プロローグ

文字数 369文字

 きっかけは、単なるちょっとした好奇心だったと思う。
 雅也としっくりいかなくなって、その頃のあたしはずっと悩んでた。子供の頃からよく、おまえはちっとも悩んでいるように見えない、悩んでいるようにしろって言われて育った。それで悩んでいる顔の練習をした時期もあるけど、やっぱり、まさしく悩んでいるように悩むなんて、そんな器用なことあたしにはできない。
 もちろん、最初からその気だったわけじゃなかった。郵便ポストに入れられていた折込チラシを見たときは、ろくに中身を読むこともしなかった。
 でも、雅也とまたなんの熱も帯びないやりとりをして、通話を終えたあとに見たときには、啓示に見えたのだ。
 折込チラシにはこうあった。

『大切な人を大切と思えなくなってしまったあなたへ
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