第1話 左遷されました

文字数 1,291文字

「ミカウス、本日付けで教会本部上級神官の任を解き、ルージャル村の教会に赴任する事を命じる」
「了解しました。早速荷物を纏めて出ていきますので・・・・・・」
「いや、ちょっと待てっ!?」
早速準備に取りかかろうと部屋を出ていこうとしたら上司に呼び止められた。
「なんですか? 僕はこれから旅立ちの準備をしなきゃいけないんですが?」
「お前何でこんな事になったかわかってるっ!?」
「わかってますよ、神官としての使命を果たして無いからでしょ? それに上層部に文句を言ったから、というのもありますかね」
「いや、まぁ当たりなんだけども・・・・・・、不満は無いのか?」
「無いですよ、寧ろラッキーだと思っていますよ。貴族におべっか使う事もありませんし同僚から陰口悪口をコソコソ言われる事もありませんから、それじゃあ失礼します」
「だから待てってっ!? 赴任地の場所も聞かずに行く気かっ!?」
・・・・・・あぁ、そういえばどんな場所か聞くの忘れていたな。
上司はため息を吐きつつ机の上に地図を広げある場所を指差した。
「此処が赴任先のルージャル村だ。此処からかなり離れた場所にある」
「最果ての地ですね」
「此処の教会には長年務めていた神官がいたのだが天寿を全うされてな・・・・・・、それでお前が赴任する事になった。お前も居心地が悪いだろうし環境を変えるのも一つの手だと思うんだが」
「心配り感謝致します」
「コレは餞別だ。長旅になるだろうからな」
「ありがとうございます」
今度こそ僕は上司の部屋を出ていった。

僕、ミカウスはリネル王国の教会の神官である。
真面目に頑張った結果、上級神官、神官でも上のランク幹部候補まで上がった。
しかし、幹部になる為にはある条件があった。
それは『聖女』を見つけ出す事。
聖女は国を繁栄に導く乙女でこの国の少女の憧れの存在。
聖女を見つけ育てる事は神官として名誉な事であり出世に繋がる。
僕も最初の頃は聖女探しをしていた。
しかし、心が折れた。
上級神官となると近寄ってくるのは貴族で『家の娘はどうですか?』と、強引に進めて来たり、賄賂は渡して来たりと黒い一面を見てうんざりする事が多い。
しかも、貴族令嬢というのはプライドが高い方々で相手をするのに気を使ってしまう。
いつの間にか、僕は心身共に疲れきっていた。
同僚の中には世渡り上手が上手い奴もいて上手くやってるのもいる。
それも今回の人事異動の原因の一つなんだけど引き金を引いたのは教会の集まりで公然と教会批判をしてしまった事だ。
『今の貴族や王族に寄り添うやり方は間違っている。世界の流れがおかしい時に正すのが教会ではないか』という事を半分妬けになって言った。
その結果がコレである。
当然の結果と言えば結果なんだけど、僕にとっては幸運だった。
もう貴族の顔色も見る事は無いしギスギスした教会の人間関係に振り回される事もない。
王都から離れた辺境らしいけど柵から抜けれるなら大歓迎だ。
早速荷物を纏めて手続きを行って僕はさっさと王都を出ていった。
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