第2話 春の出来事 -ツバメ様の帰還ー

文字数 1,139文字

 温かくなって、花粉とともに春がやってきました。
 ツバメさまたちが渡ってくる季節です、そして今年もツバメさまが帰ってきました。
 しかし、この春、わたくしはやらかしてしまったのです……
 そして今、その罪深さに、恐れおののいているのでございます……

 我が家の軒下にはツバメの巣があり、毎年ツバメさまが営巣され、繁殖していらっしゃいます。ほかのところは分からないのですが、我が家では4月末から5月頃に営巣されることが多いように思います。
 しかし、今年は3月末と、我が家にしては早い時期に巣の中に鳥影が見られるようになりました。巣の下に糞も落ちており、誰かいるのは明白です。今年も可愛い雛が見られるのを楽しみに、何となく様子を見ていたのですが、わたくしはあることに気が付きました。せっせと巣を補修しているツバメさまは男子で独り身でした……
 ツバメさまはこちらに戻ってくる時にはひとりで帰ってきて、こちらでパートナーを探すのだそうです。
 そうか、まだお嫁さんがいないのだな、心の中で頑張れと応援していたわたくしですが、二週間ほどになるのに、あちこちで飛んでいるツバメ様を多く見かけるのに、うちの独身男性彼女なしのツバメ様は独り身でした。今までは夫婦でやってきて、すぐに雛の声で賑やかになるのがデフォでしたので、大丈夫なのかと心配しました。
 ツバメさま的にはお前にだけは言われたくない案件だとは思いますが…

 さて、ある日、我が家の軒下が賑やかです。
 軒下の住人が増えたのでしょうか、おめでとうツバメ様、ほうきを手に玄関のドアを開けます。ガチャ、
 巣に二羽のツバメ様が留まっています、そのうちの一羽が振り返りました。一瞬わたくしと目が会いました。ダッシュで飛び立つメスのツバメ様、追いかけるうちの独身オス、
 やってしまったああぁ…
 そうなのです、ナンパに成功した、うちの独身男性彼女なし君が、将来のお嫁さん候補に僕のおうちを見せていたのです、賑やかなのは求愛の鳴き声でした。必死に「僕とつがいにならない?」と、口説いてたところに大家さん乱入です、最悪だ。

 その後、二羽とも帰ってこないかと思ったのですが、オスのツバメ様だけ戻って来ており、大家さんはさらにトホホな気分でございます。同じ固体かどうかはわからないのですが、多分そうだと思います。
 頑張れ、うちの独身ツバメさま、春はこれからだしチャンスもまだまだある。大家さんも応援しているぞ、応援だけだけどな、
 春の日差しはまぶしく、なんだか目に沁みます。
 だれか早くうちの店子とつがいになってやっていただけないものでしょうか、いい子だと思うんです。


 その一週間後に、うふふ、あはは、と飛ぶ二羽のバカップルを見かけました。
 楽しそうで何よりです。
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

登場人物はありません

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み