「ほなね」ときみは手を振って
文字数 1,994文字
六月の河原町は夏の口、鴨川の河原は恋人たち、きみのいるまち。
「出町柳の鴨川デルタはこんなもんじゃないよ」
ってきみは云うし、うんうん…わたしはうなずいて、ふむふむ…河原に寝ころんで、お連れさまたちをみていた、みなおなじ夢をみていた、きみは反対の川床をみていた、わたしはきみのきれいな横顔を。
待ち合わせは正午、路地裏のパトロール、今日も京都は平和です、半年前に閉店した古本屋は今も開店しています。
「東京の街ってどこがおすすめ？」
「うーん…住むなら世田谷、好きな街は下北、おおさかはやっぱり好きじゃないや」
文化の匂いはどんな匂い？知らんけど、たしかに街並みに匂いはあって、きみの匂いはこの街にあって、わたしときみはこの街で出会って、この先もきっと友達であって。
コンビニで一服休憩する、きみは息を吸うようにタバコを吸う、灰皿とわたしときみの鼎談が始まる、わたしは吸わない。
「風当たるやろ？こっちき〜や」
言われるがままこっちに来た。
【わたしの主張 2020/6/6(土)14:56】
本当は来たくなかったです・どうせきみの隣ならわたしはきみの副流煙を浴びるほうに立ちたいのです・そしてきみの副流煙を全身で浴びたいのです・きみを二酸化炭素と一緒に煙もろともすうすうと吸い込んでわたしの肺をパンパンにしたいのです・吸い込まれたきみはわたしのなかで一生を過ごすことになります・きみはわたしに嫌がらせすることに全てを費やします・わたしはわたしの人生の決断を尽くきみに汚されて台無しにされたいです・そんな一生を送りたいのです。
なんかでっかい本屋さん。本屋さんとデパートが一緒になった本屋さんに来た。雑貨とか文房具とかタロットカードとかなぜか置いてる本屋さんに来た。
「明日、友達が誕生日やねん、プレゼント一緒に選んで！」
香水か美容クリームあるいは歯磨き粉にするらしい。
「男の人って香水とか嫌がるかな〜？歯磨き粉って決まったもの使うよね〜いつも部屋に行くときは毎回同じやつだったけど……うーん…どう思う？」
【わたしの主張 2020/6/6(土)16:47】
えっちょっと待って・友達って前に云ってた人だよね・三ヶ月に一回ぐらいのペースで会って性行為だけする人だよね・いつも夜家に行くって云ってたよね・その人ですよね・はい！質問です！性行為だけする友達って誕生日とか把握してプレゼントとか送り合うんですか？・それは彼氏と何が違うんですか？・好きとかじゃないんですか？・きみが"する"ことが大好きな人だってことは前々から存じ上げております・男がいないと生きていけない人だと伺っております。そういう"友達"が何人かいらっしゃるのも知ってます・しかしです・しかしですよ・誕生日にプレゼントを渡すのは聞いてません！・いや性行為が好きなら性行為だけすればいいじゃないですか・何彼氏みたいなことしてんの？・は？意味わかんないんだけど・いやたしかに頭おかしい人だとは思っていたけれどちょっとこれは理解不能です・わたしへの嫌がらせですか？・女だからって舐めてるんですか？・それとも・わたしがきみのこと好きって分かってて・わたしの忠誠心を試しているのでしょうか？・セフレの誕プレ一緒に選んでるわたしの姿はそんなに滑稽でしょうか？・いや滑稽ですね・それは滑稽だ間違いないや・滑稽滑稽・はい気が済みましたか？・最後にどうしても許せないことがあります・明日誕生日ってことは明日会うわけですよね、セフレと・いやいや明日どういう気持ちで眠りにつけって云うの？・今頃やってんだろうなとか思えば良いの？・もう射精した頃かな？とか思えば良いの？・ふざけんな！・バカにするな！・人をバカにするのも大概にしろ！・女をバカにするな！・女性の敵！・月曜から仕事なんだよ！朝起きなきゃいけないんだよ！・眠れないよ！！悲しくて！！ああああ！！！
「ありがとう！歯磨き粉喜んでくれるよ！選んでくれて本当に！」
結局選んでしまった。喜んでくれたからいいや。
「鴨川あるこ！」
「…うん」
河原町から電車で帰るわたしをきみは送ってくれた。三条からの距離は地図アプリで見るよりあっという間だった。
「逆方向なのにごめんね」
「気にしなくていいよ、今日は楽しかった！あっ！心斎橋のお寿司屋さん絶対連れてってね！電車乗ったら連絡してね！ほなね！家に着いても連絡してよ！」
またねとわたしは手を振って、ほなねときみは手を振って、
【わたしの主張 2020/6/6(土)18:36】
今日は楽しくなかったですか・ちょっとお別れが早くないですか・鴨川歩いて締めたつもりですか・全部わかってますよ・心斎橋のお店行きましょうね・約束ですよ・あと明日は一日寝ますから・ラインも返しませんよ・それがせめてもの抵抗ですから。
