第1話
文字数 1,773文字
連日、気温 35.0℃以上の猛暑日が続く。
人は涼を求めて、水に浸かりたくなる。
今年の夏、2024年7月1日~8月12日の6週間に全国で 172名が水難事故にあい、うち120名 (70.6%) が死亡した。場所別では海岸での遊泳や河川での川遊び、釣り中の溺水事故が多く発生した。年齢では小中学生を含む 29歳以下と 70歳以上の高齢者の溺水事故が多かった*。(*https.//uminosonae.uminohi.jp > report > data 「DATA2024年夏季 溺れ事故の実態調査」から引用した)
一方、季節は変わって冬の話。
山形県庄内の冬は重く冷たい。
人は暖を求めて、湯に浸かりたくなる。
令和元年(2019年)の1年間に全国で 6,901名が不慮の溺水で死亡した。そのうち 71%、4,900名が家や居住施設の浴槽で溺死した。年齢では65歳以上の高齢者が圧倒的で、特に冬季の1月をピークに 11 月~4月に多く発生していた**。(**消費者庁 News Release:令和2年11月10日 から引用した)
この浴槽内での溺死は、調査した期間の交通事故による死者数や火災による死者数より多くなっている***。(***https.//www.tatemonojikoyobo.nilim.go.jp > learning _f 「建物事故予防ナレッジベース」 国土技術政策総合研究所 から引用した)また、山形県が行った 2009年11月から 2010年4月までの6カ月間の調査でも、入浴死は 30名で、この間の交通事故死4名の7倍以上であった****。(****稲坂 惠:山形県庄内保健所の取組~41 ℃ふろプロジェクト~. 日本セーフティプロモーション学会誌 2018; 11(1): 43-46)
浴室における溺水事故は、ヒート・ショック(Heat Schock)が原因とされてきた。浴室や脱衣室における寒暖差により血圧が急激に乱高下し、それが脳卒中や心筋梗塞を誘発し、死に至る。
しかし最近の研究で、浴槽での溺水は「熱中症」が原因であることが指摘されている***。
夏の猛暑日に、気温が40℃近くまで上昇すると「外は命に係わる危険な暑さ」と熱中症警戒アラートが発表される。熱中症で体温が38℃を超えると「ボーっとする」などの意識障害が起きる。熱中症は、外部の熱が身体に伝わり体温が上昇することで起こる。外部の熱は外気ばかりでなく、湯船のお湯でも同じである。体格にもよるが、42℃のお湯に10分浸かると体温が38℃を超える。この意識障害で浴槽の中で溺水し、最悪、死に至るのだ。
実際の臨床で、浴室からの救急搬送にはよく遭遇する。
ある90歳半ばの女性は、入浴が何よりの楽しみだった。その日はデイサービスで入浴してきたのでもう入浴はしないだろうと家族は思っていた。ところが夜、念のため浴室を覗いたところ、彼女は意識を失って浴槽に仰向けに浮いていた。失禁していたが、自発呼吸はあり救急搬送された。救命処置で一命は取り留めたが、湯船のお湯を誤嚥したことによる誤嚥性肺炎を起こし生死の境をさ迷った。喀痰培養からは大腸菌が検出された。
ある80歳後半の男性は、家で飲酒後、風呂に入った。山形では家長は一番風呂ではなく、終 い湯に心行くまで浸かることがあると聞く。明け方4時頃、家族がお爺さんがまだ布団に入っていないのに気づき浴室を見に行ったところ、お爺さんは浴槽の中で顔をうつ伏せにして浮いていた。心肺停止で救急搬送されたが、蘇生できなかった。
人生の修羅場をくぐり抜け、病気にもならずに歳を重ねた人生の大先輩が、防げる浴槽内の溺水で最後は裸で最期を迎える。ん~~と思うこと頻 り…。
んだの~。
さて写真は冬(1月)早朝の立谷沢川 橋梁を渡る陸羽西線の普通列車である。
立谷沢川は最上川の一次支流(本川に注ぐ川)で庄内町清川で最上川に合流する。全国有数の清流で、平成の名水百選に選ばれた。
