桃華と藤原のTRA講座その2~モモカトフジワラノTRAコウザソノ2~

文字数 3,255文字

桃華「――むう」

藤原「どうしたんだモモ?」

桃華「なんかこの間は良く活躍できなかった気がする」

藤原「まあ、一次的に話が我々から離れていたから仕方がないね」

桃華「作者に抗議しなきゃ!」

藤原「ははは! そうだな少しは痛い目を見たほうがいいかもなあの作者。
結構、小説執筆をサボってたりするし」

桃華「次こそは私の活躍を!!!」

◇主力戦車の強さ:

藤原「さて――、TRAと主力戦車、どっちか強いかわかるかなモモ?」

桃華「TRA!!」

藤原「まあ、モモならそう答えるだろうね。でも――」

桃華「――なんてね、まあ主力戦車の方が強いのはわかってるよトシ」

藤原「その通りだ――、単純な戦闘能力において、主力戦車は陸の王者とも呼べる存在だ。
TRAはそれを越えることはかなわない――、じゃあなぜTRAは対戦車戦闘に使われるのか?
それを考えるときに、まずは主力戦車の強さを理解しなければならない」

桃華「主力戦車の強さ――、重装甲?」

藤原「――まあそれはある。最もそれもあくまで正面切って戦う場合に限定される。
戦車は後方からの攻撃に弱い。――それは、あえてワザと後方からの攻撃をないものとみなしている、――という事でもある」

桃華「後方からの攻撃を考えない――か、それはなぜに?」

藤原「主力戦車は戦術コンピュータによるデータリンクを行った連携攻撃が基本だ。
戦車の台数だけ彼らは眼を持ち、それによって得たデータを共有して連携して戦闘を行う。
特定の戦車が目標を捉えていると、他の戦車もその目標を目視でとらえるのと同じ意味になる。
そして、現代の戦車は基本的に”時速60km/hで走行しながら、移動目標を95%の確率でとらえることが出来る”極めて高い命中精度を持つ。
索敵役が移動し敵を捉え、攻撃役が停車した状態で砲撃すれば、その命中精度は恐ろしいことになる」

桃華「ホント――連携した主力戦車ほど恐ろしい存在はないよね」

藤原「そうだな――、データリンク自体はTRAも搭載してはいる。
でも主力戦車に搭載されているそれは、現役陸戦兵器では最も高度なものだ。
現代の主力戦車は、小型軽量高機動が基本なのも連携をしやすくする意味がある」

桃華「デカいのに意味はないもんね」

藤原「そう――、昔は重装甲にするために巨大化もやむなしって考えがあったが現在は完全に否定されている。
機動性の遅さは連携の遅さ――、そもそも精密機器の塊と化した現代主力戦車では、命中弾があれば高い確率で行動不能に陥る」

桃華「どんなに装甲が厚くても、命中弾の衝撃で中の機器が壊れたり、乗員が死亡することがあるもんね」

藤原「現在の日本国防軍の90式主力戦車が、世界最軽量で全高が低いのも被弾を限界まで避けるたなんだ」

桃華「その割に主砲は155㎜なんだね」

藤原「うん――それは、搭載する弾薬を大きくしてその内部に機器を詰め込みやすくするためで。
別段、口径が大きい方が威力が高いから――ではない」

桃華「そうだね、155㎜砲の性能を完全に発揮させるには主砲長が短いからね」

藤原「そう――現代戦車は車体長が短いから、あまり長い砲身の砲は搭載できないからね。
TRAが扱う155㎜狙撃銃の方が砲身長が長いというのは有名な話だ」

桃華「――ってことは、もし弾薬の性能が上昇してコンパクトにできるなら」

藤原「そうだね、砲自体もコンパクトになって、口径が再び小口径化に転換する可能性が高い」

桃華「実際、主力戦車の弾薬ってどれくらいあるの?」

藤原「実は戦車砲弾として有名な、高速弾、榴弾、榴散弾、という三種類以外にも、電磁砲弾を除くすべての弾薬が網羅されている。
それらを状況に合わせて使いこなすことを目的にしているのが155㎜多目的砲だ」

桃華「でも――私たちが相手をするのは――」

藤原「テロリストはそう言った戦術方面に疎いことが多い。
そもそも、スタンダードな弾薬以外は高価であることがほとんどだから、当然遭遇する確率は低くなる」

桃華「テロリストの場合、データリンクすら使いこなせていないことがあるもんね」

藤原「ぶっちゃけ、正しい戦術に則った主力戦車ほど恐ろしい存在はないわけだが――」

桃華「なぜそれにTRAが対抗できるか――だね?」

◇TRAという兵器:

藤原「はっきり言うとTRAは主力戦車より弱い」

桃華「はっきり言うね――」

藤原「事実だから仕方がない。
ただ、それはある一定の条件下では――勝敗が逆転することになる。
――さて、ここで質問――、TRAが一般に対戦車戦闘に使用される理由は何か?」

桃華「TRAが戦車より強いってことじゃないでしょ?
ならば――」

藤原「正解は――、
主力戦車を乗員ごと用意するより、一般歩兵にTRAを与えて戦場に送る方がかかるコストも育成期間も少ない。
そして、主力戦車が対応しきれない、細かな、或いは優れた戦術を駆使できるから――だ。
戦車だって様々な防護機能を持つ――、ソレの範囲内の攻撃なら無敵を誇る――しかし」

