝶々が舞い戻ってきてリコリスを囲む。
深呼吸して落ち着くリコリス。
行きます。蝶たちが後押ししてくれている。
サフランお姉ちゃんのところに連れて行ってください。
行こう、リコリスちゃん。絶対に後ろは振り返らないでね。
（リコリスの肩を抱き、緩衝地帯（バッファー・ゾーン）へと誘導する）
