第38話  滅。破廉恥!

エピソード文字数 4,098文字

さぁマイ子供達。活目しなさいっ! 

楓蓮ちゃん覚醒モードよっ! 惚れなさい! この美貌にっ!

わぁお~~~! 楓蓮さん。すっおごい! めちゃ綺麗ですぅ!

 わぁお。とか。クネクネとか。言い出したらキリがないが……


 ぜってーこれ別人だろって顔をしているので、しかたなくコイツはクネ魔樹と名づけよう。

これは驚いたのお。昔の麻莉奈を見てるようじゃな。

昔はそ~いう髪型をしておったからの。

あははっ……そうなんですね

 じいじもクルクル回ってるし、愛想笑いしかできねー。

 ってかこの衣装でバイトするの? チャイナドレスで?


 しかも谷間だけ見えてるし。

 ある意味とても卑猥なんじゃないかと思っても、もう遅い。


 店の客はみんな……俺の顔を見てから胸元へと視線をスライドさせる。

わっ……楓蓮さん。本当に……凄い綺麗です。

 白竹さん。もといクル竹さんもやたら驚いている。

 いつものクール成分が半減し、羨望の眼差しで見られてしまう。



 それよりも……

 客の目が、客の目がものすげー突き刺さるんですけど!




 と、その時だった。俺はようやく気が付いた。

 というか、店の椅子が倒れたその方向を見ただけだったが、椅子から転げ落ちていたのは……



 染谷君だった。



 ※

 

 いつの間に来たんだ? と言っても俺が白竹ママと一緒に喫茶店の奥に行っている間だろう。喫茶店で二回目のエンカウントだが、今日の染谷君は一回目とは明らかに違っていた。



 俺を見ているのはいいが、明らかにテンパっている。そう感じた。



 オムライスを頼んだのか、スプーンがプルプル震えているのが分かると、思わず「震えてますよ」と突っ込まずにはいられないほど。ブルっていた。




 ……まぁいい。染谷君が来たからといって、平常心を保たねば。

 それに俺の愛情オムライスを頼まれなかっただけで、若干こちらにも余裕が出来た。



 ってか染谷君? 

 君は今日……昼で早退してたよな?

 調子が悪くて早退してたのに大丈夫なのだろうか。



あっ。どうもです
あ、楓蓮さん。どどどど、どうもっす!

 一応挨拶する。

 ぱっと見た感じは調子が悪いようには思えない。

あの……その衣装すごく……
「すんませ~ん
あ、ごめんなさい

 すまん染谷君。君の言いたい事は分かった。

 だけど客に声を掛けられてしまうと行かねばならんのだ。



 もう一度戻ってちゃんと言ってもらう。あのまま無視するなんて出来ないからな。似合ってますと言われ、ありがとうと笑顔で返す。

今日もオムライスですか? 好きですね

はいっ! 自分はオムライサーなんで。


今日は自分の友達の白竹さんのを頼みました

 オムライサーって何だよ。

 君はポニテマニアといい……キャラいっぱいあるんだな。

 

 と言うか染谷くん? さっきから目を合わそうとしないのだが。

 その横顔は常に変顔ばかりなんだけど。

(やばい……とてもじゃないが直視できねぇ。いつもの楓蓮さんよりも女子力が限界突破してやがる)
 そこからは結局いつもどおりの配膳に回るのはいいのだが、明らかに俺は浮いていた。

 洋風チックな作りの喫茶店に、一人だけ中華女が混じってるからな。


 

 しかも男の客なら必ず胸を見られる。


 これは慣れているとは言え、胸元が露出している服など普段から着ないので、非常に恥ずかしいのであった。

楓蓮さん。お願いします~~
はぁい~~!

(いかん! どこを見て……っつーか。楓蓮さんってマジででけー!)


(まて! 落ち着け龍一! 破廉恥ぃ。撲滅ぅ!)


(林彪当社開陳列財前! 破ぁ~~!)

 染谷くん?


 今変な声が聞こえてきたような……


 まぁいい。今日の彼は特に変なので、あまり近づかないようにしよう。

 




 やがて五分間の休憩時間だ。更衣室にいたのは魔樹である。

「お疲れ~」と、お互いが返事すると、隣に座った。

もう大分慣れちゃいましたねぇ。覚えるの早すぎだよっ。もぉっ

 頭の後ろに手をやり愛想笑い。


 喫茶店のバイトになると、何故キャラが変わってしまうのか。

 今更突っ込むのもどうかと思ったので、あえて何も言わない。



 魔樹はそういう二重人格キャラなのかもしれない。

 別に害も無いし、何となく突っ込むのも悪い気がしてくるし。


そそ。そいえば。楓蓮さんって妹さんだっけ? いるんだよね?
はい。まだ小学六年ですけどね

また今度。食べに来てはどお?

