第17話 良かれと信じて

文字数 818文字

 今日から、コロナワクチンの大規模接種が始まる。モデルナやファイザー、アストラゼネカなどの副反応は、気になるところではあるが、背に腹はかえられぬ。速やかな浸透を願うばかりだ。この注射、出始めのころのテレビ映像では、針をかなり深く刺し「痛そう」 だった。だが最近、あまり観なくなった気がする。やはり、恐怖感を誘うものだったか。

 先日、母の付き添いで病院を訪れた。ここ数年お世話になっている担当医とは、冗談も言い合える間柄。ひと通りの診察を終えたあと、母が

「私、弱っているのに、ワクチン打たなきゃ、いけないですか? 」と聞いた。

「あー、ダメダメ。打たなきゃ……。  痛いけどね 」

と、オブラートに包むことなく、笑顔で応えた。こんな、ウィットに富んだ会話が、先生への信頼感に繋がる。

 小学生のころ、弁護士さんのCMでお馴染みの、集団予防接種を受けた。ワクチンの内容も意識せず、クラス単位で、校内の体育館へ、ゾロゾロと入っていく。当時いた小学校は、千人を超えるマンモス校で、注射を打つ医師は2〜3人ほど。順番が廻ってくると、授業を中断して向かった。このときの心境は、緊張や恐怖と同時に、嬉しくもあり。

 右腕だったか、左腕だったか。覚えていないが、あと、2〜3人で自分というときに、看護師さんらしき人が、アルコールを湿らせた脱脂綿で注射位置を拭く。心臓バクバクの合図。確かに、今思い出すと、1本の注射器で、3人くらいに打っていた。さながら、ベルトコンベアーに乗せられた物を扱うように……

 2人の子どもの母である私は、乳幼児の予防接種はマストだと思っていた。だから、公で言われるがままの物を全て受けさせた。ところが、子どもが高校生のときのママ友に、半分くらいしか受けさせていないと言う人がいて驚いたが、乳幼児の予防接種にも任意の物があると知った。

 任意と聞くと、気持ちが(すく)む。コロナワクチン。私の順番まではまだ遠いが、そのときがきたら意を決したい。
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