第27話 人形の館【カノンView】
文字数 2,482文字
───人形の泣き声が聞こえますの。
2つのお屋敷。泣いている人形 がいるのはどちら? あたくしは、無意識に洋館に足を進める。苦しんでますの。何故? それを確かめなくてはならない。目の前には、蔦塀が邪魔をする。
「邪魔、なさらないでくださいまし! 」
剣幕に圧されるように、蔦塀が道を開いていく。前しか見えず、人形たちの泣き声に半分我を忘れていたあたくしは、いつも抱きしているはずのアンジェリカさまを落としてしまったことに気づけなかったんですの。
館の前に来ると、扉が開きます。まるで、呼ばれているかのよう。進むと……。
人形と人間の争ったあとが、ところ狭しと。
ここにいる人形 たちからはなにも感じません。殺気を感じて見上げると……。
ギラギラとこちらをみる人形 たち。
見覚えのある黒い影を背負いながら……。どうしたら救えますの? 泣いている声しか聞こえませんわ。手を伸ばすと、人形たちがあたくしを壊そうと襲いかかってきましたの。
……割れた陶磁器で、人形ときがついたようで、動きがパッタリと止まりました。
◇◆◇◆◇◆◇
嗚呼、人間さまたちがやってくる……。お願いですから、もう、この人形 たちを傷つけないで。なんて無力、あたくしだけではどうにもならないだなんて……。
「早く……早く、お逃げなさいな。我を忘れたこの人形 たちに敵うはず、ありませんのよ」
おかしいですわね……。こんなになってまでも、人形から人間さまを守ってしまうだなんて。人間さまから人形も守る。あたくしの可愛さが台無しですわ。
◇◆◇◆◇◆◇◆
意識が薄くなり始めたとき、扉が開くおとと少し騒がしい感じがしましたの。また? また脅かしにいらしたの? 守らなきゃ……ほら、また泣いていますわ。
「ぎゃああぁぁぁぁぁぁぁああぁぁぁぁあぁぁ!!!!! 」
誰かが落ちてきた? 嗚呼! そこは! やめて! それ以上、壊さないで!!
「ひ、ひぃぃぃぃぃぃぃ!!!!!!! 」
近寄ると叫ばれた。……嗚呼、可愛い顔もぼろぼろ? でも今は……。
「……やめ……て……この子……タチ……をキズ……つけナイ……で……!!!」
ウサギの耳の男性が落ちた場所、下敷きにしてしまっていたのは、人形。立ち上がるも、人形か人間かもわからずパニックになって。動かないで……お願いだから……。
「カノン?! あなた、カノンなの?! 」
知らない声があたくしを呼ぶ。だれですの?
「……なん…デ……あたく……シ……の名前……?」
声のする上をみあげると、絶滅したはずの竜属の女性と、ラミアとメデューサの合成獣 の女性がこちらをみていましたの。今にも、あの人形 たちに落とされそうな体勢で。あの二人なら、この高さはものともしないでしょうね。二人が耐えきれず、落ちた瞬間。
再び、扉が開かれた。
二人はまっ逆さまに落ちましたけれど、駆け寄った男性と、さっきの男性が守ったようですわね。あまり荒らさないで頂きたいものですわ。
「……ふふふ。ざまあないわねぇ? カノン? 」
聞きなれた声。あたくしと同じ、プライドの塊で生存本能なんて、欠片もない声。
胸を張る白雪姫さま。横には赤ずきんさまがしがみつき、後ろではアリスさまがきょろきょろしていましたの。
「……また……会え……ました……ワネ……でも……ちょっト……遅かった……デスワ……」
「ちょっと! こんなとこでくたばってもらったら困るのよ! 決着、ついてないんだから!
あなたを壊すのはあたし! 」
嗚呼……言い返したいのに、うまく言い返せませんの……。
「おバカ……デスワ……ねぇ……」
もう考えられないのに、人形たちにがあたくしを支えて立ち上がらせましたの。
『アタシタチ、ステラレタノ! ミンナミンナオナジ! コイツラモオナジ! スグステルンダワ! 』
人形たちが囁く、悪魔の囁き。
「棄て………ラレタ……。あたく……シ……も……棄て……棄て……ラレタ!!!! 」
……そう、あたくしも『買い手』に飽きられて棄てられた。お兄ちゃまと離れ離れにされた。嗚呼、人間さまが憎い憎い憎い憎い憎い!!!
「な! 何操られてるのよ! 」
ウルサイですわね。さっさと出ていって下さいまし!
「攻撃出来ないんじゃどうしようもないわ! 安全な場所はないの!!? リーゼを安全な場所に!! 」
ウルサイですわ。なんで、なんで、なんで出ていきませんの!
「……おい! ラプンツェル! おまえの持ってるそれはなんだ?! 」
「そうよ! これ! カノン! 受け取って! 」
あたくしに向かって何か……。あれは……お姉ちゃまからの……。ぶつかった瞬間、真っ赤な光の閃光が包み込む。光がゆっくりと収束した瞬間。
あたくしは完全に意識を手放した───。
◇◆◇◆◇◆◇
目が覚めると、あたくしの部屋。
「……え? 」
夢、でしたの?