楓蓮さんの家族だったら~じいじもママも、お金いらないよって。タダでいいよって言ってるのです

本当ですか?

で、でもタダというのも何か悪いし……

いいのいいのっ。

楓蓮さんにはじいじも、アルバイト料以上の働きしてもらってるからって……


わたし……僕達も美優も、凄く助かってるし。全然気にしなくていいのですよ

 そういえば……前々から思ってたけど。


 クネ魔樹ってさ。普通の男が見せるような視線を全く感じないんだよなぁ。

 本当に女の子みたいに喋るし、全く違和感は無いし……

 

 それは楓蓮にとって非常にありがたい。


 特に性的な目で見てくる男が一番気持ち悪くてしょうがない。

 まぁ今の姿が女なのだから仕方が無いんだけど。嫌なものは嫌なのだ。


分かりました。妹に聞いてみますよ。

バイトの無い日でよかったら、今度一緒に来てみますね

うんうんうんっ! 楽しみにしてますねぇ~~

どんなメニューもタダなのでしっ! あはっ!


 クネクネしてる。しまくってる。

 これを白竹さんがやると可愛いんだけど、魔樹とじいじがやるとギャグになる不思議。

 しかも本人はとても笑顔なので、こちらも自然と笑顔になるスキルなのであった。



 ※



 やがて休憩が終わり染谷くんがオムライスを食べ終わると、席を立ちレジに並ぶ。



 すると白竹さんが「レジやってみてよ」とか言うので、レジをやらざるを得ない。

 そんな時。白竹さんが俺にスマホを向けるのだ。


楓蓮さん。ちょっと撮っていい?
え? この格好で?
うんうん! 撮りたい
 クル竹さんの意外な行動にハテナマークを浮かべるが、それよりもレジに並ぶ染谷君の表情が、口を開けたままポカーンとしてるのだ。

ありがとう。楓蓮さん。とっても素敵です。


ほら。見て見て

白竹さんは、今しがた撮った写メを染谷くんに見せると、見開いた目のまま固まっていた。
ち、ちょうだい
おいおい。そんなのを彼に渡さないでくれ!
ダメで~す
すんげー笑顔のクル竹さんであった。
ありがとぉございました~また来て下さいね
白竹さん。ちょっと……こっちきてもらえる?

 カランコロンの音と共に染谷くんと白竹さんが店を出る。

 頼むから、写メはやらないでくれよ。



 そして、ものの数分で戻って来た白竹さんからこんな声が聞こえてくる。


くくっ……


 白竹さん? 何だよその笑い方は。

 あなたの場合「あふっ」じゃないんですか?


 これはきっとクル竹さんだけのアクションっぽい。

 普段の彼女からは程遠い子悪魔チックな顔だからな。


なんだか……変わった人ですね。


彼も良いキャラしてるね。可愛かった

 確かに……可愛かった感じはしますけど……


 ってか染谷くん! 君もさ、学校とのキャラが違いすぎるって。

 まぁそれは横にいるクル竹さんにも言える事だが。


 



まぁでも、少しはホッとしたな。


 一回目に来た時の染谷くんは、一瞬だけだったが、俺を真っ直ぐ見てきた。



 あの時感じたのは、もしかして……

 楓蓮に好意を持っているのか? そんな風に感じたが……


 今日見る限りは、赤ら顔をするにしてもそんな感じには見えなかった。


 どうやら、俺の考えすぎなのか、取り越し苦労だったみたいで、ホっと胸を撫で下ろすのだった。



 ※


 さぁ。気を取り直してバイトは後半戦へと突入した。

 染谷くんの件はあまり考えずに、今やるべき事をこなすだけだ。


 今日は喫茶店の客足も遠のいたかと思われたが、染谷くんが帰った後、団体が二組ほど現れ、一気に修羅場と化した。


 走り回る白竹さんに続き、今日は白竹ママまで参戦してくれているので若干余裕があったが、彼女に限っては客と長々と喋ったりするので、あまり戦力にはならなかった。



 結局、クールな白竹さんと俺が走り回るだけで、いつものパターンとなっていた。

ちょっとお母さん! 手伝ってよ
分かってるわっ! だけどお客様とのコミニュケーションも大事な仕事なのよっ!
 白竹ママがクルクル回りだすと、白竹さんは盛大な溜息を吐いていた。
お母さんはね、クルクル回るとダメなのよ。
そ、そうなんですね

確かに。全然働いてねーし。

クルクル回って危ないし、邪魔すぎる。


逆に俺達の仕事の邪魔してねーか? 

