私の感情が問われている――我孫子武丸『狼と兎のゲーム』
文字数 1,269文字
※結末に触れています。ご注意ください。
暖かい夕方、善光寺高校文芸部の部室には狛村日和と桜峰咲羅がいた。
それにこの作品……逃亡サスペンスとしてはすごくよくできていると思いませんか? 友達の父親が悪魔のような男で、小学生二人が知恵を絞って必死で逃げる。小学生だからこそ色々なところに限界があって、ハラハラさせられっぱなしになるんです。
ラストでは「無期懲役の判決が出た」という事実だけが書かれています。でも、この父親は物語の最初から最後まで非道を繰り返しているじゃないですか。今の日本においてこの判決はすごくリアルだと思いますけど、私は読み終わったあと、「死刑になればよかったのに」って考えちゃったんです。
はい、自分の感情を問われている気がしたんです。この人物はこういうことをやってこの判決になりました、あなたは納得できますか――という。ミステリとしての驚きよりも、まずそちらを考える程度には印象的だったんです。
大きなニュースになればわたし達も気づくけど、こういう事件はあちこちでたくさん起きてるんだろうね。この作品の父親にあたる人物を自分が裁けって言われたら……うーん、確かに胃が痛くなるくらい考え込まなきゃ何も言えそうにないよ。