scene-6 漆黒の真空世界

文字数 516文字



 ディバイダ・ガールは真空の宇宙を漂っていた。なんの物音もしない、星も(またた)かない静寂の宇宙をたった一人で。
 食料も水も無く、宇宙服さえ着けずに一人漂う。

 彼女は普通の生身の人間である自分が、なぜこんな状態で生きていられるのか不思議だった。すぐにでもプロトラクターの元へ行くものだと思っていた。

 こんな状態で本当に生きていると言っても良いのか疑問だが、心臓は動いているし身体も動く。魂だけになったという訳ではない。
 考える時間は幾らでもあったが答えは出ない。精神が先におかしくなるかと思っていたが、多分異常はないはずだ。

 左腕に()めている大型の多目的時計に目をやる。これは博士が「二千年先までエネルギー補充無しで動き続ける凄い時計だ」と豪語していた物だ。
 馬鹿な物を作る。普通は二千年も動く時計なんて必要無いし、どうせいつものように最後は爆発で終わるだろうと、みんな笑っていた。

「でも博士、たまにはちゃんとした物も作れるんだな。本当に二千年も動き続けたよ」
 時計の表示は西暦四千年を越えている。

 彼女は真空の宇宙空間で、二千年間たった一人で漂い続けていた。



【『ミリア』】
【『はいはい、行ってらっしゃい。でももう少しで終わっちゃうわよ』】


ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

登場人物はありません

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み