ああっもう! 結局二人じゃないのよ
 クル竹さんがめっちゃ怒ってる。


 エキサイトした白竹さんを見て俺は……怒った顔も出来るんですね。と思うに留めた。

 学校では見られない一面だからな。

あぁもう。もっとバイトの人雇わないと持たないよぉ
そうですね。明らかにオーバーワークでしょ

 愚痴る愚痴る白竹さん。これには俺も同意する。

 確かに接客というレベルを通り越したハードモードだからな。



 しかも白竹姉弟は休みが無い。

 つまり週五で働いているので、彼女が愚痴るのも頷けるのであった。




 こりゃバイト日数を増やした方がいいのだろうか。

 そんな風なことを考えながら接客に集中していると、閉店間際の喫茶店に女性が入って来た。

いらっしゃいませ。申し訳ございませんが……もう閉店のお時間なので
 やんわり断っていると、その女性は「あ、お客ちゃうんです」と手を上げて否定する。
あの……まだバイト募集してますか? 面接受けに来たんですけど

 おおっ! マジですか?

 今、丁度その話をしてた所なんですよ!

はいっ! めちゃ募集してます! うんうんっ! 採用です!

 白竹さんに笑顔が戻る。というか大歓喜だなこりゃ。

 さっきまでのドロドロモードから、一気に覚醒した白竹さんは早速じいじに報告に行くのだった。


 さて、その女の子のいで立ちなのだが、ぱっつん頭のセミロングだな。

 お目目もパッチリ美人系であり、大人びたワンピースは女子大生っぽく見えるファッションだった。


 うん。普通に可愛い系の女の子だった。


――――――――――――


次回 自覚がない。

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登場人物紹介

キャラのプロフィールは、章の始まりにも記載しています。


ここに記載されているのは主要人物です。

その他の登場人物は章の始まりなどに記載しています。


読者視点は神視点。

物語の中の人達が知らないことを全部見る事ができます


また、二章からはキャラの心の声まで聞こえます(フキダシが灰色)

 ★ 黒澤 蓮 くろさわ れん


 本編の主人公。高校一年


 男女入れ替わり体質。
 
 弟の凛と共に、新天地で新たに生まれ変わろうと、楽しい学校生活を送ろうとする。友人作りに重きを置き、人との付き合いにはとても慎重である。


 とても弟思いの良いお兄さん(お姉さん)

 ★ 白峰楓蓮 しらみねかれん


  蓮の女性の姿。白峰というのは偽名。

  黒澤家とは繋がりを見せないように演じる。


  心の中は男の子なので、女の子のファッションやらに興味が無い。

  とても美人なのにあまり自覚がなく、女性の姿はオマケだと思っている。

 ★ 黒澤 凛 くろさわりん


 小学校六年生


 男女入れ替わり体質。

 

 兄である蓮を慕い、とっても素直で女の子のような性格。
 ことある毎に兄に甘えてしまい、いつまで経っても、子供のままなので、蓮は凛の将来をとても心配している。



 ★ 白峰 華凛 しらみねかりん


 凛の女性の姿。

 外部との接触が無いので、彼女の存在を知るのは家族だけ。

 楓蓮と違い、おしゃまさん。


 ★ 美神聖奈 みかみせいな


 高校で蓮と同じクラスとなる。実は小学四年生までの幼馴染。


 容姿端麗。成績優秀。運動神経抜群。リーダーシップ抜群。お金持ち。

 など、全てを兼ね備えている人。


 二人目の主人公。

 ★ 白竹 美優 しらたけ みゆう


 蓮と同じクラスとなる。ピンクの髪が目立つ美人。

 自分の家の喫茶店で働いており、メイド服で接客をこなす。


 学校と喫茶店では、雰囲気がまるで違うのには理由があり……

 

 三人目の主人公。 

 

 ★ 白竹魔樹 しらたけまき


 蓮の隣のクラス。美優は双子の姉弟。


 学校ではとてもクール。喫茶店では男の娘?

 双方を知る蓮にとっては、非常に疑問な人物。


 四人目の主人公

 ★ 染谷龍一 そめやりゅういち


 蓮と同じクラスとなり、前の席という事で付き合い始める。

 わりと積極的。学校ではいつも笑顔で誰にでも優しいが……

 

 五人目の主人公

 ★ 平八 へいはち 


 聖奈専属の運転手。

 黒澤家の秘密を知っており、蓮の親である麗斗(れいと)とは旧知の仲



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