僕ハ許サレナイ

文字数 3,067文字

 ねぇ、僕はどうしたら良いの?死んだら良いの?だけど、死ぬのは怖いよ?みんなみんな僕に死ねって言うんだ。僕は生きることすら許されないんだて。許されないってどういうことだろうね。誰が許す、許さないを決めるんだろうね。多分皆が言ってるから、皆が決めるんだろうね。僕は生きることを許されていない。じゃあ、死ななきゃいけない。だけど死ぬのは怖い。ああ、誰か僕を殺してくれないかな。でも、皆が僕のことを生きている事自体が許せないなら、皆が僕を殺せばいい話だと思うんだけど、違うのかな?なんだかもうよくわかんないや。


―――――


「おい、コラ、デブ!死ねよ!」
「そうだよ!早く死んでくれない?生きてる価値無いでしょ?」
「誰の許可を得て生きてるの?」
「生きているなんて許さないからね?」

 僕は心の中で思う。だったら殺してくれと。

「ちょっと聞いてるの!?あんた、脳みそまで腐ってるんじゃない?いい加減死んで」
「そうよ、デブなんて生きている価値が無いんだから、早く死になさい」
「何?人間様と対等だと思ってんの?デブの分際で?ムカつくんだけど」

 早く終わらないかなと心の中で思う。

「チッ、行こうぜ。こんなデブに関わっていると気持ち悪くてしょうがない」
「それもそうね。じゃあ、デブ、今日中に死んどけよ?」
「デブ、早く死んでよね。夜のため人のために」
「そうそう、デブは害悪しか生まないんだから、さっさと死ね。ゴミデブ」

 ようやく終わりが見えてきた。その後、言いたい放題言った後、そいつらは消えていく。
 多分皆は本当に僕を恨んでいるんだろうな。許せないんだろうね。僕はどうしたら良いんだろうか。謝る相手も居ないし、皆に謝ると怒るし。どうしたらいいんだろう。


―――――


「おい、デブ、ちょっと荷物持ってくんない?重いんだわ」
「何いってんの?中身入ってないくせに~」
「あれ?バレた?だけどいいじゃん。重いんだもん」

 僕は耐えていた。荷物を渡され、持って彼らの家の近くまで運ばないといけない。

「つ~か、寄り道しね?腹減ったわ」
「あっ、それ良いね」
「おい、デブ、今金いくら持てる?」
「……今日のお昼で全部使った」
「はぁ、まぁ、しゃーねーか。じゃあ、お前店の外で待ってろよな。言っとくけどカバン汚すなよ」
「あっ、だったらうちのも持ってて」
「あっ、私も、ぎゃははは」

 どんどん重くなる荷物。

「おいこら、デブ、勝手に中身覗いたらぶっ殺すからな?」
「おいおい、そう脅すなよ。ビビってしょんべんちびらせても困るからよ」
「それもそうね」
「ウケる、ぎゃははは」

 彼らはファストフードの店に入っていく。俺は外で立ったまま。彼らは多分数時間話し込むだろう。僕はその間ずっと立ってないといけない。一種の拷問だ。なんでこうなったんだろうか。こいつらが幼馴染だって言うのが運の尽きだろう。
 その後、2時間待ち、やっと出てきた奴らと帰る。一人、また一人と荷物を取って帰っていく。最後に残った一番嫌な奴。こいつとだけは本当に一緒に居たくない。

「おい、デブ、聞いてるのか?おい、何とか言えよ!おい!クソカスデブ!」

 そう言うと俺に蹴りを入れてきた。

「ご、ごめんなさい」
「ああ?何?謝るの?だったら慰謝料よこせよ」
「お、お金ない」
「はぁ?巫山戯てんの?」
「ご、ごめん」
「腹立つな!此のクソカスデブ!」

 再度蹴りを入れられる。僕は痛くて屈んでしまう。その時、彼の荷物が地面に吐いてしまった。

「おい……いま、俺のカバン、地面に置いたのか?」
「ご、ごめ」
「巫山戯んじゃねぇぞ!!!ぶっ殺す!!!」

 そこから始まるリンチ。すでにカバンは手放している。それが更に彼を苛立たせる。

「此の糞が!死ね!死ね!死ね!」

 此処は誰も居ない、小さな路地だ。

「ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。」
「うるせぇ!黙れよ!此のクソカスデブ!いちいち謝ってんじゃねぇよ!ぶっ殺すぞ!」