桃華「TRAは人型だからこそ、その戦術の幅は広く――、戦車の防護機能では対処ができないってことだね」

藤原「戦車だって、TRAに対する完全防護を目指せばできなくはない。
でも、安くないコストをかけてTRA対策を完全にするなんてことには意味はない。
なぜなら――、TRAはあくまで一部の国家でしか使われていないし、その戦略戦術的立ち位置から一般の戦場でお目にかかることも少ない兵器だ。
そんなものにわざわざコストを割く暇はない。――TRAに対抗するための車両を別に用意すればいい話だ。
だから――たいていの戦場において主力戦車はTRAへの対抗策を持たないという状況になる」

桃華「――というか、そもそもTRAへの対抗手段を考えていないってことね?」

藤原「そういうコトだ。
だから、もしTRAという兵器が広く使われるようになっていったら――。
主力戦車にTRAに対する防護機能が標準装備になるのはそれからになるだろうね」

◇TRAの巨大化:

桃華「ここまでの事を踏まえるとTRAって時代を逆行してるね」

藤原「どういう事かな?」

桃華「だって――小型にして命中弾を減らす方が戦場では有利でしょ?」

藤原「その通りだね。それならなぜTRAは巨大化し続けているのか。
その理由は――。
実はTRAという兵器そのものが理由なんだな」

桃華「それってどういう――」

藤原「モモは、戦場で戦う時TRAを敵前でつったったままにする?」

桃華「そんなバカはしないわ。回避運動をするか伏せるか――、
そうか」

藤原「そう――、他の陸戦兵器では、TRAほど自由に被弾面積を変化させることは不可能だ。
戦場で立ちんぼすれば、そりゃTRAは命中しやすい的だ。しかし、
普通はそんなことしないし――、TRAの場合コックピット周りさえ無事ならある程度の損傷を許容できるという利点がある。
そもそも、手持ち武器によっては敵の眼前に立つことすら必要なく屠ることはできる。
逆に言えば武器を選ぶときに役割をしっかり考えておかないと、そのまま無駄なものになる可能性が高いってことだ」

桃華「TRA部隊の指揮官――作戦を考える人って、あらゆる戦術を考えなければならないんだよね」

藤原「その通り――。
TRAのこなせる仕事は、数えようとしても数えきれないほどだ。
作戦内容からその隊員にどのような役割をさせるか?
そのためにはどのような武器を持たせるか?
――そういった、普通の陸戦兵器ではありえないレベルの戦術を考える必要があるのがTRAなんだ」

桃華「TRAの巨大化は、手持ち武器を増やすのが目的ともいえるのかな?」

藤原「大きくなれば、より大きな武器を使いこなせるからね。
でも、俺は今の大きさがTRAの限界ではないかって思っている」

桃華「TRAも小型化が来るかも?」

藤原「それはわからない――。
TRAって言うのは今の大きさだからこそTRAなんだし。
それより小さい機体が必要なら”戦術義体”を使うだろうし――ね」

◇最後に:

藤原「とりあえず今回はここまでだ」

桃華「次こそは活躍してやる!!」
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登場人物紹介

小柄な中学生くらいの見た目の少女。

人工的に合成された遺伝子による人造人間であり、肉体年齢的にはもう中学生程だが、実年齢はまだ9歳に過ぎない(本編第一話の時期)。

その身体能力は極めて高く、強化義体によるサイボーグでもないのに、それと同等の運動能力を発揮できる一種の超人である。

その能力の高さは、知能に関しても同等であり、大学レベルの論文なら一瞬にして理解できる知能を有する。

その能力に裏打ちされた性格は極めて尊大であり、自身を『天才』だと言ってはばからない、多少他人を見下しがちな悪癖を持つ。

しかし、そんな彼女の本質は極めて純真で、他人を思いやる気持ちに満ちた、本来は戦争行為など行えない優しい性格をしている。

すぐに他人の気持ちを察知できる頭脳の持ち主なので、必要な時は決して他人を不快にさせる言動はしない。

それほど純粋な性格に育ったのは、育ての親である研究者たちに、大切に育てられたことが大きく影響している。

なにより、平和な日常を守ることを使命だと考え、テロリズムには自身のできうる限りの苛烈な暴力で制圧を行う。

日本陸上国防軍・二等陸佐である優男。通称『おじさん』。

第8特務施設大隊の大隊長であり、桃華の後見人にして直轄の指揮官でもある。

そこそこ整った顔立ちのイケメンだが、多少くたびれた雰囲気があり周囲には昼行燈で通っている。

国に奉仕することを第一とする典型的な軍人ではあるが、政府の行った闇の部分には思うところがあるようで、自分をその手先の『悪人』だと思っている節がある。

海外の生まれであり、そこで戦争に巻き込まれ家族全員を失っている。

その時に救ってくれた日本国防軍のとある人物(現在は国防軍の高官)の推薦で国防軍に入ることとなった。

このため、心の中では戦争やテロリズムを憎悪しており、それを引き起こそうとする人物に対しては、容赦しない苛烈な部分を持つ。

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