#3 推し活
文字数 830文字
あの屋敷はいつも賑やかだった。
だというのに、見かけるのは屋敷のあるじである木崎だけだった。
挨拶をすれば返すくらいのことはするが、あまり人当たりのよさそうな人間ではない。
なのに、なぜかいつも大勢の人間が集まっている。
客が出入りしているのを目撃している近所の住人はいないようだった。
夜にこっそりと出入りしているのか?
木崎が運転する車ごと敷地内に入ってしまえば、その車に誰かが乗車していても気づかない。
まさか、人をさらってきているのではあるまい。
いくらすべての窓に鉄格子がはめられているとはいえ、あれだけ人を囲っていたらなんらかのトラブルが発生しそうだ。
自らの意志でやってきた者たちなのだろう。
そう解釈するしかなかった。
しかし、ついに事件は起こってしまったのだった。
「きのうの火事、知ってるかい?」
「木崎さんのところだろ。全焼だってな」
「49人の焼死体が見つかったというじゃないか」
「逃げ遅れたのか? いつも賑やかだけど、それにしたって、そんなに人がいるとは思わなかったな。パーティーを開いていたわけじゃあるまいし、宗教関係かな。そもそも火事の直前までみんな生きていたのか? 絶対おかしい。そうだ、あの男は人を呼び込んでは殺すを繰り返していた殺人鬼なんだよ。自分で殺した死体の始末に困って、何人も隠していたんだ」
「知らなかったのか? 木崎さんの趣味を」
「まさか、本当に……」
「木崎さんはもともと、ただのカメラ小僧だよ。だけど、そのうち写真だけでは満足できなくなった。推しグループの握手会にいっては、こっそり髪の毛とかDNAが採取できそうなものを持ち帰り、クローン人間を生み出していたんだ」
生き延びたクローンの話しによると、赤ん坊の頃からずっとあの屋敷に閉じ込められていたものだから、外の世界があるとは思わなかったらしい。
取材に応じているのを見たが、まるでタイムマシーンでやってきたかのように、20年前に活躍していたアイドルに瓜二つだった。
だというのに、見かけるのは屋敷のあるじである木崎だけだった。
挨拶をすれば返すくらいのことはするが、あまり人当たりのよさそうな人間ではない。
なのに、なぜかいつも大勢の人間が集まっている。
客が出入りしているのを目撃している近所の住人はいないようだった。
夜にこっそりと出入りしているのか?
木崎が運転する車ごと敷地内に入ってしまえば、その車に誰かが乗車していても気づかない。
まさか、人をさらってきているのではあるまい。
いくらすべての窓に鉄格子がはめられているとはいえ、あれだけ人を囲っていたらなんらかのトラブルが発生しそうだ。
自らの意志でやってきた者たちなのだろう。
そう解釈するしかなかった。
しかし、ついに事件は起こってしまったのだった。
「きのうの火事、知ってるかい?」
「木崎さんのところだろ。全焼だってな」
「49人の焼死体が見つかったというじゃないか」
「逃げ遅れたのか? いつも賑やかだけど、それにしたって、そんなに人がいるとは思わなかったな。パーティーを開いていたわけじゃあるまいし、宗教関係かな。そもそも火事の直前までみんな生きていたのか? 絶対おかしい。そうだ、あの男は人を呼び込んでは殺すを繰り返していた殺人鬼なんだよ。自分で殺した死体の始末に困って、何人も隠していたんだ」
「知らなかったのか? 木崎さんの趣味を」
「まさか、本当に……」
「木崎さんはもともと、ただのカメラ小僧だよ。だけど、そのうち写真だけでは満足できなくなった。推しグループの握手会にいっては、こっそり髪の毛とかDNAが採取できそうなものを持ち帰り、クローン人間を生み出していたんだ」
生き延びたクローンの話しによると、赤ん坊の頃からずっとあの屋敷に閉じ込められていたものだから、外の世界があるとは思わなかったらしい。
取材に応じているのを見たが、まるでタイムマシーンでやってきたかのように、20年前に活躍していたアイドルに瓜二つだった。