立谷沢南部山村広場では、川遊びや魚のつかみ取り、砂金堀り体験ができる。が、本流の最上川には川遊びができる場所はない。
五月雨 を集めて早し最上川
それは最上川は日本三大急流のひとつで流れが速いから…。
んだ。
(2024年8月)
人は涼を求めて、水に浸かりたくなる。
今年の夏、2024年7月1日~8月12日の6週間に全国で 172名が水難事故にあい、うち120名 (70.6%) が死亡した。場所別では海岸での遊泳や河川での川遊び、釣り中の溺水事故が多く発生した。年齢では小中学生を含む 29歳以下と 70歳以上の高齢者の溺水事故が多かった*。(*https.//uminosonae.uminohi.jp > report > data 「DATA2024年夏季 溺れ事故の実態調査」から引用した)
一方、季節は変わって冬の話。
山形県庄内の冬は重く冷たい。
人は暖を求めて、湯に浸かりたくなる。
令和元年(2019年)の1年間に全国で 6,901名が不慮の溺水で死亡した。そのうち 71%、4,900名が家や居住施設の浴槽で溺死した。年齢では65歳以上の高齢者が圧倒的で、特に冬季の1月をピークに 11 月~4月に多く発生していた**。(**消費者庁 News Release:令和2年11月10日 から引用した)
この浴槽内での溺死は、調査した期間の交通事故による死者数や火災による死者数より多くなっている***。(***https.//www.tatemonojikoyobo.nilim.go.jp > learning _f 「建物事故予防ナレッジベース」 国土技術政策総合研究所 から引用した)また、山形県が行った 2009年11月から 2010年4月までの6カ月間の調査でも、入浴死は 30名で、この間の交通事故死4名の7倍以上であった****。(****稲坂 惠:山形県庄内保健所の取組~
浴室における溺水事故は、ヒート・ショック(Heat Schock)が原因とされてきた。浴室や脱衣室における寒暖差により血圧が急激に乱高下し、それが脳卒中や心筋梗塞を誘発し、死に至る。
しかし最近の研究で、浴槽での溺水は「熱中症」が原因であることが指摘されている***。
夏の猛暑日に、気温が40℃近くまで上昇すると「外は命に係わる危険な暑さ」と熱中症警戒アラートが発表される。熱中症で体温が38℃を超えると「ボーっとする」などの意識障害が起きる。熱中症は、外部の熱が身体に伝わり体温が上昇することで起こる。外部の熱は外気ばかりでなく、湯船のお湯でも同じである。体格にもよるが、42℃のお湯に10分浸かると体温が38℃を超える。この意識障害で浴槽の中で溺水し、最悪、死に至るのだ。
実際の臨床で、浴室からの救急搬送にはよく遭遇する。
ある90歳半ばの女性は、入浴が何よりの楽しみだった。その日はデイサービスで入浴してきたのでもう入浴はしないだろうと家族は思っていた。ところが夜、念のため浴室を覗いたところ、彼女は意識を失って浴槽に仰向けに浮いていた。失禁していたが、自発呼吸はあり救急搬送された。救命処置で一命は取り留めたが、湯船のお湯を誤嚥したことによる誤嚥性肺炎を起こし生死の境をさ迷った。喀痰培養からは大腸菌が検出された。
ある80歳後半の男性は、家で飲酒後、風呂に入った。山形では家長は一番風呂ではなく、
人生の修羅場をくぐり抜け、病気にもならずに歳を重ねた人生の大先輩が、防げる浴槽内の溺水で最後は裸で最期を迎える。ん~~と思うこと
んだの~。
さて写真は冬(1月)早朝の
立谷沢川は最上川の一次支流(本川に注ぐ川)で庄内町清川で最上川に合流する。全国有数の清流で、平成の名水百選に選ばれた。
立谷沢南部山村広場では、川遊びや魚のつかみ取り、砂金堀り体験ができる。が、本流の最上川には川遊びができる場所はない。
それは最上川は日本三大急流のひとつで流れが速いから…。
んだ。
(2024年8月)