第77話 決戦場の下見と下ごしらえ／（１）二波に分かれて出発
文字数 1,349文字
「クリムゾン・タイガー」宛ての通信をCIAを釣りだすエサにすると決定したその日。アオイたちは、午後遅くから決戦場に移動することにした。の下見と下準備をするためである。
「Ｍ」さんたちが、こういう場合の決戦場を決めてあったとは、驚きました。
アオイさん、慧子さんがCIAや国防総省と正面衝突する場合を想定して、以前から、一般の人が近づく可能性のない広場を確保してあったの。
この「隠れ家」がCIA霧島に監視されていないという100％の保証はありません。霧島教授はここに置いていくとしても、私たち5人が一度に移動するのは危険すぎます。
２チームに分かれて、時間差で移動しましょう。
よし、あたしと世津奈さん、慧子の3人がワンボックスで先に出発しよう。あれには「デポ１」から持ち出してきた兵器が積んである。
この隠れ家は、実は、私の研究室兼工房で、パワード・スーツと対戦車ライフルが車庫の隣の工房にあるから、それも積んでちょうだい。
でも、なんで、その3人が先なんすか？
あのワンボックスは、ここにいる全員を載せられるサイズでしょ。CIAが見ている前で、あれを出発させたら、私たちが全員で移動すると思って、追ってくる可能性が高いわ。
だから、戦闘力の高いあたし達3人が先発するんだよ。CIAは、あたし達が引き付けとくから、コータローは「Ｍ」さんを守って、ノンビリ来ればいい。
なんで、世津奈さんまで、連れてっちゃうんすか？ 慧子さんとアオイさんだけで、十分に強力じゃないっすか。
慧子さんが運転担当、アオイさんが放電攻撃担当、私が小火器担当という分業が必要だからよ。コー君は、抜群の運転スキルを活かして、「Ｍ」さんを無事に送り届けてね。
「抜群」って言われると、あれなんすけど……まっ、実際、そうっすね。分かりました。
私は、こう見えても、銃の取り扱いには慣れているのよ。コータローさんの援護は任せて。それから、ルートも変えた方がイイ。後続の私たちも追尾されるかもしれないから。
アオイ、慧子、世津奈の3人が武器類一式を積んだワンボックスカーで先発。1時間遅れて、「Ｍ」とコータローがSUVで出発することが決まった。
私たちの方は、武器とパワード・スーツで満杯なので、スコップとブルーシートは「Ｍ」さんたちのSUVで運んでもらってもいいですか？
もちろんよ。ラゲッジスペースはスカスカだから。
スコップとブルーシートって、何をするつもりっすか？
塹壕を掘るに決まってんだろ。地面に突っ立って、ロボット兵器を迎え撃つ気だったのか？
今晩、闇にまぎれて掘るんだ。たった一人の男手だ。よろしく頼んだぞ。
それ、性差別っす。
コー君、男女同権の考え方は、両性の間に生理的な違いまで否定するわけじゃないのよ。
肉体労働では、年齢差にも配慮する必要があるでしょ？
うげっ、この中で唯一の男性なばかりに、女性３人に強制労働を強いられるボク。ついてない。
15:30、慧子がハンドルを握るワンボックスカーが「隠れ家」を出発した。CIAの妨害がなければ夕暮れ前に現地に着き、周囲の環境を視認できるはずだった。
１時間後、CIAの尾行を受けていないことを確認した世津奈が、コータローにゴーサインを送った。「Ｍ」とコータローは、16:35出発。現着は日没後になると予想された。