 言っていることが支離滅裂だ。何度も蹴られ、痛みで感覚が麻痺してくる。そして、最後の一撃とばかりに助走をつけて全力で蹴られる。昼に食べたものをその場で全部吐き出す。

「うわぁ、汚ねぇ、マジキモ、何か萎えた。じゃあなクソカスデブ。明日には死んどけよ」

 そう言ってカバンを取り、家へ向かうため路地を出た瞬間。それは起きてしまった。
 見通しの悪い十字路。バイクも通るし車も通る。運が悪かった。猛スピードで突っ込んできた車にはねられたのだ。


―――――


「おい、なんで今日も生きてるんだよ?」
「マジ巫山戯んなよ?」
「そういうの良いから早く死ね」

 今日も僕は罵詈雑言を受け入れる。僕は許されていけない存在。だってあいつを殺したのは僕だって事になってるから。


―――――


 血が出てる。
真っ赤っ赤。
痛そう。
脳みそが見えてる。
 内蔵も見えている。
 骨もむき出し。
 再度吐いた。
 車はどこかへ消えた。
 近所の人々が出てくる。
 警察に連絡している人がいる。
 また吐いた。
 サイレンが聞こえる。
 僕は大人に囲まれていた。
 警察は僕を連れて行く。
 色々聞かれた。
 車について、彼について。
 疲れた。
 家に帰ってまた吐いた。
 キモチワルイ。
 寝た。


―――――


 僕は許されてはいけない存在。彼らにとっては。僕は殺していない。それは警察が認めている。犯人もすぐ捕まった。だけど、奴らは納得出来なかった。その日を堺に巫山戯てたのが、本気になった。むき出しの殺意。もういやだ。だれか助けて。ねぇ、僕が悪いの?僕が殺したの?違うよね?僕は生きてることすら許されない存在?違うよね?だけど、それは皆の前では言わない。言えない。蹴られるから。痛いのは嫌。ああ、こんなことなら僕が死ねば良かった。そうすれば楽だったのに。だって即死でしょ?痛みを感じる暇すら無いわけでしょ?楽だよね。良いよね。結構ずっとそう思ってる。生きてることすら許されない?そろそろ僕も怒っていいよね?


―――――


 包丁を持って投稿した。
 何時ものいじめが始まった。
 耐えた。
 疲れた。
 痛かった。
 だけど、痛いのもこれが最後。


―――――


「ホームルームを始めるぞ~、皆席につけ~」
「先生!」
「ん?どうした?」
「少し時間をください」
「構わないがどうした?」

 僕はカバンを持って。包丁を隠したカバンを持って教壇に向かう。
 ああ、やっと終わる。
 長かった。
 辛かった。
 終わらせよう。
 これで最後だ。

「皆さん、僕は生きていてはいけないそうです」

 そこに居た、一部のクラスメート、要するに何時もの奴らだ。そいつらが立ち上がりこちらに向かってくる。

「だから、死ぬことにしました」

 そいつらは途中で歩みを止める。
 先生も俺から離れる。
 包丁が輝いている。

「その前に、友達のもとに送ってあげるよ。誰があいつの所へ逝きたい?」


―――――


「こちらの高校で、本日生徒が包丁を持って暴れ、5人が死亡。その生徒は最後に自殺をしました。殺害の同期は依然としてわかっていませんが、何らかのいじめがあったのではと言う指摘があり、教育委員会では……」


―――――


「これで、皆仲良く一緒だね」
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