「出町柳の鴨川デルタはこんなもんじゃないよ」
ってきみは云うし、うんうん…わたしはうなずいて、ふむふむ…河原に寝ころんで、お連れさまたちをみていた、みなおなじ夢をみていた、きみは反対の川床をみていた、わたしはきみのきれいな横顔を。
待ち合わせは正午、路地裏のパトロール、今日も京都は平和です、半年前に閉店した古本屋は今も開店しています。
「東京の街ってどこがおすすめ？」
「うーん…住むなら世田谷、好きな街は下北、おおさかはやっぱり好きじゃないや」
文化の匂いはどんな匂い？知らんけど、たしかに街並みに匂いはあって、きみの匂いはこの街にあって、わたしときみはこの街で出会って、この先もきっと友達であって。
コンビニで一服休憩する、きみは息を吸うようにタバコを吸う、灰皿とわたしときみの鼎談が始まる、わたしは吸わない。
「風当たるやろ？こっちき〜や」
言われるがままこっちに来た。
【わたしの主張 2020/6/6(土)14:56】
本当は来たくなかったです・どうせきみの隣ならわたしはきみの副流煙を浴びるほうに立ちたいのです・そしてきみの副流煙を全身で浴びたいのです・きみを二酸化炭素と一緒に煙もろともすうすうと吸い込んでわたしの肺をパンパンにしたいのです・吸い込まれたきみはわたしのなかで一生を過ごすことになります・きみはわたしに嫌がらせすることに全てを費やします・わたしはわたしの人生の決断を尽くきみに汚されて台無しにされたいです・そんな一生を送りたいのです。
なんかでっかい本屋さん。本屋さんとデパートが一緒になった本屋さんに来た。雑貨とか文房具とかタロットカードとかなぜか置いてる本屋さんに来た。
「明日、友達が誕生日やねん、プレゼント一緒に選んで！」
香水か美容クリームあるいは歯磨き粉にするらしい。
「男の人って香水とか嫌がるかな〜？歯磨き粉って決まったもの使うよね〜いつも部屋に行くときは毎回同じやつだったけど……うーん…どう思う？」
【わたしの主張 2020/6/6(土)16:47】
えっちょっと待って・友達って前に云ってた人だよね・三ヶ月に一回ぐらいのペースで会って性行為だけする人だよね・いつも夜家に行くって云ってたよね・その人ですよね・はい！質問です！性行為だけする友達って誕生日とか把握してプレゼントとか送り合うんですか？・それは彼氏と何が違うんですか？・好きとかじゃないんですか？・きみが"する"ことが大好きな人だってことは前々から存じ上げております・男がいないと生きていけない人だと伺っております。そういう"友達"が何人かいらっしゃるのも知ってます・しかしです・しかしですよ・誕生日にプレゼントを渡すのは聞いてません！・いや性行為が好きなら性行為だけすればいいじゃないですか・何彼氏みたいなことしてんの？・は？意味わかんないんだけど・いやたしかに頭おかしい人だとは思っていたけれどちょっとこれは理解不能です・わたしへの嫌がらせですか？・女だからって舐めてるんですか？・それとも・わたしがきみのこと好きって分かってて・わたしの忠誠心を試しているのでしょうか？・セフレの誕プレ一緒に選んでるわたしの姿はそんなに滑稽でしょうか？・いや滑稽ですね・それは滑稽だ間違いないや・滑稽滑稽・はい気が済みましたか？・最後にどうしても許せないことがあります・明日誕生日ってことは明日会うわけですよね、セフレと・いやいや明日どういう気持ちで眠りにつけって云うの？・今頃やってんだろうなとか思えば良いの？・もう射精した頃かな？とか思えば良いの？・ふざけんな！・バカにするな！・人をバカにするのも大概にしろ！・女をバカにするな！・女性の敵！・月曜から仕事なんだよ！朝起きなきゃいけないんだよ！・眠れないよ！！悲しくて！！ああああ！！！
「ありがとう！歯磨き粉喜んでくれるよ！選んでくれて本当に！」
結局選んでしまった。喜んでくれたからいいや。
「鴨川あるこ！」
「…うん」
河原町から電車で帰るわたしをきみは送ってくれた。三条からの距離は地図アプリで見るよりあっという間だった。
「逆方向なのにごめんね」
「気にしなくていいよ、今日は楽しかった！あっ！心斎橋のお寿司屋さん絶対連れてってね！電車乗ったら連絡してね！ほなね！家に着いても連絡してよ！」
またねとわたしは手を振って、ほなねときみは手を振って、
【わたしの主張 2020/6/6(土)18:36】
今日は楽しくなかったですか・ちょっとお別れが早くないですか・鴨川歩いて締めたつもりですか・全部わかってますよ・心斎橋のお店行きましょうね・約束ですよ・あと明日は一日寝ますから・ラインも返しませんよ・それがせめてもの抵抗ですから。