「……架音 。おかえり」
あたくしの枕元には玖音 お兄ちゃまがいましたの。優しく撫でて下さりました。お兄ちゃまと再開出来たのに、なんて体たらく。
「あ、体……」
「前回のことがあったから事前にね。もう、あまり無茶しないでね」
優しく優しく、代わらず笑いかけてくれる。
「……架音、行っておいで。本当は一緒にいたいんでしょ? 僕はここで待ってる」
涙が止めどなく流れましたの。
「違いましてよ? あの方々があたくしのことが必要なんですの。仕方ないからついていってあげますわ。架音ちゃまはとぉ~っても親切なんですのよ」
お兄ちゃまは何も言わず、また撫でて下さいました。
あたくしは窓に歩みより、窓を全開に致しました。
「お兄ちゃま、行って参りますわ」
真打ちは遅れて現れましてよ? おーほほほほほほ!!!!!───。
2つのお屋敷。泣いている
「邪魔、なさらないでくださいまし! 」
剣幕に圧されるように、蔦塀が道を開いていく。前しか見えず、人形たちの泣き声に半分我を忘れていたあたくしは、いつも抱きしているはずのアンジェリカさまを落としてしまったことに気づけなかったんですの。
館の前に来ると、扉が開きます。まるで、呼ばれているかのよう。進むと……。
人形と人間の争ったあとが、ところ狭しと。
ここにいる
ギラギラとこちらをみる
見覚えのある黒い影を背負いながら……。どうしたら救えますの? 泣いている声しか聞こえませんわ。手を伸ばすと、人形たちがあたくしを壊そうと襲いかかってきましたの。
……割れた陶磁器で、人形ときがついたようで、動きがパッタリと止まりました。
◇◆◇◆◇◆◇
嗚呼、人間さまたちがやってくる……。お願いですから、もう、この
「早く……早く、お逃げなさいな。我を忘れたこの
おかしいですわね……。こんなになってまでも、人形から人間さまを守ってしまうだなんて。人間さまから人形も守る。あたくしの可愛さが台無しですわ。
◇◆◇◆◇◆◇◆
意識が薄くなり始めたとき、扉が開くおとと少し騒がしい感じがしましたの。また? また脅かしにいらしたの? 守らなきゃ……ほら、また泣いていますわ。
「ぎゃああぁぁぁぁぁぁぁああぁぁぁぁあぁぁ!!!!! 」
誰かが落ちてきた? 嗚呼! そこは! やめて! それ以上、壊さないで!!
「ひ、ひぃぃぃぃぃぃぃ!!!!!!! 」
近寄ると叫ばれた。……嗚呼、可愛い顔もぼろぼろ? でも今は……。
「……やめ……て……この子……タチ……をキズ……つけナイ……で……!!!」
ウサギの耳の男性が落ちた場所、下敷きにしてしまっていたのは、人形。立ち上がるも、人形か人間かもわからずパニックになって。動かないで……お願いだから……。
「カノン?! あなた、カノンなの?! 」
知らない声があたくしを呼ぶ。だれですの?
「……なん…デ……あたく……シ……の名前……?」
声のする上をみあげると、絶滅したはずの竜属の女性と、ラミアとメデューサの
再び、扉が開かれた。
二人はまっ逆さまに落ちましたけれど、駆け寄った男性と、さっきの男性が守ったようですわね。あまり荒らさないで頂きたいものですわ。
「……ふふふ。ざまあないわねぇ? カノン? 」
聞きなれた声。あたくしと同じ、プライドの塊で生存本能なんて、欠片もない声。
胸を張る白雪姫さま。横には赤ずきんさまがしがみつき、後ろではアリスさまがきょろきょろしていましたの。
「……また……会え……ました……ワネ……でも……ちょっト……遅かった……デスワ……」
「ちょっと! こんなとこでくたばってもらったら困るのよ! 決着、ついてないんだから!
あなたを壊すのはあたし! 」
嗚呼……言い返したいのに、うまく言い返せませんの……。
「おバカ……デスワ……ねぇ……」
もう考えられないのに、人形たちにがあたくしを支えて立ち上がらせましたの。
『アタシタチ、ステラレタノ! ミンナミンナオナジ! コイツラモオナジ! スグステルンダワ! 』
人形たちが囁く、悪魔の囁き。
「棄て………ラレタ……。あたく……シ……も……棄て……棄て……ラレタ!!!! 」
……そう、あたくしも『買い手』に飽きられて棄てられた。お兄ちゃまと離れ離れにされた。嗚呼、人間さまが憎い憎い憎い憎い憎い!!!
「な! 何操られてるのよ! 」
ウルサイですわね。さっさと出ていって下さいまし!
「攻撃出来ないんじゃどうしようもないわ! 安全な場所はないの!!? リーゼを安全な場所に!! 」
ウルサイですわ。なんで、なんで、なんで出ていきませんの!
「……おい! ラプンツェル! おまえの持ってるそれはなんだ?! 」
「そうよ! これ! カノン! 受け取って! 」
あたくしに向かって何か……。あれは……お姉ちゃまからの……。ぶつかった瞬間、真っ赤な光の閃光が包み込む。光がゆっくりと収束した瞬間。
あたくしは完全に意識を手放した───。
◇◆◇◆◇◆◇
目が覚めると、あたくしの部屋。
「……え? 」
夢、でしたの?
「……
あたくしの枕元には
「あ、体……」
「前回のことがあったから事前にね。もう、あまり無茶しないでね」
優しく優しく、代わらず笑いかけてくれる。
「……架音、行っておいで。本当は一緒にいたいんでしょ? 僕はここで待ってる」
涙が止めどなく流れましたの。
「違いましてよ? あの方々があたくしのことが必要なんですの。仕方ないからついていってあげますわ。架音ちゃまはとぉ~っても親切なんですのよ」
お兄ちゃまは何も言わず、また撫でて下さいました。
あたくしは窓に歩みより、窓を全開に致しました。
「お兄ちゃま、行って参りますわ」
真打ちは遅れて現れましてよ? おーほほほほほほ!!!!!───。