第19-3話「生きていればそれでいい」

文字数 942文字






 激戦から数時間がたった。
 早苗たちは縄で縛られた、サー・ハーマンを静かに見ている。
 違う、彼だけじゃない。他の大勢の捕虜たちも見渡すが――

「牢が足りないな……」
「う、うン……」

 ララが静かに頷くと、ラルクは身震いした。

「……敵にはBランクが1人いました。亜人にとっては、雲の上のような存在。それを閣下の武器は、赤子の様に……」
「君たちが頑張ったからだよ」
「閣下……!」

 あとは情報戦で有利だったから。
 ラルクは泣いて叫ぶのを、必死に抑えていた。

「我々が本土の人間に勝った! 完全勝利です!」
「負傷者は?」
「敵の魔術で受けたやけどや、武器の扱い不備による怪我、数名のみです……!」

 早苗がほっとして息を漏らすと、ラーサが早苗の元へ。

「……王子。これほど恐ろしい武器が、1000年後の兵器なの?」
「いや、こんなのはかわいいものだよ。未来の人類は、愚かな戦争の繰り返した……」
「これすらも()()()()()()なんだ……」

 もう、その場の誰もが理解していた。
 彼がこのまま導けば、共和国は世界一の大国になると。

「坊主……恐ろしいぜ……鳥肌が止まらねぇ……」

 ギガが腕をさすり、ラルクが勝利を噛み締めているその頃――
 ララは不安そうにしていた。

「早苗さま、大丈夫……?」
「……大丈夫。ただ、僕が作ったものが、人を殺したんだなって」

 平和ボケしている前世では、経験したことが無いことだ。
 特に――

「地雷は、やりたくなかった。21世紀でも、子供を含めて、大勢が苦しんでいる……」

 しかも、作るのは恐ろしいほど簡単だった。
 鉄の容器の中に、火薬を入れる。
 さらに電気で作った塩酸を薄いガラスの容器に入れ、地面に埋める。

(……踏んでガラスが割れたら、漏れた酸が火薬に火をつける)

 そして爆発。敵から足を、あるいは命を、一生奪うのだ。
 この規模だと、即死はしない。さらに悪質だった。

「……さ、早苗さま、大丈夫だヨ! 残った地雷は、みんなで頑張って、撤去するから」
「そうだね……」

 全ての地雷の位置や数を、覚えている。
 一つも残したりはしない……

「次は、僕らから攻める。王国に進軍するぞ……!」

 おお、と獣人たち、ドワーフたちが声を出す。
 心菜を助ける。
 彼女が死ぬタイムリミットまで、あと2週間を切っていた。

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